スペイン外相がメキシコ訪問、電力市場改革に懸念表明

(メキシコ、スペイン)

メキシコ発

2022年03月11日

スペインのホセ・マヌエル・アルバレス外務・EU・国際協力相は3月9日、メキシコ市を訪問し、マルセロ・エブラル外相や、上院のオルガ・サンチェス・コルデロ議長および政策調整委員会メンバー、クラウディア・シェインバウム・メキシコ市長などと会合を持った。

外相会談では、科学技術協力や2国間の政策対話、女性に関する対外的政策、文化と持続的開発の政策に関する4つの合意文書に署名した(3月9日付メキシコ外務省プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。上院議員団との会合では、2020年4月に最終合意したEUメキシコ自由貿易協定(FTA)の現代化(2020年4月30日記事参照)を含むEUメキシコ経済連携・政策調整・協力協定(通称、グローバル協定)の早期署名の必要性を確認した(3月9日付メキシコ上院プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。一連の会合で、アルバレス外相は500年以上の友好の歴史、6,800を超えるメキシコ進出スペイン企業と2万世帯を超えるスペイン移民の存在を挙げ、両国の友好関係を今後も維持することを強調した。

他方、上院議員との会合やメディアの取材では、アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領が国会に提出した電力再国有化に向けた憲法改正案(2021年10月4日10月6日10月14日11月5日記事参照)に対するスペイン政府の懸念を表明した。アルバレス外相はエミリオ・アルバレス・イカサ上院議員に対し、メキシコの法的枠組みを信頼して投資をしてきたスペイン企業に対し、憲法改正案が過去にさかのぼっての悪影響を及ぼし、既存事業の継続性を危うくすることに懸念を表明し、スペイン企業に法的信頼感を与えることを求めた(3月10日付現地紙「ミレニオ」)。また、同日に行われたミレニオ紙の取材に対しても、全ての国は新たな法規を制定し、既存法規を発展させていく主権を有していることは理解するが、新たな法規が既にメキシコに投資を行った企業の操業条件を後から変更したり、EUメキシコFTAなど国際協定に反する内容であれば、スペイン政府として強い懸念を抱くと語っている。

アルバレス外相、スペイン企業に対する大統領発言内容をあらためて否定

AMLO大統領は、スペイン企業が伝統的にメキシコを搾取しているという内容の発言(2022年2月15日記事参照)を何度か行っていたが、アルバレス外相がメキシコを訪問した3月9日の記者会見でも、AMLO大統領はスペイン企業3社を名指しして「メキシコを植民地のように搾取してきた」と語り、スペイン企業とのこのような関係を「停止」させるべきという持論を繰り返した。

これに対し、アルバレス外相は「ミレニオ」紙に対する取材の中で、大統領の発言は全く理解できないとし、メキシコの福祉や成長に貢献してきたスペイン企業の存在を直視しないばかりか、全く根拠のない批判だと強調、メキシコで約7,000の企業が約30万人の直接雇用を生み出している貢献について強調した(3月10日付現地紙「ミレニオ」)。

(中畑貴雄)

(メキシコ、スペイン)

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