英国、1月31日にEUから離脱、移行期間後の実務に備えを

(英国、EU)

ロンドン発

2020年01月31日

英国が1月31日午後11時(英国時間)、EUから離脱する。英国とEUは前日までに離脱協定の批准手続きを完了(2020年1月24日記事2020年1月31日記事参照)。英国のEU離脱(ブレグジット)を決定した2016年6月23日の国民投票から3年7カ月、英国が2017年3月29日にEUに対して正式に離脱を通告してから2年10カ月。EUとの厳しい交渉と英国内での激しい論争を経て、ついに離脱が実現する。

首相官邸によると、ボリス・ジョンソン首相は離脱当日の1月31日の朝、イングランド北部で臨時閣議を開催する。この地域では、2019年12月の総選挙(2019年12月13日記事参照)で与党・保守党が最大野党・労働党から多数の議席を奪取した。ブレグジット実現の節目に全閣僚をそこに集めることで、政権与党がこの地域を重視する姿勢を誇示する狙いがあるとみられる。同日午後10時には、ロンドンの首相官邸前で英国の4地域(イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド)の力と団結を示す記念照明を投影するほか、カウントダウンも行う予定。ジョンソン首相も同時刻に国民向けに演説を行う。

離脱直後の2月1日には、ブレグジット後の各国との貿易など経済関係深化のため、EU域外の13カ国17都市で「貿易しよう(Ready to Trade)」キャンペーンを開始する予定。翌週にはジョンソン首相をはじめ閣僚らが全国を巡り、国民や企業との対話を行う。

離脱後は、12月末まで英国とEUは離脱前の状態が維持される「移行期間」に入る。この間に英国とEUが自由貿易協定(FTA)を締結できないと、2021年1月1日から英EU間で関税などが発生し、「合意なき離脱(ノー・ディール)」に似た状態に陥る恐れがある(2019年12月13日記事参照)。ジョンソン首相は移行期間を延長しない方針で、先に成立したEU離脱協定法に延長を禁じる条項を追加(2019年12月23日記事参照)。通商交渉開始に先立ち、英国とEUは早くも互いを牽制しており(2020年1月9日記事参照)、移行期間中に交渉をまとめてFTAを批准できるか、予断を許さない状況が続く。

FTAが締結・批准されたとしても、移行期間終了後には英EU間の取引には輸出入申告などの手続きが発生する。加えて、FTAの特恵税率を使うには、原産性を証明する書類を準備しなければならない。離脱協定の成立によって確保された移行期間中は手続きなしで関税ゼロでの貿易が引き続き可能なのとは異なり、移行期間終了までにFTA交渉が妥結、発効したとしても、実務面での対応が必ず必要になる。

移行期間が終わると、膨大な数の企業が英EU間で通関手続きを始めることになる(2019年10月16日記事参照)。通関業務がしばらく滞る可能性もあるため、企業は通関手続きの準備に加え、遅延リスクなどにも対処が必要だ。日英間で取引があり、日EU経済連携協定(EPA)を利用している企業は、同EPAに代わる日英EPA交渉の行方も注視する必要がある。

(宮崎拓)

(英国、EU)

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