日英両政府、経済連携協定で大筋合意

(英国、日本)

ロンドン発

2020年09月14日

日本と英国の両政府は9月11日、交渉が続いていた日英包括的経済連携協定(EPA)に大筋合意した。6月9日に正式に始まった(2020年6月10日記事参照)交渉は、日EU・EPA(以下、日EU)を土台に、約3カ月で合意となった。英国のEU離脱後の移行期間を終える、2021年1月1日の発効を目指す。今回、大筋合意した概要は以下のとおり。

  • 工業製品では、日英ともに品目数、貿易額で100%の関税撤廃を実現。発効時から日EUと同じ削減率を適用し、撤廃期間も日EUに合わせる「キャッチアップ」を適用。例えば、英国に乗用車を輸出する場合、関税は日EUと同様に2026年2月に撤廃。日EUで関税を即時撤廃した品目は即時撤廃。
  • 対英輸出では、鉄道用車両・同部分品(日EU:13年目撤廃)、ターボジェット・同部品(4年目撤廃)、電気制御盤(6年目撤廃)で即時撤廃を確保。鉄道用車両・同部分品とターボジェット・同部品は、移行期間終了後適用の英国独自の関税率「UKグローバルタリフ」(2020年5月20日記事参照)でも0%だが、将来これを変更しても、EPAで無税を担保。UKグローバルタリフで2%となる電気制御盤は、日EUでは2年目が1.4%、3年目でも1.1%で、日英EPAでは関税の即時撤廃を実現。
  • 農林水産品も、おおむね日EUの合意内容を維持し、キャッチアップを適用。日本への輸入では、新たな英国枠は設けず、ソフト系チーズや一部の調製品に限り、日EUで設定された関税割当に未利用分が生じればその範囲内で、事後的に英国産品に対して日EUの関税割当と同じ税率を適用する仕組みを設ける。
  • 原産地規則は、EU原産材料・生産を日英EPA上の原産材料・生産とみなす。EU産原材料に多くを依存する英国事業者も、引き続き対日輸出でEPAの優遇税率の利用が可能に。
  • 電子商取引・金融サービスでは、情報の越境移転の制限、コンピュータ関連設備の設置要求、暗号情報の開示要求などを禁止。また、ソースコード開示要求の禁止対象にアルゴリズムを追加。英国政府発表によると、英財務省、金融当局と日本の金融庁との年次対話を設置。

英国のエリザベス・トラス国際通商相は「離脱後の最初の重要な通商協定で、英国と日本にとって歴史的瞬間。困難な環境下に記録的速度で交渉したこの合意は、英国の偉大な製造業、飲食品、テック産業の企業に新たな利益をもたらす」とした。「合意は、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)に加盟し、英国を友好・同盟国との現代的な自由貿易協定ネットワークの中心に据えるための重要な一歩」と続けた(2020年9月11日記事参照)。

英国政府は、日英EPAが両国間の貿易を長期的に152億ポンド(約2兆672億円、1ポンド=約136円)拡大し、毎年、英国経済にGDPの0.07%(15億ポンド)貢献すると試算。一方、英国経済に重要な対EU交渉が危うい中(2020年9月8日記事9月11日記事参照)、英国経済・産業界やメディアは大筋合意を評価しつつも、対EU交渉への懸念も示している(2020年9月14日記事参照)。

(宮崎拓)

(英国、日本)

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