OECD、ウクライナ情勢の影響を試算、世界の経済成長を1ポイント超押し下げ

(世界、ロシア、ウクライナ)

国際経済課

2022年03月18日

OECDは3月17日、「ウクライナ紛争の経済社会的影響と政策的意味」を発表したPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。ロシアによるウクライナ侵攻以降の1年間で、世界全体の経済成長率(実質GDP成長率)を1ポイント超押し下げ、物価上昇率を2.5ポイント近く押し上げると試算した。

OECDは、侵攻前の2021年12月に発表した経済見通し(2021年12月2日記事参照)において、2022年の成長率を4.5%と予測している。今回の試算は、侵攻直後の2週間で起きた商品・金融市場の混乱が1年以上持続し、ロシアが深刻な経済不況に陥ることなどを前提としている一方、今後の制裁や物流の混乱などは考慮していない。OECDのマティアス・コーマン事務総長は、戦争の行方が依然不透明なため、定期発表する四半期ごとの経済見通しの提示を見送ったと説明した。

地域別には、ウクライナとロシアに近接する欧州への影響が最も大きく、経済成長率が1.4ポイント押し下げられる見込みだ。一方、米国の押し下げ幅は0.88ポイントにとどまり、世界全体(1.08ポイント減)よりも影響が小さい。米州とアジア太平洋の先進国については、世界の需要減やインフレの影響を受ける一方、ロシアとの貿易投資関係が弱い、と指摘している。なお、ロシアを除いた世界全体の押し下げ幅は約0.8ポイントとされる。

押し下げ要因には、エネルギーや食糧などの商品価格の上昇がある。ロシアは、世界全体で天然ガス供給の16%、石油(原油)供給の11%を占める。ロシアへのエネルギー依存度が高い欧州では、ガスのスポット価格が前年同期比で10倍以上、原油価格も2倍近く上昇している。OECDは、ロシアからのEU向けエネルギー輸出が完全停止した場合、欧州の経済成長率がさらに0.5ポイント以上も低下する可能性を挙げる。欧州委員会は、ロシア依存脱却に向けたエネルギー政策を発表している(2022年3月11日記事参照)。

食糧面では、小麦価格が侵攻後に88.4%上昇した(2022年1月比)。ロシアとウクライナは小麦の輸出全体の約3割を両国で占める。UNCTAD(国連貿易開発会議)の報告PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、ベナン、ソマリア、エジプト、ラオスのロシアとウクライナ両国への小麦の依存度は8割を超える(2022年2月22日記事参照)。IMFの投稿記事外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、アフリカ諸国は価格上昇を吸収する政策余地に乏しく、社会経済への圧力や公的債務の脆弱(ぜいじゃく)性がより高まる可能性を指摘されている。

OECDは、ウクライナ侵攻に伴う難民の発生が、EUの経済成長率を0.25ポイント以上も押し下げると分析している。難民1人の受け入れに約1万ユーロを要するとの推計を引き合いに、現時点でウクライナから流出したとされる300万人分について試算した。また、OECDの試算には含まれていないが、UNCTADは、物流について、中国から欧州への陸路輸送が海路に変更されることで、既に混雑するアジア~欧州の海路輸送需要が5~8%増加するとの見通しを示した。UNCTADは、パンデミック下でのコンテナ運賃の上昇が消費者物価を1.5%押し上げたとの分析に触れ、今回の侵攻も経済に重大な影響をもたらすとしている。

(藪恭兵)

(世界、ロシア、ウクライナ)

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