電力再国有化に向けた憲法改正案に反対の声が相次ぐ

(メキシコ)

メキシコ発

2021年10月06日

メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領が10月1日に国会に提出した、電力分野における国の権限を強化する憲法改正案(2021年10月4日記事参照)に対し、経済界や識者からは反対の声が相次いでいる。

メキシコ経営者連合会(COPARMEX)は10月4日付のプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、「国民のために国営企業である電力庁(CFE)を強化する意義は認めるが、エネルギー部門の強化は民間企業を排除する方法ではなく、官民の協力の下で行うべきだ」とし、「民間企業の電力分野への投資は、メキシコの家庭や企業に電力を供給し経済を活性化させ、社会開発を促進するために不可欠な要素だ」と主張している。COPARMEXはまた、同じプレスリースの中で、憲法改正案で廃止が提案されているエネルギー管理委員会(CRE)や国家電力管理センター(CENACE)などの独立規制機関についても言及。「これらの機関は電力市場における法的安定性を付与する重要な存在だ」とした上で、「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の規定の中でメキシコは独立した規制当局を維持することを約束しており、同改正の内容はUSMCAにも反するものだ」と警告している。

今回の憲法改正案は、憲法の既存の条項に違反する、とする識者も多い。従って、改正が成立しても、憲法訴訟が起こされる可能性が高い。具体的には、法の不遡及(ふそきゅう)を定める憲法第14条と、公共調達における経済性、効率性、公平性、誠実性の確保を定める憲法第134条に違反するという。ホランド・アンド・ナイト(Holland & Knight)弁護士事務所のクラウディオ・ロドリゲス弁護士は「仮にいくつかの条項を改正できたとしても、法の不遡及と既得権の原則に背くことはできない」と語る。メキシコ風力発電協会(AMDEE)およびメキシコ太陽エネルギー協会(Asolmex)によると、今までの民間企業による風力発電や太陽光発電への投資額は190億ドルに及ぶ(現地紙「レフォルマ」10月5日)。

国民行動党は主要野党の結束を呼び掛け

野党第1党で中道右派の国民行動党(PAN)のハイメ・ロメロ下院院内総務は10月5日、野党第2党で中道の制度的革命党(PRI)に対し、選挙時に形成した連合を維持し、結束して行政府の憲法改正案に反対する姿勢を明確にするよう求めた。PANや中道左派の民主革命党(PRD)は今回の憲法改正に明確な反対を表明しているが、PRIは十分な議論が必要としているだけで、現時点で明確な姿勢を示していない。PANのロメロ院内総務は、今回の法改正に対して結束できるかどうかが今後の野党連合の存続を決めるとし、PRIの動きを牽制している。6月6日の中間選挙で下院の議席を大きく減らして以降、与党・国家再生運動(Morena)はPRIに接近しており、国会運営における協力を呼び掛けている。AMLO大統領が9月11日、PRI出身であるシナロア州のキリーノ・オルダス知事(10月31日に任期満了)を次期駐スペイン大使に任命する考えを示すなど、憲法改正のカギを握るPRIの支持確保に向けた与野党の駆け引きが続いている。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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