EU、ロシアへの追加制裁を決定、ベラルーシ制裁も大幅強化

(EU、ロシア、ウクライナ、ベラルーシ)

ブリュッセル発

2022年03月11日

EU理事会(閣僚理事会)は3月9日、ウクライナへの侵攻を続けるロシアとそれに協力しているとされるベラルーシに対する新たな制裁措置を採択した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

ロシアへの制裁には、EU域内の資産凍結や、資金提供などの禁止、域内への入域禁止の対象に、新たに160人を追加した(プレスリリース)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。特定の個人・団体に対する制裁に関しては、既にロシア政府・軍関係者だけでなく、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に近いとされる一部の新興財閥(オリガルヒ)を制裁対象に追加しているが(2022年3月2日記事参照)、今回は金属工業、農業、製薬、通信、デジタル分野のオリガルヒとその家族14人を新たに追加。また、ロシア連邦院議員146人も追加した。これにより、制裁対象は合計で862人・53団体となった。

また、EU理事会はロシアに対する分野別の輸出制限も強化した。航海に関連した製品と無線通信技術に関して、直接的か間接的かにかかわらず、ロシア在住者やロシア船舶向けの販売、供給、譲渡、輸出を禁止する。

さらに、EU理事会は、2月25日に採択した金融分野の制裁措置(2022年2月28日記事参照)の対象となる法人や団体も拡大した。特定のロシアの主要銀行やその子会社などに対する譲渡可能証券の売買や投資サービスの提供の禁止措置の導入が決定しているが、対象となる譲渡可能証券には暗号資産(crypto-assets)も含まれることを明確にしている。

対ベラルーシ制裁の大幅強化は、ロシア制裁の抜け穴防止

EU理事会は同じく3月9日、ロシアに対する制裁の抜け穴をふさぐ必要があるとして、ベラルーシの金融分野を対象とした新たな制裁措置を採択した。今回の措置には、ロシアの一部銀行に対する制限措置(2022年3月3日記事参照)と同様に、国外送金〔国際銀行間通信協会(SWIFT)〕システムからのベラルーシの3行(ベラグロプロム銀行、ダブラビト銀行、ベラルーシ共和国開発銀行)の排除、ベラルーシ中央銀行が保有する資産や外貨準備に関連した取引の禁止、4月12日以降のEUの取引所でベラルーシ国営企業の株式取り扱い禁止を含む。また、ベラルーシからの資金流入を大幅に制限するために、ベラルーシ国籍者・在住者からの10万ユーロを超える預金の受け入れ、EUの証券集中保管機構によるベラルーシの顧客向け口座の保有、ベラルーシの顧客向けユーロ建て証券の販売をそれぞれ禁止する。ベラルーシ向けのユーロ紙幣の提供も禁止となる。

EU理事会は2日にも、EU域内の資産凍結や、資金提供などの禁止、域内への入域禁止の対象にベラルーシの軍関係者22人を追加するとともに(合計で702人と53団体が対象)、たばこ、鉱物性燃料、木材、セメント、鉄鋼、ゴム製品などの生産・製造に関連する産品の取引や、二重用途物品・技術の輸出を制限する措置を採択(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)している。

(吉沼啓介)

(EU、ロシア、ウクライナ、ベラルーシ)

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