新型コロナワクチンのブースター接種は5割、交互接種による有効性向上を肯定

(中国)

中国北アジア課

2022年04月08日

中国国務院の新型コロナウイルス防疫メカニズムは4月6日の記者会見で、前日の5日時点の新型コロナワクチン接種状況を発表した。各ワクチンの規定接種回数を完了した者は12億4,323万人で、全人口の88.2%に達した。ブースター接種の完了者は7億569万人で、全人口の5割となった(注1)。うち、2月に開始した交互接種(2022年2月24日記事参照)を受けた者は1,951万人。ブースター接種の完了者に占める交互接種を受けた者の割合は2.8%にとどまった。

また、60歳以上の規定回数接種完了者は2億1,282万人で、同年齢層の人口総数の8割に達した(注2)。一方、同メカニズムは記者会見の冒頭で「高齢者の接種を加速する必要がある」と強調。重症化リスクが高いとされる高齢者の接種状況に課題を感じているようだ。3月18日の会見時に公表した60歳以上の年齢階層別の接種状況をみると、同月17日時点の規定回数接種完了者は60~69歳で86.6%、70~79歳で81.7%と、いずれも8割を超えたのに対し、80歳以上では50.7%だった。また、80歳以上のブースター接種の完了者の割合は19.7%にとどまった。

ワクチン交互接種の有効性向上で、国産mRNAワクチン開発にも注力

中国政府はこれまでに、ワクチン接種の推進に加えて、その有効性向上も重視する姿勢を示している。新型コロナウイルス感染の収束の具体的条件(2022年3月24日記事参照)を挙げた中で、ワクチンの有効性のさらなる向上に言及していた。

有効性向上に関連する点として、上述の4月6日の会見で「同種のワクチンによるブースター接種と比較し、交互接種では、より大きな抗体力価(抵抗力)の増加幅が得られる」との研究結果を公表。交互接種による有効性の向上を認めた。他方で「まずは(交互接種にこだわらず)規定回数の接種とブースター接種を迅速に完了させることが喫緊の課題」と述べ、主流となっている国産不活化ワクチンによるブースター接種も引き続き重視する姿勢を維持した。

今後のワクチン有効性向上については、メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンの国内への導入と、交互接種の対象への追加の動向が注目される。米国のファイザー製とモデルナ製のワクチンはmRNAワクチンの代表格だが、中国で販売登録を条件付きで承認された新型コロナワクチンは全5種類で、いずれも国内製(2022年3月8日記事参照)。mRNAワクチンは含まれていない。中国では複数のメーカーがmRNAワクチンの開発に取り組んでおり、臨床試験段階にあるとされる(2022年4月8日記事参照)。

中国国家衛生健康委員会の疾病対策予防専門家委員会の委員、盧洪洲氏は3月30日、香港の公共放送局「香港電台(RTHK)」の取材に際し、「世界で主に使用されている数十種類の新型コロナワクチンのうち、mRNAワクチンの効果が最も理想的で、中国本土への導入に賛同する」との見解を述べた(「香港電台網」3月30日)。

(注1)ブースター接種の接種完了者(および、そのうち交互接種を受けた者)の全人口に占める割合は、第7回人口センサス(2021年5月の中国国家統計局発表)による2020年末の総人口(14億1,178万人)を母数としてジェトロが算出。

(注2)60歳以上の「規定回数接種完了者」が同年齢層の人口に占める割合は、第7回人口センサスによる2020年末の60歳以上の人口(2億6,400万人)を母数としてジェトロが算出。

(小林伶)

(中国)

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