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経済界、電力再国有化の憲法改正が実現した場合の損害発表

(メキシコ)

メキシコ発

2021年10月14日

日本の経団連に相当するメキシコの企業家調整評議会(CCE)は10月13日、アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領が国会に提出した電力再国有化に向けた憲法改正案(2021年10月4日記事参照)が実現した場合の実害に関するレポート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。憲法改正が実現した場合、(a)エネルギー管理委員会(CRE)や国家電力管理センター(CENACE)といった独立機関が廃止されることによって市場がゆがめられ、事業者でもある電力庁(CFE)自らがルールを決定する状況になること、(b)CFEが発電も売電も含めて全ての段階で独占企業となること、(c)民間企業が総額440億ドルを投じて実現した事業の許認可を正当な理由もなく全て取り消すことを通じ、以下の損害を国にもたらすとしている。

  1. CFEの非効率な発電所を優遇することによる電力コスト上昇
  2. CFEの販売価格を低く抑えるための補助金支出(財政負担)拡大
  3. エネルギー転換(脱炭素)に向けた世界の動きに逆行
  4. 国際協定違反となり外国投資家や外国政府から提訴される

1.について、CFEの発電所は一般的に古く、メンテナンスも不足しているため、民間事業者に比べて発電コストが高く、前政権下で実施された長期電力競売(SLP、2018年9月12日記事参照)で調達する電力と比較すると、3.5倍にも達すると主張する。2.では、非効率な発電を増やす一方で、大統領が約束しているように電力価格を引き上げないとした場合、政府の財政支出が1兆4,000億ペソ(約7兆7,000億円、1ペソ=約5.5円)増加するとしている。3.に関しては、民間による再生可能エネルギー発電よりもCFEによる古い火力発電などを増やすことになるため、2030年までに二酸化炭素(CO2)排出量がベースライン比で45.7%増加するとしている。4.については、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)や環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)などの規定に違反するため、既に多額の投資を行っている外国企業による国際仲裁への提訴や、国対国の投資紛争パネルで敗訴することによる制裁措置の適用を招くとしている。

実態は民間発電所から安い電力調達

政府は記者会見などで、前政権下で実現したエネルギー改革の結果、CFEが民間企業から高い電力を買わされていると主張しているが、家庭や電力需要1メガワット未満の事業者に電力を供給する電力基礎サービス供給業者(CFE-SB)に関するCREの公開データ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますをみると、実際はそうはなっていない。2021年1~9月にCFE-SBが調達している電力のうち、エネルギー改革により実現したスキーム(SLPおよび電力卸売市場)による調達は全体の12.0%にすぎず、残りはCFEの発電所、あるいは民間の独立発電事業者(IPP)から調達した電力だ(添付資料図1参照)。同調達コストを比較すると、CFEの発電コストの方が圧倒的に高く、CFEの発電所の平均単価は、民間の再生可能エネルギー発電所からSLPを通じて調達した電力の平均単価の4.6倍に及ぶ(添付資料図2参照)。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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