ジョンソン英首相、EUとのFTAめぐり10月15日が交渉期限

(英国、EU)

ロンドン発

2020年09月08日

英国のボリス・ジョンソン首相は9月7日、難航する英国とEUの将来関係交渉について声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表。冒頭で8日からのロンドンでの交渉第8ラウンド開始を念頭に、「EUとの交渉は最終局面に入った」とコメント。「2020年末までに施行するならば、10月15日の欧州理事会までに欧州の友人との協定(の妥結)が必要」と交渉期限を示した。その上で「それまでに合意できなければ、両者間に自由貿易協定(FTA)は成立せず、われわれはこれを受け入れて前進すべきだ」と述べ、10月半ばで交渉を打ち切る考えを明らかにした。

両者はこれまでの交渉で、運輸やエネルギー、司法協力、英国のEUプログラムへの参加など、交渉開始に先立って分科会を設けた主題(2020年3月3日記事参照)の多くで進展を見せている(2020年7月27日記事8月24日記事参照)。しかし、漁業と政府補助金の2点でなお対立が続き、打開の糸口は見えていない。

ジョンソン首相は声明で、今回示した期限までに交渉が妥結しない場合、両者の通商関係は「オーストラリア型」、すなわち英・EU間にFTAのないWTOルールに基づく関係になるとコメント。それが最初から英国にとって「良い結果」になると述べてきたと言い切った。航空・陸上輸送や科学協力など実務的に重要な事案は合意が成立しない場合でも、現実的な対応をEUと協議する用意があるとも言及したが、その際はFTAは追求しないと強調。「独立国家の根源に関わるような妥協は決してしない」とEUをあらためて牽制した。

北アイルランドをめぐり緊張も

英国政府の立法手続きも英・EU間の緊張を高めている。「フィナンシャル・タイムズ」紙は6日、政府が9日に公表予定の「国内市場法案」とその後に公表する「財政法案」が、2020年1月に発効したEU離脱協定の北アイルランド議定書が定める同地域とグレートブリテン島間の通関手続きと政府補助金の取り決めに反する条項を含むと報道。これに対し、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は「国際法に基づく義務であり、あらゆる将来関係の前提となる離脱協定を英国政府が履行すると確信している」とツイート。アイルランドのサイモン・コーブニー外相兼国防相も「全く愚かな進め方だ」とツイートするなど、反発が広がっている。

英国政府は7日、EUの企業に2020年末までの移行期間終了後も英国と取引を続けるための準備を呼び掛けるキャンペーンも立ち上げた。英語のほかドイツ語やフランス語、スペイン語など複数言語で解説ページ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを設置。9月下旬から10月初旬には、港湾管理会社などと共同でEU加盟国の中小企業などを対象に、通関手続きの変更などを解説するオンライン説明会も開催する。

(宮崎拓)

(英国、EU)

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