通商環境の変化でマイナスの影響を受ける企業は42%、2020年度米国進出日系企業調査

(米国、中国)

米州課

2020年12月25日

ジェトロが12月22日に発表した「2020年度海外進出日系企業実態調査(北米編)」(2020年12月22日記事参照)によると、追加関税など通商環境の変化について「全体としてマイナスの影響がある」と回答した在米日系企業は36.3%(前年調査:40.8%)、「マイナスとプラスの影響が同程度」が5.7%(9.7%)となった(添付資料図1参照)。合わせると42.0%の企業が何らかのマイナスの影響を受けているが、前年(50.5%)からは8.5ポイント減少した。また、「わからない」との回答は15.9%で前年(26.4%)から10.5ポイント減少する一方で、「影響はない」との回答は37.8%と前年(21.0%)から16.8ポイント増加した。「全体としてプラスの影響がある」は3.8%(2.1%)だった。

業種別にみると、「全体としてマイナスの影響がある」と回答した企業の割合は繊維・衣服(62.5%)や電気・電子機器(60.0%)、自動車などの部品(55.4%)で5割を超えた。これら業種の中国からの調達割合をみると、電気・電子機器は17.1%と高く、製造業平均(6.4%)の2.7倍と、中国への部品調達依存度が高くなっている(添付資料図2参照)。他方、繊維・衣服の対中調達割合は8.6%、自動車などの部品は4.1%と1割未満だが、両業種とも、個別企業でみると対中調達率が3割を超える企業が複数みられた。通商環境の変化により具体的に影響を受けている品目を聞いたところ、電気・電子機器部品では基板完成品やディスクリート半導体製品、半導体製造機器、プリンタ関連製品など、自動車などの部品ではモーターや変速機器用部品、金型、樹脂半製品、鋼材など多岐にわたる。

一方、「全体としてプラスの影響がある」と回答した企業の割合は、鉄・非鉄・金属で12.7%に達した。プラスの理由として、「競合する中国製鉄製品が米国に輸入されないため」「米中摩擦だけでとどまれば、日本などからの輸出入で競合先より有利」といったコメントが聞かれた。

マイナスの影響は「米国の通商法301条に基づく追加関税」が57%に増加

「マイナスの影響を受ける具体的な政策を聞いたところ、「米国の通商法301条に基づく追加関税」と回答した企業は57.3%(前年:52.3%)、「中国の米国に対する報復関税」は28.5%(23.9%)と前年の数字をそれぞれ5ポイント前後上回ったが、「米国の鉄鋼・アルミニウムを対象とした追加関税賦課」は24.4%で、前年(42.4%)の数字を18ポイント下回った(添付資料図3参照)。「米国の通商法301条に基づく追加関税」を弾別にみると、第3弾が46.6%で最も高く、第1弾と第2弾がそれぞれ37.0で続いた。業種別でみると、「通商法301条に基づく追加関税」を挙げた企業の割合は、精密・医療機器(87.5%)、電気・電子機器部品(77.8%)、運輸業(75.0%)、その他製造業(72.2%)、自動車などの部品(67.9%)で高かった。具体的な影響として、「中国製品仕入れ価格が25%上昇して、北米での販売機会が大幅に減少する」(販売会社)や「中国指定5社の政府調達禁止(注1)や対中輸出管理規制による自社製品販売、調達への影響がある」(電気・電子機器)といったコメントが聞かれた。

対応策は「情報収集体制の強化」が半数、「他社製品・部品の調達国・地域の変更」は24%

通商環境の変化への対応策としては、「情報収集体制の強化」が50.4%と上位に挙がり、「生産性向上・効率化によるコスト吸収努力」が33.3%、「他社製品・部品の調達国・地域の(一部)変更」が24.3%(注2)で続いた(添付資料図4参照)。具体的な取り組みとして、顧客の生産拠点移転に関する情報収集(精密・医療機器)、自動化・省力化・サイクル改善(プラスチック製品)、ASEANからの調達検討(自動車などの部品)、地産地消のサプライチェーン・マネジメントを強化(商社・卸売業)などが挙がった。

(注1)米国政府機関がファーウェイなど指定5社の製品などを利用している企業と契約を行うことを禁止する、2019年度国防授権法(2019年度NDAA)の第889条に関する最終暫定規則が2020年8月13日に施行されている(2020年7月15日記事参照)。

(注2)在米日系企業のサプライチェーン見直しの動きについては、2020年12月24日記事参照

(中溝丘)

(米国、中国)

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