8月経済統計、多くの指標で前年同月比の伸びが加速、不動産開発投資の底打ちは先に

(中国)

北京発

2022年09月27日

中国・国家統計局は916日、202218月および8月の主要経済指標を発表した(添付資料表参照、注1)。国家統計局の付凌暉報道官は、世界的なインフレに伴う欧米諸国の金融引き締めによる世界経済の下押し圧力増大、中国国内における局所的な新型コロナウイルス感染拡大の多発や高温・干ばつ・少雨などの極端な天候といった要因により、一部地域の経済がマイナスの影響を受けたほか、市場の需要不足が依然顕著だったと指摘した上で、そのような状況下でも主要な経済指標の伸びが前月を上回ったことを評価し、安定成長のための一連の措置(注2)や物価・雇用対策(注3)が経済の回復に寄与したとの認識を示した。

各指標をみると、18月の投資(固定資産投資)は前年同期比5.8%増(17月:5.7%増)と、2022年に入って以降では初めて伸びが加速した。インフラ投資は8.3%増(7.4%増)と4カ月連続で加速し、製造業投資も10.0%増と前月より伸びが0.1ポイント加速した。一方、民間投資は2.3%増(2.7%増)と引き続き減速した。付報道官は、地方特別債(専項債)の発行前倒し(2022年8月18日記事参照)によりプロジェクトの着工が進んだほか、政策金融機関から供給される資金(注4)がレバレッジ効果を発揮したことなどがインフラ投資を促進したと指摘した。

18月の不動産開発投資は、前年同期比7.4%減(1~7月:6.4%減)と引き続き減少幅が拡大した。付報道官は、住宅販売の減少幅が縮小していることなどを挙げ(注5)、販売面には改善がみられるものの、それが不動産投資にまで波及するにはまだ一定の時間を要すると説明した。

18月の消費(社会消費品小売総額)は前年同期比0.5%増となり、2022年に入って初めて年初来累計の伸びがプラスに転じた。8月単月の前年同月比が5.4%増と前月(2.7%増)から大幅に上昇したことが寄与した。18月の工業生産増加額(付加価値ベース)は、前年同期比3.6%増と17月から0.1ポイント上昇した。8月単月では前年同月比4.2%増(7月は3.8%増)となり、伸びが加速した。

雇用指標は前月よりも改善

消費者物価上昇率は、18月平均で1.9%だった。8月単月では2.5%と、7月(2.7%)よりも0.2ポイント低下した。また、8月末の都市部調査失業率は、前月より0.1ポイント低下して5.3%となった。7月に過去最高を記録した1624歳の調査失業率は、前月比1.2ポイント低下の18.7%だった。

(注18月の貿易動向については2022年9月12日記事参照

(注2)国務院は5月に経済安定化のため6分野33項目の措置を打ち出した(2022年6月2日記事参照)ほか、824日の常務会議では同措置に続くものとして19項目の政策措置を実施するとした(2022年9月9日記事参照)。

(注3)物価対策としては、国家発展改革委員会などが豚肉価格の安定化のため、備蓄していた冷凍豚肉を市場に投入した。雇用対策では、国務院が大卒者の就業支援のための措置などを打ち出している(2022年5月18日5月19日9月16日記事参照)。

(注4)国家開発銀行や中国農業発展銀行といった政策金融機関が債券を発行して資金を調達し、新型インフラなど重要なプロジェクトの資本金として充当するもの。5月の経済安定化策では3,000億元(約6兆円、1元=約20円)が投入され、8月の追加措置ではさらに3,000億元を投入するとされた。

(注518月の全国不動産販売面積は前年同期比23%減と前期(17月)に比べて減少幅が0.1ポイント縮小し、不動産販売額は27.9%減と前期より0.9ポイント縮小した。

(小宮昇平)

(中国)

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