政府、「未来に備える経済対策」で成長産業育成

(韓国)

ソウル発

2022年06月23日

韓国企画財政部が6月16日に公表した「新政権の経済政策方向」(2022年6月21日記事参照)の4つの柱のうち、「未来に備える経済対策」の主な施策を次のとおり紹介する。

  1. 科学技術・R&Dによる革新

科学技術と研究開発が革新をリードしていけるよう、制度を改編・支援する。

(1)第5次科学技術基本計画の策定、国家戦略技術育成特別法の制定を進め、科学技術政策の方向性を定める。

(2)国家的課題を解決するためのメガプロジェクト、超格差技術(半導体、ディスプレーなど)の確保などへの重点的な投資を進める。

(3)創業パッケージプログラムなどを通じ科学技術基盤の創業を促進する。

  1. 先端戦略産業の育成

韓国経済の成長を牽引する新成長産業の育成の基盤を整える。

(1)半導体などの経済安全戦略産業の支援に向けた「国家先端戦略産業基本計画」を策定する。

(2)半導体などの特化型大学を指定、定員拡大の対策を策定する。

(3)人工知能、バイオ、自動運転などの発展基盤やインフラを整備し、ソフト分野では、Kコンテンツ産業の海外展開支援を強化する。

(4)原子力産業の競争力確保に努め、独自の小型モジュール炉の開発や10基の原子力発電所を輸出する(2030年まで)。

  1. 人口構造の変化への対応

長期的な視点で少子化問題に対応し、人口構造の変化に伴う社会・経済的対策の拡充を進める。

(1)女性や高齢者の経済活動への参加拡大や外国人労働者に関する諸制度を改善し、生産年齢人口の拡充を進める。

(2)育児・出産のインセンティブの拡充などを通じ、少子化に対応する。

  1. カーボンニュートラル・気候変動への対応

温室効果ガス(GHG)の排出削減手段を見直し、公約済みの削減目標を実施する。

(1)GHG排出削減目標の達成のためのカーボンニュートラル・グリーン成長基本計画を策定する。

(2)原子力発電の活用を促進し(注)、エネルギーミックスの合理的な調整を進める。

(3)廃プラスチック、廃バッテリーのリサイクルなど循環型経済の基盤を構築する。

これらの施策のうち、文在寅(ムン・ジェイン)前政権の政策と特に大きく異なるのが原子力政策だ。文前政権は基本路線として「脱原発」政策を進めてきた(2022年3月4日記事参照)。これに対し、尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は原子力発電をより積極的に活用する考えだ。ちなみに、尹大統領は6月22日、国内の原子力発電設備メーカーを訪問した。その時の様子について「聯合ニュース」は同日、「尹大統領は文政権の脱原発政策をめぐって『われわれが5年間、愚かなことをせず、原子力発電システムをさらに頑強に構築していたら、今ごろはおそらく競争者はいなかっただろう』と発言し、文政権の政策を批判した」と報じた。

(注)新ハヌル3号機、4号機の建設再開、運営許可期限が到来している原子力発電所の運転継続など。

(当間正明)

(韓国)

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