経営者団体、環境目標未達ならグローバル企業は撤退することになると警告

(メキシコ)

メキシコ発

2022年02月16日

メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領が2021年10月1日に国会に提出した電力再国有化に向けた憲法改正案(2021年10月4日10月6日10月14日11月5日記事参照)についての公聴会(2022年1月19日記事参照)が連邦下院で続いている。2月14日に行われた18回目のセッションでは、「環境・気候変動と2030年目標」がテーマとなった。同セッションには、メキシコのGDPの10%、輸出総額の11%、対内直接投資の40%を占め、50万人の雇用を創出する多国籍企業56社の経営者が参加するグローバル企業経営者審議会(CEEG)のアルベルト・デ・ラ・フエンテ会長が参加し、CEEGとして憲法改正案についての見解を表明した。

デ・ラ・フエンテ会長は、今回の憲法改正が成立して電力庁(CFE)がメキシコでのエネルギー転換の全ての役割を担う場合、2024年にクリーンエネルギーによる発電を全発電容量の35%まで引き上げるという目標達成は不可能と主張する。再生可能エネルギー発電能力の増強には60億ドルの投資が必要となり、CFEには十分な資金も技術もないからだという。また、2030年に黒色炭素の排出をベースライン比51%、温室効果ガスを22%削減するというメキシコの目標も達成不可能になると強調する。グローバル企業の中には、社会的責任から環境目標を重視している企業も多く、メキシコが国としてクリーンエネルギーの目標を達成できないと判断した場合、撤退することになるだろう警告している(2月15日付現地紙「レフォルマ」)。実際に、CEEGに加入しているゼネラルモーターズ(GM)メキシコは2021年11月19日、再生可能エネルギー発電を重視する法的枠組みや組織的枠組みがメキシコに存在しない場合、GMはメキシコでの新たな投資を控えざるを得ないと警告している(2021年11月22日記事参照)。

過去30年の発電事業投資の大半は民間部門による

日本の経団連に相当する企業家調整評議会(CCE)によると、過去30年間のメキシコの発電能力増強の76%が民間部門による投資で、CFEは2019年以降、新たな発電能力増強投資を一切行っていない。他方、エネルギー管理委員会(CRE)による民間発電事業者に対する許認可の付与はAMLO政権下で極端に減少しており、150件の総額400億ドルに及ぶ将来に向けた発電プロジェクトがストップしている。

電力改革に関する公聴会は、当初予定よりも期間を延長して2月28日まで開催され、合計25のテーマについて関係者や専門家による議論が行われる。その後、下院エネルギー委員会で、本会議で採決にかけるための憲法改正の最終案が作成される見通しだ。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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