企業支援措置を強化する総額1,100億ユーロの補正予算法案を閣議決定

(フランス)

パリ発

2020年04月17日

フランス政府は4月15日、総額1,100億ユーロ超の緊急経済支援を含む第2次補正予算法案を閣議決定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。3月23日に成立した第1次補正予算法外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの450億ユーロから大幅増となる。移動制限措置の5月11日までの延長(2020年4月15日記事参照)や新型コロナウイルス感染症の影響で深刻化する経済危機に対応する。補正予算の早期成立に向け4月17日から国民議会(下院)で審議を開始する。

同法案では企業支援措置(2020年3月19日記事参照、注1)についてまず、雇用維持を目的に国が企業に利用を奨励する一時帰休制度(注2)の予算を当初の約80億ユーロから240億ユーロに引き上げる。

連帯基金は10億ユーロから70億ユーロに増額する。同基金は、年間売上高100万ユーロ未満、年間課税対象利益6万ユーロ未満で、従業員数が10人以下の零細企業、自営業者、独立事業主、自由業に対し、条件を満たす場合に最大1,500ユーロ支援するもの。今回の法案では、4月分については2020年4月の売上高が2019年の月平均の売上高に比べて50%減少した企業も対象とする。また、共同経営農業集団(GAEC)に属する農家、困難な状況にある企業、再生手続き中の企業などにも適用対象を広げる。さらに、経営が最も困難な企業が1,500ユーロに加えて受給できる追加支援額の上限を2,000ユーロから5,000ユーロに増額する。

このほか、同法案には以下の中小企業支援措置などが盛り込まれた。

  • 社会経済開発基金(Fonds de dévéloppement économique et social)を7,500万ユーロから10億ユーロに引き上げ、資金調達が困難な中小・中堅企業に対する政府の直接貸し付けを増やす。
  • 政府保証がついた融資を得られず資金繰りに苦しむ中小企業(ホテル、レストランなど)に対し、事業再開支援として総額5億ユーロの償還可能前払金(avances remboursables)を供与する。
  • 中小・中堅企業向けの輸出支援措置については(2020年4月2日記事参照)、公的投資銀行BPIフランスの2年未満の短期輸出債権に関わる取引信用保険に対する再保険枠を20億ユーロから50億ユーロに引き上げる。

他方、弱体化した戦略的企業への支援を強化するため、国家出資庁(APE)の特別目的勘定を200億ユーロに増大し、国の支援が必要な戦略的企業に資本を提供できるようにする。ブルノ・ルメール経済・財務相は4月15日の閣議の報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)の中で、すでに資本状況が弱まった戦略的企業20社余りのリストを大統領と首相に提出済みだと明かした。ルメール氏は4月9日付「レゼコー」紙のインタビューで、エールフランスKLM航空に近く支援措置を実施する方針を明らかにしていた。

なお、政府は第2次補正予算法案の編成の前提となる、2020年の経済成長率見通しについては、移動制限措置の延長や世界を取り巻く不確実性などの要素を踏まえ、暫定的な数字としつつも、マイナス8%と3月の補正予算編成時のマイナス1%から大きく下方修正した。財政赤字はGDP比で9%と第1次補正予算法の3.9%から拡大する。公的債務もGDP比115%に達する見通し。

(注1)ジェトロは、経済・財務省および行動・公会計省のポータルサイトに掲載されている新型コロナウイルスCOVID-19による企業の事業活動企業支援措置に関する翻訳を、ウェブページに掲載している。

(注2)一時帰休(chomage partiel)制度:雇用主が従業員に支払う、一時帰休(部分的休業)中の給与の全てまたは一部を国が補填する制度。ジェトロは、同制度について詳述している、注1で紹介した翻訳、および労働省のサイトに掲載されている新型コロナウイルスの衛生緊急事態下における企業がとるべき人事・労務対策関連情報の翻訳を、ウェブページに掲載している。

(山崎あき)

(フランス)

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