ジェトロによる「進出日系企業実態調査」の結果 ―米州編―

2020年12月22日

ジェトロは2020年9月、海外に進出する日系企業に対し、現地での活動実態に関するアンケート調査を実施しました。米州(北米2カ国、中南米7カ国)における調査結果のポイントは以下のとおりです。

調査結果の主要ポイント

USMCA: 部品は半数が影響なし、完成車は半数以上がマイナスと回答
  • 2020年7月1日に発効したばかりの米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の影響について北米3ヵ国で質問した。協定発効後では今回が初めての調査となる。
  • 域内関税がゼロになる条件である「原産地規則」が厳しくなった自動車・同部品業界への影響が大きいと思われたが、北米3ヵ国ともに4~5割弱が「影響なし」との回答だった。「マイナスの影響あり」との回答に至っては、米墨ともに1割強、カナダはゼロだった。
  • 一方、完成車メーカーに限定すると、米国で75%、メキシコで50%が「マイナスの影響あり」と回答。完成車メーカーと部品メーカーで捉え方が大きく異なるが、この理由として、部品メーカーの対応は完成車メーカーの方針に強く依存すること、完成車の規則には2025年まで経過措置が設けられていること、新型コロナへの対応がより緊急性の高い課題であったことなどが挙げられる。
北米:新型コロナで業績は大幅に悪化。ビザ制限の影響も広がる
  • 日系企業の業績は新型コロナ感染拡大で大幅に悪化。2020年に黒字を見込む企業は米国・カナダとも5割前後と前年から大きく減少したが、リーマンショック直後(2009年)ほどの落ち込みではなかった。現地販売の減少が主因。活動制限が続き、新規顧客開拓がままならない中、各社はバーチャル展示会やEコマースの活用など営業・販売のデジタル化に取り組む。
  • 他方で、懸念された新型コロナのサプライチェーンへの影響は限定的で、調達先などを見直す企業は両国とも1割前後。その理由も新型コロナより追加関税やコスト高などが目立った。
  • 在米日系企業の最大懸念の一つ、米国のビザ発給制限には5割近くの日系企業が影響を受けていることが明らかに。今年6月末に実施の調査(回答企業958社)で35%が影響ありと答えていたのに比べ、さらに影響が拡大している。
中南米:現調化で変化に対応するメキシコ、デジタル化で早期回復見込むブラジル
  • メキシコでは進出日系企業の現地調達率が上昇。追加関税、USMCAなど通商環境の変化やコスト削減に対応するため、日・米・中国からの調達変更が一部進展したため。
  • ブラジルでは、事業のデジタル化を迅速に進めた企業が多かった。メキシコと違い輸入販売主体の企業が多く、オンライン商談などに対応しやすかったためだ。政府の財政拡張もあり、正常化後の需要が「コロナ以前より拡大する」ことを見込む企業も他国より多かった。

北米:黒字見込みはリーマンショック後以来の低水準。新型コロナが響く

調査の結果概要

1.営業利益見込み

  • 2020年に黒字を見込む日系企業の割合は米国で47%となり、前年の66%から19ポイント低下した。米国で黒字見込みが5割を割ったのは、リーマンショック直後の2009年(36%)以来となる。カナダでも黒字見込みは54%と低調で、前年の77%から23ポイント低下した。カナダで黒字見込みが6割を割ったのは、2009年(52%)以来となる【「2020年度 海外進出日系企業実態調査(北米編)」(調査結果)15ページ(米国)、61ページ(カナダ)】。
  • 営業利益が前年比で悪化する企業は米国で59%となり、前年の36%から23ポイント上昇した。特に旅行・娯楽業(94%)や自動車等(88%)で悪化の割合が突出して高かった。カナダで営業利益が悪化する企業は54%となり、前年の34%から20ポイント上昇した。営業利益の前年比増減幅をみると、米国、カナダとも「1~5割減」が約3割を占めた。景況感を示すDI値(注)は米国は△42、カナダは△40となり、両国とも過去最低値を更新した【17~19ページ(米国)、63~64ページ(カナダ)】。
  • 一方で、米国、カナダともに食料品や情報通信業などでは前年比で悪化の割合が3割前後にとどまり、改善が2~4割に達するなど、業種により明暗が分かれた【19ページ(米国)、64ページ(カナダ)】。

図1.在米国・カナダ日系企業の黒字比率と景況感DIの推移

黒字比率と景況感DIの2007年以降の推移を米国、カナダそれぞれで示した図。米国の黒字比率は、2007年から2020年まで順に78.3%、61.7%、35.5%、70.2%、67.5%、73.3%、79.7%、82.3%、81.4%、77.5%、74.4%、74.5%、66.1%、47.1%。米国の景況感DIは、2007年から2020年まで順に23.9、マイナス16.6、マイナス41.8、55.7、6.6、29.9、31.7、33.4、27.3、17.5、7.9、17.2、マイナス4.6、マイナス42.0で、2021年の見通しは48.2。カナダの黒字比率は、2007年から2020年まで順に75.8%、67.0%、51.5%、65.2%、64.2%、75.9%、75.4%、74.4%、76.0%、72.3%、75.3%、74.8%、77.1%、53.8%。カナダの景況感DIは、2007年から2020年まで順に8.6、マイナス5.1、マイナス35.8、30.5、マイナス3.1、17.8、14.3、21.8、21.5、16.3、25.0、16.8、マイナス2.1、マイナス39.7で、2021年の見通しは32.2。

2.今後の事業展開

  • 今後1~2年で事業の「拡大」を検討する企業は米国で39%、カナダでは30%にとどまり、両国とも過去最低水準だった。そんな中でも、米国では食料品(68%)や化学・医薬(54%)で「拡大」を検討する企業は5割を超えた【27ページ(米国)、72ページ(カナダ)】。

    図2.今後1~2年で事業の「拡大」を検討する企業の割合

    今後1~2年で事業の「拡大」を検討する企業の割合の2012年以降の推移を米国、カナダそれぞれで示した図。米国は2012年から2020年まで順に39.0 %、37.2 %、37.0 %、39.2 %、42.1 %、39.3 %、41.3 %、46.0 %、51.9%。カナダは2012年から2020年まで順に37.4%、38.9%、46.3%、41.5%、40.8%、50.3%、46.2%、35.6%、29.9%。
  • サプライチェーン(調達先、生産地、販売先)の見直しを予定している企業は、米国、カナダとも1割前後にとどまった。調達先を見直す理由として、「通商環境の変化」を挙げた企業が過半数を占め、在米日系企業では、調達先を中国から米国やASEAN諸国に変更するとの回答が多くみられた。生産地の見直しについては、米国からメキシコ、日本などに変更するとの声が目立ち、理由としては米国でのコスト高や人材確保難などが挙がった【29~36ページ(米国)、73~75ページ(カナダ)】。

3.感染拡大の影響とビジネス見直しの状況

  • 新型コロナ感染拡大が営業利益に与えたマイナスの影響として、「現地市場の売上減少」を挙げた企業が米国で9割、カナダでは7割に達した【43ページ(米国)、79ページ(カナダ)】。
  • ビジネス正常化の時期は、2021年の前半、後半の見込みが両国ともそれぞれ3割前後を占めた。ビジネス活動正常化後の需要環境について、「新型コロナ前に戻る」とみる企業は両国とも5割を切り、「やや減少」が全体の3分の1を占めた。一方で、需要増を見込む企業は両国とも約1割で、中でも米国の精密・医療機器(36%)やゴム・窯業・土石(24%)で高かった【43ページ(米国)、79ページ(カナダ)】。
  • 新型コロナを受けた事業戦略やビジネスモデルの見直し内容として、在宅勤務やテレワークの活用拡大が両国で8割前後を占め、バーチャル展示会・オンライン商談会の活用が4~5割、人員削減による合理化が4割弱と続いた【44ページ(米国)、80ページ(カナダ)】。

図3.新型コロナ感染拡大が営業利益に与えたマイナスの影響(複数回答)

新型コロナウイルス感染拡大が営業利益に与えたマイナスの影響(複数回答)を米国、カナダそれぞれで上位項目のみ示した図。1企業につき最大3つまで回答可。米国は総回答数496社で「現地市場での売上減少」が90.1%、「工場などの操業停止や販売店などの閉鎖」が25.2%、「国内での移動制限」が24.4%、「渡航制限・入国制限」が18.8%、「輸出低迷による売上減少」が17.1%、「人件費の上昇」が11.5%。カナダは総回答数72社で「現地市場での売上減少」が72.2%、「工場などの操業停止や販売店などの閉鎖」が20.8%、「国内での移動制限」が23.6%、「渡航制限・入国制限」が30.6%、「輸出低迷による売上減少」が33.3%、「人件費の上昇」が4.2%。

4.経営上の課題

  • 経営上の課題として、販売・営業面の課題が上位に挙がり、「新規顧客の開拓」「取引先からの発注量の減少」が米国、カナダとも4割強を占めた。新型コロナによる出張・外出・面談などの制限や操業制限が響いたとみられる。また、米国では「従業員の賃金上昇」や「従業員の質」といった雇用・労務面での課題が4割弱で続いた【45ページ(米国)、81ページ(カナダ)】。
  • 経営上の課題への対応策としては、米国では高付加価値品の開発など「競合製品との差別化」、ECビジネス拡大など「販売方法の見直し・強化」が4割強となった。カナダでは「販売方法の見直し・強化」「社内コミュニケーションの活発化」が上位に挙がった【46ページ(米国)、82ページ(カナダ)】。
  • 新型コロナを受けてトランプ政権は一部のビザの発給を制限しており、ビザ発給停止・遅延・却下により「多少の影響」を受ける在米日系企業は35%、「深刻な影響」を受ける企業は約1割となっている。影響を受けている企業の割合は、前年度調査(35.1%)や2020年6月に実施した新型コロナ対策に関わる緊急・クイックアンケート調査(35.1%)から10.2ポイント増加している。具体的な影響として、「人事異動・配置転換を進められない」企業が6割超に上り、対応に苦慮する様子が浮かび上がった。影響を受けているビザの種類として、L-1(企業内転勤者用)ビザが約6割、E-2(投資駐在員用)ビザが約3割を占めた【47ページ】。

図4.経営上の課題(複数回答)

経営上の課題(複数回答)を上位項目のみ米国、カナダでそれぞれ示した図。米国は総回答数927社で「新規顧客の開拓」が46%、「取引先からの発注量の減少」が41.7%、「従業員の賃金上昇」が38.6%、「従業員の質」が38.1%、「主要販売市場の低迷(消費低迷)」が37.2%、「従業員(一般社員)の確保」が30.9%、「従業員(技術者)の確保」が25.9%、「駐在員や外国人労働者のビザ取得」が24.8%、「調達コストの上昇」が24.1%、「従業員の定着率」が23.9%、「物流コストの上昇」が23.1%、「主要取引先からの値下げ要請」が22.8%、「社会保障負担の高さ」が21.7%、「政治・社会情勢」が20.7%、「環境規制」が16%、「不安定な為替変動」が7.4%。カナダは総回答数143社で「新規顧客の開拓」が41.3%、「取引先からの発注量の減少」が44.1%、「従業員の賃金上昇」が25.2%、「従業員の質」が29.4%、「主要販売市場の低迷(消費低迷)」が36.4%、「従業員(一般社員)の確保」が17.5%、「従業員(技術者)の確保」が21.7%、「駐在員や外国人労働者のビザ取得」が14%、「調達コストの上昇」が21%、「従業員の定着率」が18.2%、「物流コストの上昇」が17.5%、「主要取引先からの値下げ要請」が16.1%、「社会保障負担の高さ」が6.3%、「政治・社会情勢」が8.4%、「環境規制」が19.6%、「不安定な為替変動」が25.2%。

図5.経営上の課題への対応策(複数回答)

経営上の課題への対応策(複数回答)を上位項目のみ米国、カナダでそれぞれ示した図。米国は総回答数631社で「競合製品との差別化」が42.3%、「販売方法の見直し・強化」が41.8%、「社内コミュニケーションの活発化」が35.5%、「人件費以外の経費削減」が35.1%、「新製品の開発」が34.8%、「リモートワーク・WEB 会議の導入」が33.7%、「各種規制への対応」が28.4%、「労働環境の改善(福利厚生の充実など)」が27%、「賃金の引き上げ」が25.6%、「製品(サービス)価格の見直し」が25.2%、「原材料調達先・調達内容の見直し」が24.6%、「自動化・省力化の推進」が22.2%、「医療保険契約の見直し」が20.8%、「カスタマーサービスの強化」が20.7%、「生産・供給体制の見直し」が19.3%、「セキュリティの強化」が18.8%、「配送契約・配送方法の見直し」が17%、「広告やSNS の活用」が16.4%、「人材の現地化推進」が16%。カナダは総回答数136社で「競合製品との差別化」が28.7%、「販売方法の見直し・強化」が45.6%、「社内コミュニケーションの活発化」が33.8%、「人件費以外の経費削減」が27.2%、「新製品の開発」が30.1%、「リモートワーク・WEB 会議の導入」が30.9%、「各種規制への対応」が28.7%、「労働環境の改善(福利厚生の充実など)」が25%、「賃金の引き上げ」が16.9%、「製品(サービス)価格の見直し」が27.2%、「原材料調達先・調達内容の見直し」が12.5%、「自動化・省力化の推進」が16.9%、「医療保険契約の見直し」が5.1%、「カスタマーサービスの強化」が25%、「生産・供給体制の見直し」が10.3%、「セキュリティの強化」が10.3%、「配送契約・配送方法の見直し」が19.9%、「広告やSNS の活用」が14%、「人材の現地化推進」が14%。

図6.米国ビザの発給停止・遅延・却下の影響

米国ビザの発給停止・遅延・却下の影響を2019年11月、2020年6月、2020年9月時点でそれぞれ示した図。2019年11月は総回答数650社で、「深刻な影響を受けている(ビザ取得は非常に難しくなっている)」が9.1%、「多少影響を受けている(ビザ取得はやや難しくなっている)」が26%、「影響はない(変化はない)」が64.8%、「分からない、その他」が0.2%。2020年6月は総回答数958社で、「深刻な影響を受けている(ビザ取得は非常に難しくなっている)」が13%、「多少影響を受けている(ビザ取得はやや難しくなっている)」が22.1%、「影響はない(変化はない)」が51.1%、「分からない、その他」が13.7%。2020年9月は総回答数955社で、「深刻な影響を受けている(ビザ取得は非常に難しくなっている)」が10.6%、「多少影響を受けている(ビザ取得はやや難しくなっている)」が34.7%、「影響はない(変化はない)」が48.9%、「分からない、その他」が5.9%。

5.通商環境の変化が業績に与える影響

  • 通商環境の変化が2020年の業績に与える影響について、米国では「影響はない」は38%だった。「全体としてマイナス」が36%となり、「マイナスとプラスの影響が同程度」(6%)を合わせると42%がマイナスの影響を受けている。カナダでは「影響はない」が50%、「わからない」が23%で、「全体としてマイナス」は20%にとどまった【50ページ(米国)、83ページ(カナダ)】。
  • マイナスの影響を受ける具体政策を聞くと、米国では「通商法301条に基づく追加関税」が57%、カナダでは「米国の鉄鋼・アルミニウムを対象とした追加関税」が33%を占めた【51ページ(米国)、84ページ(カナダ)】。
  • 通商環境の変化への対応策としては、米国、カナダともに「情報収集体制の強化」と「生産性向上・効率化によるコスト吸収努力」が上位に挙がった【52ページ(米国)、85ページ(カナダ)】。

図7.通商環境の変化が2020年の業績に与える影響

通商環境の変化が2020年の業績に与える影響を米国、カナダでそれぞれ示した図。米国は総回答数898社で、「全体としてマイナスの影響がある」が36.3%、「マイナスとプラスの影響が同程度」が5.7%、「全体としてプラスの影響がある」が3.8%、「影響はない」が37.8%、「わからない」が15.9%、「その他」が0.6%。カナダは総回答数137社で、「全体としてマイナスの影響がある」が20.4%、「マイナスとプラスの影響が同程度」が4.4%、「全体としてプラスの影響がある」が2.2%、「影響はない」が49.6%、「わからない」が23.4%、「その他」が0%。

図8.マイナスの影響が及ぶ具体的な政策(複数回答)

通商環境の変化について、マイナスの影響が及ぶ具体的な政策(複数回答)を米国、カナダでそれぞれ示した図。米国は総回答数316社で、「米国の通商法301条に基づく追加関税」が57.3%、「中国の米国に対する報復関税(通商法301条に対する対抗措置)」が28.5%、「米国の鉄鋼・アルミニウムを対象とした追加関税賦課(通商拡大法232条)」が24.4%、「米国の輸出管理・投資規制強化」が11.4%。「米国の鉄鋼・アルミニウムを対象とした追加関税に対する各国・地域の報復関税」が3.5%、「その他」が2.8%、「わからない」が7.9%。カナダは総回答数27社で、「米国の通商法301条に基づく追加関税」が22.2%、「中国の米国に対する報復関税(通商法301条に対する対抗措置)」が7.4%、「米国の鉄鋼・アルミニウムを対象とした追加関税賦課(通商拡大法232条)」が33.3%、「米国の輸出管理・投資規制強化」が14.8%。「米国の鉄鋼・アルミニウムを対象とした追加関税に対する各国・地域の報復関税」が14.8%、「その他」が18.5%、「わからない」が22.2%

(注) Diffusion Indexの略で、営業利益が「改善」する企業の割合(%)から「悪化」する割合を差し引いた数値

配布資料:「2020年度 海外進出日系企業実態調査(北米編)」(調査結果) PDFファイル(5.6MB)

本調査について

  • ジェトロは2020年9月、米国・カナダの日系企業(日本側出資比率が10%以上の現地法人)1,757社(米国1,580社、カナダ177社)を対象に、オンライン配布・回収によるアンケートを実施。1,108社(米国961社、カナダ147社)より有効回答を得ました(有効回答率63.1%)。
  • 本調査は、原則年1回、ビジネスの最前線にいる進出日系企業の活動実態を把握するために実施しているもので、米国は第39回、カナダは第31回調査になります。また、本年度より米国で非製造業を調査対象に加えました。
  • 設問項目:
    1. 営業利益見通し
    2. 今後の事業展開
    3. 新型コロナウイルス感染拡大による影響
    4. 経営上の課題
    5. 通商環境の変化
    6. 原材料の調達先、製品の生産体制および販売先
    7. FTA/EPAの活用・影響

※営業利益見通しやビジネス正常化時期については、概要を12月4日の「2020年度海外進出日系企業実態調査-全世界編-」にて公表いたしました。詳細は以下をご覧ください。今回は北米地域の詳細結果を発表します。

「ジェトロ 2020年度 海外進出日系企業実態調査 ―全世界編―」 ―新型コロナで過去最悪の景況感。その中で新たな経営・販売戦略を構築する日本企業― (2020年 - 記者発表 - ジェトロ)

お問い合わせ先

ジェトロ米州課 (担当:藤井、中溝、大塚)
Tel:03-3582-5545

中南米:現調化で変化に対応するメキシコ、デジタル化で早期回復見込むブラジル

調査の結果概要

1.営業利益見込み(中南米全体)

  • 2020年の営業利益見込みは、新型コロナの影響で前年比で悪化するとの回答が中南米全体では過半数を超えた。とりわけ、2019年は好況だったコロンビアとペルーの悪化幅は大きかった。
  • チリは悪化幅が小さかったが、主な理由は人件費や管理費支出が削減されたという消極的なもの。
  • メキシコとブラジルでは、前年に比べ改善するとの回答も2割弱あった。メキシコでは、自動車関連の製造業で「新規プロジェクトの立ち上げ」や「新規顧客の開拓」により輸出と現地販売が増加することがその理由として挙げられた。ブラジルでは、コロナ禍での制限措置が比較的緩やかで「多くの経済活動が継続されていたこと」や、一部企業で「新型コロナによるデジタル化需要の増加で現地販売が増加していること」がその理由として挙げられる。
  • 2021年の営業利益は、一部例外を除くほとんどの国で多くの企業が大幅な改善を見込んでいる。DI値(改善から悪化を引いた割合)が特に高かったのはコロンビア、ブラジル、メキシコ。コロンビアは2020年が大幅減であることからの反動増。ブラジルは政府の大規模な財政支出などによる需要の早期回復、メキシコは対米輸出の復活をそれぞれ見込んだ結果だとみられる。

前年と比べた2020年の営業利益見込み

2019年と比べた中南米全体、中南米の国ごとの各社の2020年の営業利益見込みを「改善」「横ばい」「悪化」で示した図。中南米全体では総回答数529社で、「改善」は18.7%、「横ばい」は27.8%、「悪化」は53.5%。メキシコは総回答数261社で、「改善」19.5%、「横ばい」は23.0%、「悪化」は57.5%。ベネズエラは総回答数13社で、「改善」は0%、「横ばい」は46.2%、「悪化」は53.8%。コロンビアは総回答数26社で、「改善」は3.8%、「横ばい」は38.5%、「悪化」は57.7%。ペルーは総回答数33社で、「改善」は6.1%、「横ばい」は36.4%、「悪化」は57.6%。チリは総回答数37社で、「改善」は32.4%、「横ばい」は24.3%、「悪化」は43.2%。ブラジルは総回答数120社で、「改善」は19.2%、「横ばい」は31.7%、「悪化」は49.2%。

国別DI値(2021年)

中南米全体、中南米の国ごとのDI値を示した図。中南米全体は44.1%、メキシコは49.6%、ベネズエラは-30.8%、コロンビアは53.8%、ペルーは39.4%、チリは21.6%、ブラジルは50.4%、アルゼンチンは30.8%。

2.調達先の見直し(中南米全体)

  • 今後の展開として、中南米全体では14%が調達先を見直すと回答した。中でも、メキシコでは42社(同国有効回答の16%)、ブラジルでは21社(同19%)が見直すと回答した。
  • メキシコでは、見直す主な理由は「通商環境の変化(追加関税やUSMCA)」と「コストダウン」。これに対応するため、回答企業の多くは「日本および米国からの調達を減らし、メキシコでの調達を増やす」と回答した。
  • ブラジルでは、見直す主な理由は「為替」の影響だった。新型コロナの影響で現地通貨が大きく下落し、輸入コストが上昇したためだ。そのため、回答した企業の多くは「現地調達比率を上げて」コストダウンを目指す。

3.新型コロナウイルスの影響(中南米全体)

  • 中南米全体で約半数の企業が、新型コロナでマイナスの影響を受けると回答した。具体的な影響として多く挙げられたものは「現地市場での販売減少」と「輸出の減少」。ブラジルでは、これに「為替の変動」が加わった。輸入販売を主業務とする企業が多く、新型コロナに端を発した現地通貨の下落進行で輸入コストが上昇したためだ。
  • 新型コロナ危機を経ていつ頃ビジネス環境が正常化するかとの問いについては、メキシコ、ブラジル、アルゼンチンでは2021年前半、コロンビア、ペルー、チリでは2021年後半との回答が最多だった。

新型コロナウイルス感染拡大後ビジネス活動が正常化する時期

中南米各国の新型コロナウイルス感染拡大後ビジネス活動が正常化する時期を「すでに正常化している」「2020年内」「2021年前半」「2021年後半」「2022年以降」「ビジネス活動が正常化する見通しは立たない」で示した図。メキシコは総回答数259社で、「すでに正常化している」が9.3%、「2020年内」が13.1%、「2021年前半」が36.7%、「2021年後半」が24.3%、「2022年以降」が13.9%、「ビジネス活動が正常化する見通しは立たない」が2.7%。ベネズエラは総回答数13社で、「すでに正常化している」「2020年内」はともに0%、「2021年前半」が38.5%、「2021年後半」が7.7%、「2022年以降」が15.4%、「ビジネス活動が正常化する見通しは立たない」が38.5%。コロンビアは総回答数26社で、「すでに正常化している」が7.7%、「2020年内」が15.4%、「2021年前半」が23.1%、「2021年後半」が34.6%、「2022年以降」が15.4%、「ビジネス活動が正常化する見通しは立たない」が3.8%。ペルーは総回答数33社で、「すでに正常化している」が3.0%、「2020年内」が15.2%、「2021年前半」が27.3%、「2021年後半」が39.4%、「2022年以降」が12.1%、「ビジネス活動が正常化する見通しは立たない」が3.0%。チリは総回答数37社で、「すでに正常化している」が2.7%、「2020年内」が2.7%、「2021年前半」37.8%、「2021年後半」が43.2%、「2022年以降」が10.8%、「ビジネス活動が正常化する見通しは立たない」が2.7%。ブラジルは総回答数119社で、「すでに正常化している」が10.1%、「2020年内」が7.8%、「2021年前半」が38.7%、「2021年後半」が25.2%、「2022年以降」が16.0%、「ビジネス活動が正常化する見通しは立たない」が2.5%。アルゼンチンは総回答数39社で、「すでに正常化している」が5.1%、「2020年内」が5.1%、「2021年前半」が38.5%、「2021年後半」が33.3%、「2022年以降」が15.4%、「ビジネス活動が正常化する見通しは立たない」が2.6%。
  • 新型コロナの影響で販売戦略を見直すと回答した企業は、中南米全体で226社(43%)あった。具体的な見直し内容では、メキシコとベネズエラを除いて、いずれの国でも「バーチャル展示会・オンライン商談会の推進」との回答が最多で、50%前後を占めた。
  • ブラジルも「バーチャル展示会・オンライン商談会」が最多で49%、「デジタルマーケティングやAI利用」が45%でそれに続いた。「販売先の見直し」は33%だった。一方、メキシコはその逆で、「販売先の見直し」が54%と最多だった。「バーチャル・オンライン商談会」は37%、「デジタルマーケティングやAI利用」も33%と他国より低かった。メキシコの回答企業の半数以上は製造業で、その大半は自動車産業に関連した業種。自動車部品のバーチャル商談やデジタルマーケティングは決して容易でないことがこの背景にある。

4.主要国別のポイント

1.メキシコ:
  • 調達先と生産地を今後見直すか否かについて、「調達先を見直す」との回答が42社(回答の16%)、「生産地を見直す」との回答が15社(同6%)からあった。いずれのケースも、日本、米国からメキシコに変更・移管するとの回答が最多だった。見直す主な理由は、いずれも「通商環境の変化(追加関税リスクやUSMCA)」と「コストダウン」。なお、中国から移管するとの回答は調達先、生産地ともに1社だった。前年調査では、調達先では8社と日本に次いで2番目、生産地では6社と最多だったため、この1年で中国からメキシコへの移管は一定程度実行された可能性がある【「2020年度 海外進出日系企業実態調査(中南米編)」(調査結果)38~39ページ】。
  • 部品・原材料の現地調達率は、前々回調査の22%、前回調査の25%から、今回調査では31%に上昇した。その分、日本からの調達割合が減少した。米国からの調達割合は前回とほぼ同じだが、前々回調査と比較すると減少している。中国からの調達割合も2年連続で減少した。日・米・中国からメキシコ現地調達への変更が、漸進的ではあるが着実に進んでいる。
  • 現地調達の内訳をみると、現地の日系企業からの調達割合は46%、地場企業からのそれは42%で、この比率は前回調査と同じだった。現地調達率が上昇した中で、日系と地場の比率に変化がなかったことから、進出日系企業による地場企業の開拓も一定程度進展していることが今回の調査で明らかになった【71~72ページ】。

原材料・部品の調達先の内訳(メキシコ/製造業)

メキシコの製造業における、2018年から2020年までの原材料・部品の調達先の内訳を「現地」「日本」「米国」「中国」「その他」で年ごとに記した図。2018年は総回答数46社で、「現地」が21.6%、「日本」が34.2%、「米国」が20.7%、「中国」が12.8%、「その他」が10.7%。2019年は総回答数147社で、「現地」が24.5%、「日本」が36.1%、「米国」が16.7%、「中国」が9.9%、「その他」が12.8%。2020年は総回答数136社で、「現地」が30.8%、「日本」が31.7%、「米国」が17.7%、「中国」が8.6%、「その他」が11.2%。この数値は各社が回答した調達割合の平均値である。

現地調達先内訳(メキシコ/製造業)

メキシコの製造業における、2018年から2020年までの原材料・部品の調達先の内訳を「現地進出日系企業」「地場企業」「その他外資系企業」で年ごとに記した図。2018年は総回答数35社で、「現地進出日系企業」が41.1%、「地場企業」が45.7%、「その他外資系企業」が12.9%。2019年は総回答数97社で、「現地進出日系企業」が46.2%、「地場企業」が41.7%、「その他外資系企業」が12.1%。2020年は総回答数102社で、「現地進出日系企業」が46.0%、「地場企業」が41.5%、「その他外資系企業」が12.5%。この数値は各社が回答した調達割合の平均値である。
  • USMCAの影響に関しては、メキシコの回答社(全業種254社)の5割が「影響なし」、3割が「不明」と回答した【中南米調査結果81ページ】。自動車・同部品分野に限定して、米墨加3ヵ国での回答結果を比較したところ、3ヵ国ともに4~5割弱が「影響なし」との回答だった。「マイナスの影響あり」との回答は米墨はともに1割強、カナダはゼロだった【北米調査結果55、87ページ】。一方、完成車メーカーに限定すると、米国で75%が「マイナス」、25%が「不明」。メキシコで50%が「マイナス」、25%が「プラスとマイナス同程度」、25%が「不明」との回答だった。完成車メーカーと部品メーカーの捉え方が異なるが、この理由として、部品メーカーの対応は完成車メーカーの方針に強く依存すること、完成車の規則には2025年まで経過措置が設けられていること、新型コロナへの対応がより緊急性の高い課題であったことなどが挙げられる。なお、メキシコでプラスと回答した企業のコメントは「顧客の現調化推進や域外からの生産移管に伴い受注が増加する」、マイナスと回答した企業のコメントは「原産地規則達成に伴うコストの上昇」と「規則未達による関税の発生」に集約できる。

USMCA発効による影響の度合い(自動車・同部品)

米国、メキシコ、カナダにおけるUSMCA発効による自動車・同部品への影響の度合いを「マイナスの影響」「プラスとマイナスの影響が同程度」「プラスの影響」「影響はない」「影響の度合いはわからない」「その他」で示した図。米国は総回答数120社で、「マイナスの影響」が13.3%、「プラスとマイナスの影響が同程度」が1.7%、「プラスの影響」が5.8%、「影響はない」が43.3%、「影響の度合いはわからない」が35.0%、「その他」が0.8%。メキシコは総回答数70社で、「マイナスの影響」が14.3%、「プラスとマイナスの影響が同程度」が7.1%、「プラスの影響」が1.4%、「影響はない」が47.1%、「影響の度合いはわからない」が28.6%、「その他」が1.4%。カナダは総回答数16社で、「マイナスの影響」は0%、プラスとマイナスの影響が同程度」が0%、「プラスの影響」が6.3%、「影響はない」が43.8%、「影響の度合いはわからない」が50.0%、「その他」が0%。
2.ブラジル:
  • 新型コロナの影響について、ブラジルで「2021年前半にビジネス活動正常化を見込む」と回答した企業の割合は39%(46社)と調査対象国の中で最も多い。また、正常化後の需要見込みについても、「新型コロナ拡大前に比べ増加する」との回答割合(16%)が他国に比べて高い【46~47ページ】。早期正常化と需要増加を見込む要因の一つは、バーチャルとデジタル化への迅速な対応だ。新型コロナにより「販売戦略を見直す」と回答した企業は69社。そのうち、34社(50%)が「バーチャル展示会、オンライン商談会の活用」、31社(45%)が「デジタル化の推進」と回答した。対応時期については、双方とも6割以上が「感染拡大後に着手」と回答している。この点、自動車産業関連の製造業が多くバーチャル対応が容易でないメキシコ進出日系企業との違いが明確に表れている【49~51ページ】。
  • また、ブラジルでは新型コロナによる前向きな見直しが、「管理・経営体制」の面でも見られた。「新型コロナの影響による管理・経営体制の見直し」について、90%(63社)が「在宅勤務やテレワークの活用を拡大する」と回答した。ブラジルで新型コロナが拡大し始めた3月、統一労働法の一部が柔軟化され、それまでテレワークの実施には契約書の締結が必要だったものが、文書やメールによる通知でも可能となった。これによりテレワークの普及が大きく進んだとみられる【58ページ】。
  • EPA/FTAの利活用に関する設問で、輸入面の問題点として多く挙げられたのは「主要な輸入元との間にFTAが存在しない」だった(50%)。日本とは現時点で協定が無いが、もしあれば「利用したい」と回答した企業割合が輸出入共に3割程度いる【77ページ】。

販売戦略の見直し(ブラジル)

ブラジルにおける新型コロナウイルス感染拡大に伴う販売戦略の見直しについて、見直し項目ごとに「感染拡大前から着手」「感染拡大後着手」「今年中に着手予定」「来年以降着手予定」の4つに分けて記した図。見直し項目は「バーチャル展示会、オンライン商談会などの活用の推進」「デジタルマーケティング、AI利用などデジタル化の推進」「販売先の見直し」「販売製品の見直し」「自社製品のEC販売の開始」「販売価格の引き上げ」「販売価格の引き下げ」の7つ。一番回答数が多かったのは、「バーチャル展示会、オンライン商談会などの活用の推進」で、「感染各拡大前から着手」が4社、「感染拡大後着手」が25社、「今年中に着手予定」が4社、来年以降着手予定」が1社で合計33社の回答があった。二番目は「デジタルマーケティング、AI利用などデジタル化の推進」で、「感染拡大前から着手」が11社、「感染拡大後着手」が14社、「今年中に着手予定」が6社、「来年以降着手予定」が0社で合計31社。以下、「販売先の見直し」の「感染拡大前から着手」が7社、「感染拡大後着手」が7社、「今年中に着手世手」が6社、「来年以降着手予定」が3社で合計23社、「販売価格の引き上げ」の「感染拡大前から着手」が4社、「感染拡大後着手」が12社、「今年中に着手予定」が3社、「来年以降着手予定」が2社で合計21社、「販売製品の見直し」の「感染拡大前から着手」が6社、「感染拡大後着手」が7社、「今年中に着手予定」が3社、「来年以降着手予定」が1社で合計17社、「自社製品のEC販売の開始」の「感染拡大前から着手」が3社、「感染拡大後着手」が2社、「今年中に着手予定」が2社、「来年以降着手予定」が1社で合計8社、「販売価格の引き下げ」が「感染拡大前から着手」が1社、「感染拡大後着手」が1社、「今年中に着手予定」が0社、「来年以降着手予定」が1社で合計3社。

販売戦略の見直し(メキシコ)

メキシコにおける新型コロナウイルス感染拡大に伴う販売戦略の見直しについて、見直し項目ごとに「感染拡大前から着手」「感染拡大後着手」「今年中に着手予定」「来年以降着手予定」の4つに分けて記した図。見直し項目は「バーチャル展示会、オンライン商談会などの活用の推進」「デジタルマーケティング、AI利用などデジタル化の推進」「販売先の見直し」「販売製品の見直し」「自社製品のEC販売の開始」「販売価格の引き上げ」「販売価格の引き下げ」の7つ。一番回答数が多かったのは、「販売先の見直し」で、「感染拡大前から着手」が16社、「感染拡大後着手」が6社、「今年中に着手予定」が21社、「来年以降着手予定」5社で合計48社の回答があった。二番目は「販売製品の見直し」で、「感染拡大前から着手」が9社、「感染拡大後着手」が7社、「今年中に着手予定」が10社、来年以降着手予定」が8社で合計34社。以下、「バーチャル展示会、オンライン商談会などの活用の推進」の「感染拡大前から着手」が0社、「感染拡大後着手」が23社、「今年中に着手予定」が9社、「来年以降着手予定」が1社で合計33社、「デジタルマーケティング、AI利用などデジタル化の推進」の「感染拡大前から着手」が12社、「感染拡大後着手」が8社、「今年中に着手予定」が8社、「来年以降着手予定」が1社で合計29社、「自社製品のEC販売の開始」の「感染拡大前から着手」が4社、「感染拡大後着手」が4社、「今年中に着手予定」が6社、「来年以降着手予定」が4社で合計18社、「販売価格の引き上げ」の「感染拡大前から着手」が5社、「感染拡大後着手」が5社、「今年中に着手予定」が4社、「来年以降着手予定」が4社で、合計18社、「販売価格の引き下げ」の「感染拡大前から着手」が3社、「感染拡大後着手」が5社、「今年中に着手予定」が2社、「来年以降着手予定」が2社で合計12社。
3.チリ:
  • 2019年から引き続く反政府デモの影響で、「投資環境面のデメリット」として「不安定な政治・社会情勢」を挙げる日系企業は前回調査時から大幅に増加(42%→81%)。「不安定な政治・社会情勢」をデメリットとして選択した割合は社会的・経済的混乱が続くベネズエラやアルゼンチンに次いで高く、中南米の中で非常に高い数字となっている。
  • この背景には、デモで治安が悪化したというだけではなく、デモ発生理由に対する日系企業の不安がある。デモ隊の主張は「拡大した格差の是正」であった。政府が国民の不満解消のために、この30年間進めてきた新自由主義的な政策を転換させる可能性があるのかどうかが日系企業の一大関心事になっており、このことが今回調査の回答結果に反映されたと思われる。
  • 一方で、「安定した政治・社会情勢」を投資環境面の「メリット」として挙げた企業も46%存在。同割合は前年比で減少も、中南米の他国と比較すると依然として高い。短・中期的には不安定を見通すも、長期的には安定していると評価されていることが分かる【66ページ】。

投資環境面における政治・社会情勢の捉え方

投資環境面における政治・社会情勢の捉え方として、中南米全体と中南米各国の、「『不安定な政治・社会情勢』を投資環境面のデメリットとして考える企業の割合」と「『安定した政治・社会情勢』を投資環境面のメリットとして考える企業の割合」を示した図。中南米全体では、「『不安定な政治・社会情勢』を投資環境面のデメリットとして考える企業の割合」が72.8%、「『安定した政治・社会情勢』を投資環境面のメリットとして考える企業の割合」が14.5%。メキシコでは「『不安定な政治・社会情勢』を投資環境面のデメリットとして考える企業の割合」が68.8%、「『安定した政治・社会情勢』を投資環境面のメリットとして考える企業の割合」が12.1%。ベネズエラでは、「『不安定な政治・社会情勢』を投資環境面のデメリットとして考える企業の割合」が100%、「『安定した政治・社会情勢』を投資環境面のメリットとして考える企業の割合」が7.7%。コロンビアでは、「『不安定な政治・社会情勢』を投資環境面のデメリットとして考える企業の割合」が46.2%、「『安定した政治・社会情勢』を投資環境面のメリットとして考える企業の割合」が34.6%。ペルーでは「『不安定な政治・社会情勢』を投資環境面のデメリットとして考える企業の割合」が60.6%、「『安定した政治・社会情勢』を投資環境面のメリットとして考える企業の割合」が18.2%、チリでは「『不安定な政治・社会情勢』を投資環境面のデメリットとして考える企業の割合」が81.1%、「『安定した政治・社会情勢』を投資環境面のメリットとして考える企業の割合」が45.9%、ブラジルでは「『不安定な政治・社会情勢』を投資環境面のデメリットとして考える企業の割合」が77.6%、「『安定した政治・社会情勢』を投資環境面のメリットとして考える企業の割合」が7.8%、アルゼンチンでは、「『不安定な政治・社会情勢』を投資環境面のデメリットとして考える企業の割合」が97.4%、「『安定した政治・社会情勢』を投資環境面のメリットとして考える企業の割合」が5.3%。

本調査について

  • ジェトロは2020年9月1~30日、中南米に進出する日系企業(日本側出資比率10%以上の法人。駐在員事務所、連絡事務所、現地で日本人が起業した法人は対象外)796社を対象に、アンケート調査を実施。530社より有効回答を得ました(有効回答率66.6%)。
  • 設問項目:
    1. 営業利益見込み
    2. 今後1~2年の事業展開
    3. 新型コロナウイルス感染拡大の影響
    4. 投資環境面のメリットとリスク
    5. 競合状況、調達状況
    6. FTA/EPAの活用状況と問題点
    7. 通商環境の変化の影響

ジェトロ米州課 (担当:峯村、佐藤)
Tel:03-3582-4690