国務院、5月に続いて経済安定化のための政策措置を発表

(中国)

北京発

2022年09月09日

中国国務院は8月24日に開催した国務院常務会議において、5月に発表した経済安定化のためのパッケージ(2022年6月2日記事参照)に続く政策措置を打ち出した。会議では、現在の中国経済は6月以降の回復の状況が継続しているものの、小幅な変動があり、回復の基礎がいまだ堅固ではないという認識を示した上で、経済安定化パッケージ政策を実施することに加えて、19項目の政策を実施するとした。

具体的には、政策金融機関の融資について3,000億元(約6兆円、1元=約20円)の増額(注1)を行うこと、地方特別債(専項債)の発行残高と発行上限額との差額である約5,000億元分の債券発行を10月末までに完了すること、条件の整ったインフラプロジェクトの認可・着工を進めること、民営企業の投資に対する支援策を打ち出すこと、地方ごとに異なる柔軟な不動産融資政策を認め、住宅の実需や改築ニーズを支えること。ビジネス関係者の出入境の円滑化、地方政府に対する中小零細企業や個人事業主の貸し倒れリスクを補償する基金設立の奨励、中央発電企業(注2)による2,000億元分のエネルギー供給保障のための特別債発行支援などが含まれる。

その後、8月31日の国務院常務会議において、より具体的な措置が明らかにされた。3,000億元の政策金融については、実際の需要に応じてさらにその規模を拡大できるとしたほか、融資対象に老朽化した住宅団地の改造や省レベルの高速道路などを加えた。不動産政策については、地方政府に対して、各都市の状況に応じて、住宅引き渡しを確保するための特別融資などの各種政策ツールを活用するよう求めた(注3)。このほか、製造業企業などにおける設備の更新・改造の支援策も盛り込まれた。

さらに、今回の政策を紹介する目的で、9月5日に国務院記者会見が開催され、各政府部門が関連政策について説明した。その中で、商務部は、製造業の外資誘致や外資系企業による研究開発センター設立を促進する政策措置を打ち出すと表明した。

また、国家発展改革委員会の楊萌凱副秘書長は、現在、中国経済は安定と回復の重要な時期にあり、下半期は第2四半期の新型コロナウイルス感染拡大による損失を補うカギとなる期間だとの認識を示した。その上で、今回の政策は需給両面において効果があるもので、特に有効需要の拡大に重点を置くことで経済回復の基礎を固めることに寄与すると指摘した。今後、各部門から公布される関連政策の内容が注目される。

(注1)具体的には、国家開発銀行や中国農業発展銀行、中国輸出入銀行といった政策金融機関が金融債を発行して資金を調達し、新型インフラなど重要なプロジェクトの資本金に充当する。

(注2)国有資産監督管理委員会傘下の国有電力企業を指す。

(注3)7月末に開催された中国共産党の中央政治局会議において、不動産政策策定・実施に当たっての地方政府の責任を強化し、「住宅の確実な引き渡しを保証する(保交楼)」ことが盛り込まれた(2022年8月2日記事参照)。

(小宮昇平)

(中国)

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