中国政府、大学卒業生の就業対策を強化

(中国)

中国北アジア課

2022年05月18日

中国政府(国務院)は5月13日、大学卒業生を中心とする若者の就業対策の強化に向けて「国務院弁公庁の大学卒業生等青年の就業創業業務をさらに適切に実施するための通知」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(国弁発〔2022〕13号、以下通知)を発表した。

通知では「大学卒業生等若者の就業は、民生福祉や経済発展、国家の将来に関連する問題」と指摘。大学卒業生等若者の就業を、就業対策の「重点中の重点」として位置付けた。そのうえで、困難に直面している大学卒業生の就業支援に重点を置き、中国政府の関係部門や地方政府に対し、足元や当面の大学卒業生等若者の就業や創業への取り組みを適切に実施するよう求めている。

通知で明記された取り組みのポイントは以下の4点(詳細は添付表を参照)。

  1. 様々なルートでの就業ポストの開拓:新規大学卒業生を雇用する中小零細企業に対する補助金の支給。自主的な創業やフレキシブルワーク(注1)への従事などを支持。
  2. 一貫した就業サービスの強化:困難な状況下にある大学卒業生を就業支援の重点対象とし、各人の状況に応じた個別具体的な支援を実施。信頼性のある大学卒業生就業サービスプラットフォームを構築。
  3. 求職・就業手続きの簡素化、最適化:「就業報告証」(注2)の段階的な廃止、大学卒業生の公共就業人材サービス機関への登録手続きの廃止。大学卒業生の卒業後の進路登録制度を構築。
  4. 若者の就業支援の強化:戸籍を有する地域、常住する地域での就業失業管理サービス責任を強化。

大学卒業生1,000万人を突破、政府は卒業生の就業確保に全力

2022年の中国の大学卒業生は前年比167万人増の1,076万人と初めて1,000万人の大台を突破し、過去最高を更新する見通しだ(添付資料図参照)。一方、新型コロナウイルス感染拡大による都市の封鎖管理などにより、中国経済を取り巻く情勢は厳しさを増している。

中国政府はこれまで一貫して、国民の就業機会の確保を最重要な政策課題の1つに位置付けてきた。今回の通知は、厳しい経済情勢の中で、大学卒業生の就業機会の確保に全力を挙げる姿勢を示したものといえる。

(注1)個人事業主、パートタイム就業者に加え、「新たな形態の就業者」などを指す。「新たな形態の就業者」とは、具体的には電子商取引、オンライン配車、ネットデリバリーなど、新業態プラットフォームを通じて就業する一方、プラットフォーム企業との間で労働関係が構築されていない就業者を指す。フレキシブルワーカーの詳細は2022年4月11日付地域・分析レポート参照

(注2)大学卒業生、専門学校生が、就業先の企業などに持参しなければならない証明書。

(中井邦尚)

(中国)

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