AMLO大統領が気候変動対策10カ条を発表、ゼロエミッション車に関する目標も

(メキシコ、米国)

メキシコ発

2022年06月21日

メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領は6月17日、米国のジョー・バイデン大統領がオンライン開催した「エネルギーと気候に関する主要経済国フォーラム」に参加し、メキシコの気候変動対策10カ条を発表した。既存プロジェクトに加え、メキシコ石油公社(PEMEX)の原油生産プロセスなどにおけるメタンガス漏出削減や米国企業の再生可能エネルギー発電投資の保護、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)などゼロエミッション車(ZEV)に関する目標が含まれている。詳細は添付資料を参照。

国内で反響を呼んだのは、AMLO政権下で民間発電事業者の発電ビジネスに逆風(2022年4月11日2022年5月31日記事参照)が吹く中で、米国企業17社による発電プロジェクト投資の保護が盛り込まれたことだ。また、米国との国境地帯に太陽光発電パークを建設し、カリフォルニア州などへの電力輸出を行うという目標も盛り込まれた。今回のフォーラムに先立ち、ジョン・ケリー気候変動担当米国大統領特使は、6月14日に3回目となるメキシコ訪問を行い、AMLO大統領と会談を行っている。米国政府からメキシコのエネルギー政策、特に米国企業の投資保護について圧力があり、大統領が譲歩したという趣旨の報道もなされている(「レフォルマ」紙6月18日)。

2030年までに自動車生産の50%をZEVに

10カ条の中でもう1つ注目されるのは、ZEVに関する目標だ。背景には、バイデン政権が2021年8月5日に、2030年までに新車販売の50%以上をEV〔バッテリー式電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)〕とFCVとする大統領令を発令(2021年8月6日記事参照)し、今回のオンラインフォーラムでも他国に同様の目標を掲げるよう呼びかけたことがある。

AMLO大統領の発言では、米政府目標にある「新車販売の50%以上」ではなく、「生産の50%」という目標になっている。国立統計地理情報院(INEGI)のデータによると、メキシコ国内のBEVとPHEVの販売台数は2021年に4,632台で新車販売全体の0.5%にすぎず、充電インフラや国民の所得水準の関係から、国内販売では2030年の目標達成が非常に困難だ。他方、メキシコの自動車生産は約7割が米国向けとなっているため、米国内でZEV導入が加速すれば、メキシコにおけるZEV生産も拡大することが見込まれることに配慮したとみられる。ただし、現時点でZEVをメキシコで生産しているのはフォード(2020年11月11日記事参照)のみで、ゼネラルモーターズ(GM)が2023年から生産開始の予定(2021年5月7日記事参照)であるものの、より多くの自動車メーカーによるメキシコでのZEV生産投資を誘致する必要がある。なお、AMLO大統領は同目標達成に向けたプラス材料として、リチウムを国有化したこと(2022年4月21日記事参照)に言及しているが、民間企業へのコンセッション付与ができなくなり、国が開発資金を投じる必要があるため、緊縮財政を敷く現政権下では開発が進まないと指摘する識者も多い。

(中畑貴雄)

(メキシコ、米国)

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