中国、ローンプライムレートを引き下げ

(中国)

中国北アジア課

2021年12月21日

中国人民銀行(中央銀行)は12月20日、期間1年のローンプライムレート(以下、LPR)を、3.85%から3.80%に0.05ポイント引き下げると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。引き下げは2020年4月以来1年8カ月ぶりとなる。LPRは最優遇貸出金利の指標とされており、期間1年と期間5年以上の2種類が公表されている。今回は期間1年のLPRのみが引き下げられた。期間5年以上のLPRは、2020年4月の引き下げ以降4.65%で据え置かれている。

LPRは2013年10月から公表が開始され、2019年8月に貸出金利の参照基準として導入された指標だ。中国人民銀行は、毎月20日に18行の報告対象銀行(注1)から提出された金利(注2)のうち、最高値と最低値を除いた平均をLPRとして公表している。

今回の金利引き下げは、直近1カ月で、ニュージーランド、韓国、ペルー、ハンガリー、英国がそれぞれ政策金利を引き上げ、米国も2022年末までの利上げの実施可能性が指摘される中で行われた(注3)。中国の市場関係者は、2021年7月15日(0.5ポイント)と12月15日(0.5ポイント)に実施した2回の預金準備率の引き下げを受け、銀行の資金調達コストが低下したことを、今回のLPR引き下げの要因の1つとみている(「財連社」2021年12月20日)。中国人民銀行は、12月15日の預金準備率引き下げについて「金融機関による実体経済下支えのため、資金の安定性を強化する」と述べており、今回のLPR引き下げは経済の安定を図る一連の動きともみられる。

また、12月8~10日に行われた中央経済工作会議においても、穏健な金融政策を継続して柔軟で適度なものとし、流動性の合理的な余裕を保つとしていた(2021年12月14日記事参照)。中国大手証券会社の中信証券研究部の程強首席マクロ経済アナリストは「期間5年以上のLPRは主に住宅ローン利率の指標となっている。期間5年以上のLPRを据え置いたのは、『住宅は住むためのもので、投機のためのものではない』という政策との一貫性を考慮したもの」と解説した。

(注1)中国工商銀行、中国農業銀行、中国銀行、中国建設銀行、交通銀行、中信銀行、招商銀行、興業銀行、上海浦東発展銀行、中国民生銀行、西安銀行、台州銀行、上海農村商業銀行、広東順徳農村商業銀行、スタンダードチャータード銀行(中国)、シティバンク(中国)、深セン前海微衆銀行、浙江網商銀行。

(注2)中国人民銀行が公開市場操作に使用する、主に中期貸出ファシリティー(中国人民銀行が金融機関に対し3カ月から1年の期間で資金を有担保で貸し出す制度)に、金融機関におけるその他コストを上乗せしたもの。

(注3)各国の金融政策については、ジェトロビジネス短信参照。ニュージーランド(2021年11月26日記事参照)、韓国(2021年11月29日記事参照)、ペルー(2021年12月13日記事参照)、ハンガリー(2021年12月16日記事参照)、米国(2021年12月17日記事参照)、英国(2021年12月17日記事参照)。

(亀山達也)

(中国)

ビジネス短信 5f09599fb32e130b