インド太平洋諸国への米国の戦略的関与が積極的に、ジェトロ月例レポート

(米国、中国、日本、インド、オーストラリア、韓国、ASEAN)

米州課

2022年06月21日

ジェトロは6月20日、米国の対中国関連政策についてまとめた5月分の月例レポートを公表PDFファイル(596KB)した。このレポートは、日本企業が米中関係に関する米国の動向を把握できるよう、2021年7月から毎月分を作成して特集ページに連載している。

ロシアによるウクライナ侵攻が長期化する様相が明確になった5月、注目点として第1に挙げられたのが、バイデン米政権は中国との戦略的関係を念頭にしたアジア太平洋諸国への積極的関与だ。5月12~13日にジョー・バイデン大統領が呼びかけるかたちで米国・ASEAN特別サミットを開催し、12日には海洋問題や気候変動対策でASEAN諸国との協力のために1億5,000万ドル超の資金拠出を行うことが発表された(2022年5月17日記事参照)。また、5月下旬の日韓訪問やインド太平洋枠組み(IPEF)構想の立ち上げ(2022年5月24日記事参照)、日米豪印のクアッド(QUAD)首脳会合の開催(2022年5月24日5月25日記事参照)などを同地域に向けた戦略的な動きの象徴として挙げている。

通商貿易面のトピックとしては、トランプ前政権下に1974年通商法301条に基づいて課された中国原産の輸入品に対する追加関税(301条関税)の見直し手続きが挙げられた。米通商代表部(USTR)は今回、2018年7月6日発動のリスト1(818品目、対中輸入額340億ドル相当)と、同年8月23日発動のリスト(279品目、160億ドル相当)に関する見直し手続きを行う。見直しに当たっては、同関税から恩恵を受ける産業界に対して措置終了の見込みを通知した後、その継続を要望する場合にはコメントの提出を求めるという2段階での手続きを取るが(2022年5月6日記事参照)、継続を求める声と再検討すべきという声の双方が存在することを指摘している。

このほか、5月26日にアントニー・ブリンケン米国務長官が行った「現政権の中国に対するアプローチ」と題する講演(2022年5月27日記事参照)を「これまでのバイデン政権の対中政策の基本的枠組みや考え方、今後の指針となるもの」と評価したほか、上下両院で成立した対中競争法案(注)の一本化に向けた両院協議会での審議プロセス開始(5月12日)も、中間選挙を見据えた各党の動きによる成立タイミングの不透明性を含め、注目点としてピックアップされている。

米国の対中政策や措置や米国側から見た米中関係の動向を、行政府、連邦議会、産業界、学会に分けて解説する本レポートは、こちらの特集ページからさかのぼって閲覧が可能。米中関係に関する中国の動向も確認できる。

(注)上院では2021年6月に「米国イノベーション・競争法案(USICA)」が、下院では2022年2月に「米国競争法案(America COMPETES Act)」が、それぞれ可決しているが、それぞれのみに含まれる条項が存在するため、両院協議会での議論が行われる。その主な相違点などについては、2022年4月11日記事を参照。

(滝本慎一郎)

(米国、中国、日本、インド、オーストラリア、韓国、ASEAN)

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