主要国で強化される投資審査制度、中国企業の投資計画に影響も

(中国、米国、EU)

中国北アジア課

2022年04月18日

中国国際貿易促進委員会(CCPIT)は3月31日、「中国企業の対外投資の現状と意向に関わる調査報告(2021年版)」を発表(注1、2022年4月12日記事参照)。同報告では、諸外国の対内投資審査制度の強化などによる中国企業の対外投資への影響についても調査している。主な調査結果は以下のとおり。

(1)対内直接投資の審査制度や制限措置が最も多いと認識する国・地域

1位は米国で、回答割合は53.7%と突出し、次いでEUが19.1%で続いた(日本と韓国は2.7%)。

(2)審査制度や制限措置が企業の現状の(または今後の)投資計画に影響を与える可能性

「投資を縮小」(37.9%)と「代替となる投資先の国・地域を模索」(37.5%)がそれぞれ4割弱を占め、「現状維持」(21.1%)を大きく上回った。

(3)投資先で直面する(可能性のある)最大の困難や課題(ビジネス面での課題を除く)(複数回答可の設問)

「投資審査措置の厳格化」と回答した企業は13.3%だった。

なお、同設問で「新型コロナウイルスによる影響の継続」との回答が87.6%と最大。次いで「政治情勢が不安定」(51.3%)、「経済、為替レートの変動が大きい」(45.8%)などが上位だった。

上述の調査結果を踏まえると、中国企業の対外直接投資で、投資審査制度が大きな問題と捉えている企業は一部にとどまっているとみられる。他方で、中国企業は米国やEUなどへの投資に当たり、関係する投資審査制度や制限措置が多いとみており、これら制度・措置が、今後の投資意向に影響を及ぼす可能性を示唆している。

米国では2018年に成立した「外国投資リスク審査現代化法(FIRRMA)」により、対米外国投資委員会(CFIUS)の機能や投資審査対象案件の範囲が拡大された。2021年7月に発表されたCFIUSの活動に関する2020年の年次報告書によると、2018年以降の3カ年の国・地域別申請件数のうち、フルスクリーニングのプロセスの届け出については、中国が97件で最多だった(2021年7月28日記事参照)。また、EUでも2020年10月に対内直接投資審査規則の全面適用を開始。同規則は各加盟国に投資スクリーニング制度の導入を義務付けるわけではないが、ドイツやフランス、イタリアなどの主要国では同規則に準拠するかたちで自国の投資スクリーニング制度を強化している(2020年10月13日記事参照)。

なお、中国でも外商投資安全審査弁法を2021年1月に施行(2021年1月14日記事参照)。国の安全に影響を及ぼす(またはその恐れがある)外国企業の投資については、事前の申告を義務付け、審査を実施している(注2)。

(注1)CCPITが開催する展示会など各種イベントの参加企業に対し、アンケート調査を毎年実施し、結果を取りまとめている。2021年版の調査は2021年5~10月に実施し、有効回答数は1,013社、うち対外投資を行っている企業は563社(構成比は55.6%)だった。

(注2)中国の安全保障貿易管理に関わる法制度については、ジェトロのウェブサイト「特集:新たな局面を迎える安全保障貿易管理」の「専門家による政策解説【中国】」を参照。

(小林伶)

(中国、米国、EU)

ビジネス短信 b4db537fabaf0d5d