米国が2023年のAPEC議長国に、バイデン政権はインド太平洋への関与強化に意気込み

(米国)

ニューヨーク発

2022年02月14日

米国のジェン・サキ大統領報道官は2月10日、米国が2023年のAPEC議長国を務めることを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。オバマ政権時の2011年に議長国を務めて以来、12年ぶりとなる。

本件については、カマラ・ハリス副大統領が2021年8月に東南アジアを歴訪した際に、最初の訪問国のシンガポールで行った演説の中で提案していた(2021年8月25日記事参照)。サキ報道官は、米国がAPEC議長国に名乗りを上げた理由について、「(政権として)インド太平洋地域における経済的なつながりを拡大・強化することに注力している」とし、「APEC加盟国・地域にとって米国が強く、信頼できるパートナーであり、経済的な機会・繁栄・成長を推進する共通の道を見つけることが、バイデン・ハリス政権にとっての最優先課題だ」と意気込みを示した。

また、サキ報道官は、バイデン政権が現在、構想の具体化に力を入れている「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」にも触れている。これは、連邦議会や国内産業界から、インド太平洋地域に対する経済的な関与を強化すべきとの声が高まっていることを受けて、ジョー・バイデン大統領が2021年10月の東アジアサミットで言及した構想だ。商務省と通商代表部(USTR)が中心となって、地域の関係国との調整や、中身の具体化を進めているとされる。

これまでに明らかになっている情報からは、IPEFは関税譲許を含む伝統的な貿易協定の形式ではなく、貿易円滑化やデジタル経済など分野ごとのルール合意を目指すモジュール型の枠組みを志向しており、議会の批准を要さないかたちになるとみられている。米国内では本構想を含めて、米国によるインド太平洋地域への関与の在り方に関する議論が本格化しつつある(2022年2月9日地域・分析レポート参照)。直近では、バイデン政権が2022年2月11日に発表したインド太平洋戦略に関するファクトシート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにおいて、IPEFでの提案内容として、高い労働・環境水準を満たす貿易や新たなデジタル経済枠組み、強靭(きょうじん)で安全なサプライチェーン、脱炭素およびクリーンエネルギーへの投資などを推進する方針を掲げている。

(磯部真一) 

(米国)

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