EU対内直接投資審査規則が全面適用

(EU)

国際経済課

2020年10月13日

EUは10月11日、対内直接投資審査規則外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの全面適用を開始した。同規則は、安全保障や公の秩序の保護を目的に、域外からの直接投資に対し、その是非を審査(スクリーニング)するものだ。世界各国で安全保障を理由とした外資規制強化が進む中、EUは2019年4月に同規則を発効させていた(注)。

同規則は各加盟国に投資スクリーニング制度の導入を義務付けるわけではないが、欧州委員会は、新型コロナウイルスにより株価が暴落した域内企業などを守るため、ガイダンスPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を通してスクリーニング制度の導入・強化を加盟国に訴えてきた。

これを受けてドイツやフランス、イタリアなどの主要国では、同規則に準拠するかたちで自国の投資スクリーニング制度の強化が行われたほか、スロベニアでは2020年5月30日に投資スクリーニング制度を導入する法律外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが発効した。またチェコ(政府発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)やアイルランド(政府発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)など複数のEU加盟国でも、同制度の導入に向けた議論が進んでいる。

規則には審査基準や協力体制などを明示

同規則はまず加盟国に対して、外国投資の審査時に検討すべき要素を例示する。審査対象とすべき分野・業種としては、重要インフラの他、重要技術や個人情報を含む機微な情報へのアクセスなどが列挙されている(同規則4条1項)。重要技術には人工知能(AI)、ロボティクス、半導体、サイバーセキュリティー、航空・宇宙、防衛、エネルギー貯蔵、量子・核技術、ナノテクノロジー、バイオテクノロジーなどが含まれる。

その他、検討すべき審査要素として、当該投資が国営企業など投資元国の政府により支配されているかといった点も挙げられている(4条2項)。

さらに同規則は、加盟国レベルで行われる投資スクリーニング制度の運用について、EU内の連携を強化する規定も設ける。規則によれば、ある加盟国が外国投資の審査を行う場合、その詳細を速やかに欧州委員会と他の加盟国に通知しなければならない(6条1項)。他の加盟国は当該投資が自国の安全保障や公の秩序にも影響を及ぼすと判断する場合、審査国にコメント(comments)を通知することができる(6条2項)。欧州委員会も同様に、当該投資が複数の加盟国に、あるいはEU全体の利益として進められているプログラムに影響を及ぼすと判断する場合、意見(opinions)を送付することができる(6条3項、8条)。審査国はこうしたコメントや意見について、十分な検討を行うべきとしている。

またこうしたコメントや意見は、投資を受け入れる加盟国が審査をしていない外国投資(計画段階の投資や実行済みの投資)についても通知が可能だ(7条1項、2項)。

なお、EUは2020年10月9日に同規則に関するQ&APDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を公開している。

(注)同規則は2019年4月10日に発効した。しかし全面適用の開始まで18カ月の期間が設けられ、その間に各加盟国と欧州委員会は規則の運用に向けた準備を進めていた(2019年3月6日記事参照)。

(山田広樹)

(EU)

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