ブリンケン米国務長官、対中演説で米国内投資と多国間連携を強調

(米国、中国)

ニューヨーク発

2022年05月27日

米国のアントニー・ブリンケン国務長官は5月26日、バイデン政権の中国政策にかかる演説外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを行った。

バイデン政権による包括的な対中政策が明らかになるとして注目されたが、内容はおおむね、これまで政権が強調してきた点を繰り返すものだった。ブリンケン長官は冒頭で、米中関係は世界で最も複雑かつ重要な2国間関係だとしつつ、米国は中国との新たな冷戦は望まない、と明言した。一方で、中国は、世界が戦後に構築してきた国際秩序に挑戦していると指摘した上で、今後、対中政策を、(1)投資、(2)連携、(3)競争の3つのキーワードに基づき推進していくとした。

(1)投資については、米国自らの競争力や技術革新、民主主義といった、強さの基盤の底上げが必要だと説いた。これまでの成果として、2021年11月に成立したインフラ投資雇用法(2021年11月9日記事参照)を通じて、国内のインフラ刷新に取り組んでいる点などを挙げつつ、議会が審議している大型の対中競争法案(2022年4月11日記事参照)の早期可決を呼び掛けた。

(2)連携については、バイデン政権は発足初日から同盟・友好国、国際機関を重視していると強調。自らも同行したジョー・バイデン大統領の日韓訪問に際して、「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」を立ち上げたことや(2022年5月24日記事参照)、日米豪印のクアッド(QUAD)首脳会談で海洋状況を把握するための「インド太平洋パートナーシップ(IPMDA)」を創設した点(2022年5月25日記事参照)などを実績に挙げた。欧州諸国とも米欧貿易技術評議会(TTC)などでの連携を通じて、中国による鉄鋼をはじめとする過剰供給問題などに対処しているとした。また、人権問題を挙げて、中国の新疆ウイグル自治区、チベット、香港で起きていることに、世界の国々と連携して対処していくとの意気込みをみせた。

(3)競争については、上述の(1)と(2)を踏まえた上で、中国と効果的に競争していくとした。平等な条件の下での競争は歓迎するとしたが、中国は現状において、貿易・投資分野でさまざまな不公正な慣行を続けるとともに、他国から技術を窃取している、などと指摘した。競争が衝突に発展しないよう、新たなアプローチとして「統合的抑止」を追求していくとした。これは同盟・友好国と結束し、さまざまな領域(ドメイン、注)において、経済・技術・外交面での力を結集して抑止力を働かせる概念としている。

ブリンケン長官は最後に、米中が協力できる分野として、気候変動対策、新型コロナウイルス対策、大量破壊兵器の不拡散、食糧安全保障などを挙げ、「大国が平和的に共存し、人類の進歩に貢献できない理由はない」と締めくくった。

(注)ブリンケン長官は今回、伝統的な領域(陸海空)、核、宇宙、情報を挙げている。

(磯部真一) 

(米国、中国)

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