ウラジオストクのルースキー島にイノベーション拠点設置

(ロシア)

モスクワ発

2020年12月01日

ロシア政府は11月18日、ウラジオストクの南に位置するルースキー島に、イノベーション科学技術センター「ルースキー」の設置を決定した(2020年11月18日付連邦政府決定第1868号)。同島には極東連邦大学のキャンパスがあり、産学連携を通じたイノベーション促進が期待される。

イノベーション科学技術センターは連邦法で定められている特区で、域内で事業を行う入居者は諸税や社会保険料の減免などの優遇措置が受けられる(ジェトロ・ウェブサイトのロシア「外資に関する奨励」参照)。連邦法によると、入居者となれるのは科学技術に関する活動を行うロシア法人のみで、センターの運営母体は教育機関や科学技術研究機関である必要がある。「ルースキー」の運営母体は極東連邦大学で、科学技術事業のうち海洋学とバイオテクノロジー、情報通信技術の3つが対象分野だ。

「ルースキー」創設については、9月に承認されたロシア極東地域の発展プログラムでも言及しており(2020年10月19日記事参照)、2026年に整備が完了するとされる。極東連邦大学の関係者によると、大学キャンパス周辺にセンター用の建物として研究棟、教育棟、住居棟などを整備する。2021年から建設が始まる予定だ。

2019年9月にウラジオストクで開催された東方経済フォーラムで、極東連邦大学のニキータ・アニシモフ学長は「イノベーション科学技術センター創設により、本学とハイテク企業との協力がさらに活発になり、スタートアップ企業の支援やデジタル経済など新分野に関する教育プログラムが充実する」と期待を示していた。

既にロシア国内に設置されているイノベーション科学技術センターは、「ボロビヨブィ・ゴルィ(雀が丘)」(運営母体はモスクワ国立大学)(2019年4月4日記事参照)、「ドリナ・メンデレエワ(メンデレエフ・バレー)」(メンデレエフ記念モスクワ化学技術大学)、ソチの「シリウス」〔教育財団「タラント・イ・ウスペフ(才能と成功)」〕(2019年11月19日記事参照)の3カ所。このほか、トゥーラでの設置が検討されている。

類似した名称の組織として、極東連邦大学内でスタートアップ企業の支援を行う「テクノパーク・ルースキー」が2017年に設立されている。同大学とスコルコボ基金が共同で設立した組織で、登録されたスタートアップ企業に対して無料でコンサルティングを行っている(2019年2月1日記事参照)。

(タギール・フジヤトフ、浅元薫哉)

(ロシア)

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