EU、エネルギーや鉄鋼分野など対ロシア制裁第4弾を採択、最恵国待遇も撤回

(EU、ロシア、ウクライナ)

ブリュッセル発

2022年03月16日

EU理事会(閣僚理事会)は3月15日、ロシアのウクライナへの侵攻に対する第4弾となる制裁パッケージ(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を採択した。3月10、11日のEU首脳の非公式会合(2022年3月14日記事参照)を受けたものだ。EUはこれまでに、2月23日の第1弾(2022年2月24日記事参照)以降、同25日の第2弾(2022年2月28日記事参照)と28日の第3弾(2022年3月2日記事参照)を実施しており、3月12日以降はロシアの7銀行を国外送金の国際銀行間通信協会(SWIFT)システムから排除(2022年3月3日記事参照)するなど、ロシアに対してEU史上最大規模となる制裁を科している。その後も、ロシアによるウクライナ侵攻は続いていることから、EUはロシアに対する制裁をさらに強化している(2022年3月11日記事参照)。

第4弾となる今回の制裁パッケージの主な内容は以下のとおり。

  • 石油関連のロスネフチ、トランスネフチ、ガスプロム・ネフチなどを含む特定のロシア国営企業との全取引の禁止(ただし、ロシアからの天然ガス、石油などの化石燃料、チタニウム、アルミニウムなどの資源の不可欠な輸入は認める)
  • ロシアからの鉄鋼製品の輸入禁止。ただし、鉄製品(iron products)は含まない。
  • ロシアへの高級車や宝飾品などのぜいたく品の輸出禁止
  • ロシアのエネルギー産業への新規および拡大投資、エネルギー産業に必要な物品、技術、サービスなどの輸出の原則禁止
  • ロシアの軍事産業の強化につながる可能性のある二重用途物品や技術の輸出制限の対象となる産業(航空、宇宙分野)や対象企業の拡大
  • ロシア国籍者、企業などに対する格付けサービスの提供の禁止

また、EU理事会は同日、EU域内の資産凍結や、資金提供などの禁止、域内への入域禁止の対象拡大も採択(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。対象には、著名な新興財閥(オリガルヒ)のロマン・アブラモビッチ氏やロシア国営テレビ局チャンネル1の最高経営責任者(CEO)など15人と、航空、軍産複合体、造船、機械などの企業を含む9団体を新たに追加した。

なお、米国(2022年3月9日記事参照)や英国(2022年3月9日記事参照)が発表しているロシアからのエネルギー輸入制限措置に関して、欧州委員会のバルディス・ドムブロフスキス執行副委員長(経済総括、通商担当)は記者会見で、今後もあらゆる選択肢を検討していくとしたものの、具体的な言及は避けた。

さらに、EU理事会は3月15日、ロシア製の物品とサービスに対する貿易上の最恵国待遇を一時停止することで合意した。これは、3月11日に日本や米国を含むG7が合意したもので、米国は既にその方針を発表している(2022年3月14日記事参照)。欧州委員会はロシアに対するWTOの最恵国待遇の撤回に関して、EUとG7諸国のほかに、アルバニア、オーストラリア、アイスランド、韓国、モルドバ、モンテネグロ、ニュージーランド、北マケドニア、ノルウェーが参加するとしている。

(吉沼啓介)

(EU、ロシア、ウクライナ)

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