IMF経済見通し、中国の都市封鎖を初めて織り込む、ウクライナ危機は長期リスクに

(世界)

国際経済課

2022年04月21日

IMFは4月19日、最新の「世界経済見通し」(英語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます日本語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した。2022年と2023年の経済成長率(実質GDP伸び率)予測はともに3.6%で(添付資料表参照)、1月時点の前回見通し(2022年1月26日記事参照)と比較すると、それぞれ0.8ポイント、0.2ポイント下方修正した。

下方修正は、ロシアによるウクライナ侵攻を踏まえたもの。2022年のロシアの成長率見通しはマイナス8.5%と、前回見通し(2.8%)からの引き下げ幅は、主要国・地域で最大の11.3ポイントとなった。先進国・地域では、ユーロ圏の成長率見通しが2.8%(前回見通しは3.9%)となった。世界全体の成長見通し引き下げへの寄与度は、ロシアに次いで2番目に大きい。ロシアとの経済関係が限定的な米国(3.3%)は0.3ポイント引き下げと比較的軽微な影響にとどまった。

IMFに先立ち、ロシアのウクライナ侵攻が世界経済に与える影響の分析結果を発表したOECDによれば、ロシアやウクライナ、近接する欧州などでの経済停滞のほか、世界全体での物価上昇を通じて、世界の経済成長を妨げる(2022年3月18日記事参照)。IMFは、先進国・地域と新興途上国・地域における2022年の物価上昇率の見通しをそれぞれ5.7%、8.7%とし2022年1月の見通しと比較して、それぞれ1.8ポイント、2.8ポイント引き上げた。ロシアは、石油ガスなどのエネルギー供給国であると同時に、ウクライナとともに小麦やトウモロコシなどの食糧供給国だ。物価上昇は、低所得国家を中心に打撃を与えることが予想される。これらの状況を踏まえ、IMFは新興・途上国地域の2022年の経済成長率を1.0ポイント引き下げている。

IMFは今回、ウクライナ侵攻に加え、中国における新型コロナウイルスの感染拡大の影響を試算に加えた。製造業のハブである中国の一部が都市封鎖されることで、経済活動が遅延し、サプライチェーン上の障壁となる影響を考慮している。上海市では都市封鎖が続き、既に米国ロサンゼルス港向けに出港する船舶が減少している(2022年4月11日記事参照)。上海市に位置する日系企業についても、半数以上が市外の物流が停止しているとのアンケート結果が出ている(2022年4月19日記事参照)。こうした影響に加え、原油価格の上昇やEUの需要減などによって、日本の2022年の成長率(2.4%)は0.9ポイントの下方修正となった。

IMFは、今後の世界経済の下振れリスクとして、(ウクライナ)戦争状況の悪化および社会的緊張の高まり(さらなる物価上昇や難民流入)、新型コロナウイルスの感染再拡大と中国における経済停滞、中期的なインフレ期待の台頭や高インフレ率による財政圧迫、地政学リスクの増大(経済統合や技術交流の減退など)、緊急性の高い気候変動問題を指摘している。

(藪恭兵)

(世界)

ビジネス短信 ab97e85c9700bb7b