「新政権のエネルギー政策方向」を国務会議で議決、エネルギーミックス修正が本格始動

(韓国)

ソウル発

2022年07月07日

韓国産業通商資源部は75日、国務会議で「新政権のエネルギー政策方向」を議決したと発表した。尹錫悦(ユン・ソンニョル)新政権の「新政権の経済政策方向」(2022年6月23日記事参照)を具体化しつつ、グローバル・エネルギー・サプライチェーンへの不安が高まる中、エネルギー安全保障とカーボンニュートラルの両立を目指す。以下、主要部分の概要を紹介する。

1.実現可能で合理的なエネルギーミックスの再整備

1)原子力発電

新ハヌル原発34号機の建設再開や安全性確保を前提とした継続運転などを通じ、2030年のエネルギーミックスに占める原発の割合を30%以上に拡大する(注1)。

2)再生可能エネルギー

再生可能エネルギーの諸元(太陽光、洋上風力など)の特性を考慮し、合理的なミックス比を策定する。

3)石炭・液化天然ガス(LNG

石炭火力発電は需給状況や系統負荷を考慮し、合理的に削減していく。脱炭素電源(注2)は技術的な条件を勘案して活用する。

2.資源・エネルギー安全保障の確立

資源・エネルギー安全保障の不確実性に対応するための「資源安全保障特別法」を制定し、総合的な対策(注3)を講じる。

3.市場原理に基づいたエネルギー需要の効率化と市場構造の確立

産業、家庭・建物、輸送など主要部門の需要効率化を通じ、エネルギー供給中心からエネルギー需要を中心とした効率化に政策転換する(2022年6月30日記事参照)。

4.エネルギー新産業の輸出産業化

1)原発エコシステムの活力を取り戻し、2030年までに10基の原発を輸出、独自の小型モジュール炉(SMR)の開発を推進する。

2)水素の中核技術を自立させ、生産・流通・活用の全サイクルのエコシステムの早期整備をはじめとしたクリーン水素のサプライチェーンを構築し、この過程で世界一の水素産業の育成を推進する。

3)タンデム型太陽電池や風力発電の超大型タービンなど、次世代技術の早期商用化などを通じ、競争力を強化する。

「エネルギー転換(脱炭素)ロードマップ」(201710月)、「第3次エネルギー基本計画」(20196月)は「新政権のエネルギー政策方向」が代替することになる。詳細については、202210月~12月に「第10次電力需給基本計画」を策定し、20233月をめどに「国家カーボンニュートラルグリーン成長基本計画」を策定・公表する予定だ。

(注1)第9次電力需給基本計画では、2030年時点の原子力発電の割合を11.8%(設備容量ベースで20.4ギガワット)としていた(2021年1月14日記事参照)。2030年の発電量は現行の排出削減目標(NDC)基準(2021年10月27日記事参照)で算定。

(注2)発電・供給時に二酸化炭素(CO2)を排出しない電源。

(注3)国家資源安全保障のコントロールタワーの設置、資源安全保障の概念・範囲の拡大、早期警報システムの構築・運用など。

(当間正明)

(韓国)

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