第2回EU米国貿易技術評議会を開催、AIや半導体分野で協力強化へ

(EU、米国)

ブリュッセル発

2022年05月17日

EUと米国は5月16日、第2回となるEU米国貿易技術評議会(TTC)をフランスのサクレ―で開催(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。EUからバルディス・ドムブロフスキス執行副委員長(経済総括、通商担当)、マルグレーテ・ベスタエアー執行副委員長(欧州デジタル化対応総括・競争政策担当)、ティエリー・ブルトン委員(域内市場・産業・デジタル単一市場担当)、米国からはアントニー・ブリンケン国務長官、ジーナ・レモンド商務長官、キャサリン・タイ米国通商代表部(USTR)代表が参加した。

TTCは、民主的価値に基づいて新興技術や貿易面での課題に対応する新たな協力枠組みとして、2021年のEU米国首脳会談(2021年6月16日記事参照)で合意したもので、第1回(2021年9月30日記事参照)の開催以降、10の作業部会で協議が進められている。今回の共同声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、まずEUと米国があらためてロシアによるウクライナ侵攻を非難した上で、TTCを通じた協議により、前例のない規模での輸出管理などの対ロシア制裁(2022年4月11日記事参照)の協調的な実施が実現したとして、TTCを評価した。その上で、第1回以降の主な成果として以下を挙げた。

技術標準では、人工知能(AI)に関するサブグループを設置した。EUと米国は、民主的価値や人権に沿った人間中心の信頼できるAIの開発に向けて協力することや、リスク別の規制アプローチの採用で一致している。欧州委員会はAI規制枠組み法案(2021年4月23日記事参照)を既に発表しており、EUと米国は今後、AIの信頼性やリスクの評価基準や方法に関する情報共有を進めるとともに、評価ツールに関する共同の行程表を策定する。また、EUと米国は戦略的標準化情報(SSI)メカニズムの設置でも合意した。これは、EUと米国の戦略的利益や価値に沿ったかたちで、国際的な標準化を進める協力メカニズムだ。

安全なサプライチェーンに関しては、半導体のサプライチェーンの透明性を高めるために、欧州委員会が提案した半導体法案(2022年2月10日記事参照)のような早期警告・監視メカニズムをEUと米国が共同で構築することで合意。投資誘致に向けた補助金合戦を避けるべきとの点でも一致している。また、希土類磁石や太陽光発電に関連したサプライチェーンでも協力を進めている。

国際的な通商課題の分野では、業界団体が名指ししていた中国への言及(2022年5月6日記事参照)こそなかったものの、貿易障壁となり得る第三国の措置に関して、EUと米国が早期に情報交換をする対話枠組みを設置することで合意した。

また、第3回TTCまでに協力を強化すべき分野として、上記の分野に加えて、主要セクターのサプライチェーンに対する圧力緩和に向けた新たなイニシアチブ、第三国からの投資の審査(スクリーニング)制度に関する審査方法や報告方法の集約などを挙げた。第3回TTCは、2022年末までに米国で開催が予定されている。

(吉沼啓介)

(EU、米国)

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