モスクワ大学に科学技術分野のイノベーションセンター創設

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2019年04月04日

ロシアのメドベージェフ首相は3月28日、モスクワ大学にイノベーション科学技術センター「雀が丘」創設に関する連邦政府決定第332号に署名した。センター設立はロシアにおける科学技術発展に向けた優先分野の実現と、研究開発分野への投資誘致拡大を目的としたもの。

対象分野は、a.バイオメディカル、製薬、バイオ医療研究・試験、b.新素材ナノテク研究、ナノ機械製造、c.IT、数理モデル、d.ロボット、特別用途・機械エンジニアリング技術、省エネ、エネルギー貯蔵、e.宇宙研究・宇宙航空術、f.地球科学・環境、g.学際的人文研究、認知科学。モスクワ大学がこのプロジェクトの主導者として中核機能を担う。センターはモスクワ大学キャンパスのあるロモノソフ大通り沿いに設置される。運営は会社形態で行われ、モスクワ市も参画する。

経済発展省のオクサナ・タラセンコ次官は「センターはビジネスに必要とされている技術の開発と導入、高度人材の誘致を目的としたもので、(単なる)インフラプロジェクトではない」と強調。さらに、科学、教育、実業界の努力をシンクロ(同期化)させ、国家プロジェクトの実現を目指すためものと述べた(「コメルサント」紙3月29日)。

センター創設は2017年7月29日付の連邦法第216-FZ号「イノベーション科学技術センターおよび一部の法律の改正について」に基づくもので、入居者はスコルコボ・イノベーションセンターと同等の税制や、外国人雇用面での優遇措置が受けられる(ジェトロウェブサイト・ロシアの「外資に関する奨励」「外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用」参照)。加えて、医療や教育分野で通常必要なライセンスを取得せずに活動することが可能とされている。

他方、プロジェクトの実現のためには20以上の産業パートナー、投資家が必要とされ、連邦政府は国家コーポレーションや国営企業に対し、センターにおけるハイテク分野の活動の実施、センター施設の創設と発展への参画を促している。同様のイノベーションセンターの創設は、タンボフ州ミチュリンスク市やクラスノダル地方ソチ市などにも計画されているほか、タタルスタン共和国、カリーニングラード州、トゥーラ州、リャザン州も関心を示している。

なお、モスクワ大学は同大学の研究者、学生のアイデア実現をサポートするためのサイエンスパークを有する。石油ガス、ハイテク、テレコム・IT、バイオ、新素材、化粧品、サービスなどの分野の起業が毎年25~50件あり、これまでに100社もの長期間活動のベンチャー企業を創出している(2018年6月15日付地域・分析レポート参照)。

(齋藤寛)

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