日韓通商閣僚、米USTR代表にインフレ削減法のEV税額控除要件に対する懸念表明
(米国、韓国、日本)
米州課
2022年09月12日
米国通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表は、9月7日にインド太平洋経済枠組み(IPEF)閣僚級会合出席のために訪米した韓国の安徳根(アン・ドックン)通商交渉本部長と、9月9日には西村康稔経済産業相とそれぞれ会談した。両会談では、8月16日に成立した米国のインフレ削減法(2022年8月17日記事参照)に基づく電気自動車(EV)購入者への税額控除要件について、韓国および日本側の懸念が示された。
USTRによると、安通商交渉本部長との会談では、サプライチェーンに関する課題、環境保護を支援する取り組み、APECやG20など地域間・多国間フォーラムにおける協力強化の在り方など、米韓共通の関心分野で強固なパートナーシップを築くため、幅広い通商課題について議論が行われた(2022年9月9日記事参照)。また、タイ代表は、国際的に認められている労働者の権利を支援する上で、韓国との緊密に協力したい旨を伝達した。バイデン政権は、労働者中心の通商政策を追求しており、この姿勢を反映したものとみられる(2022年1月7日記事参照)。他方、安通商交渉本部長は、インフレ削減法のEV条項に対する韓国の懸念を表明し、両者はこれらの問題に取り組むチャンネルを開設すると約束した。
西村経済産業相との会談は、IPEF閣僚級会合後に実施され、両者は同会合の成功を歓迎した。サプライチェーン上の生産過程における強制労働の関与を根絶するための協力や、第三国の非市場的な政策や慣行に対処するために実施中の取り組みなど、日米共通の関心事について幅広く議論が行われた。中国を意識したやり取りが行われたとみられる。また、2023年に米国が主催するAPEC首脳会合(2022年2月14日記事参照)や日本が主催するG7首脳会合(2022年5月23日記事参照)について、両国が緊密に協力することで合意した。両者は、日米通商協力枠組みおよび日米EU3極パートナーシップ(2021年11月18日記事参照)における2国間の関与が、これらの取り組みに実質的に寄与していることも確認した。タイ代表は、日本で導入されている燃料電池車(FCV)向けの補助金に言及し、米国がEVなどのクリーンエネルギー技術に有意義な行動を起こすための手段としてインフレ削減法の重要性を強調した。インフレ削減法に基づくEV税額控除要件についてはUSTRの発表に記載はないものの、西村大臣は9月9日の記者会見で、IPEF開催前のオンライン会談(2022年9月1日記事参照)と今回の会談において、問題を提起したと述べた上で、当該政策とIPEFの方針の整合性に関して「両国で擦り合わせを行っていくという大きな方針を確認した」などと語り、今後も議論を続ける意思を明らかにした。
(片岡一生)
(米国、韓国、日本)
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