モノ、ヒトの分野で制度整備進み、両国間の交流を後押し

(ウズベキスタン、ロシア)

タシケント発

2019年10月09日

ユーラシア地域の情勢分析・調査などを行うロシアの専門家グループ「ユーラシア・アナリシス・クラブ(EAK)」のニキータ・メンドコビッチ代表は、ウズベキスタンとロシアの両国関係は労働移民問題をはじめ多分野で正常化・協力が進み、ウズベキスタンでのロシアの存在感は引き続き増すと予測する。在モスクワの中央アジア専門家へインタビューした(9月27日)。

(問)ウズベキスタンで進む改革の根底にある問題意識は。

(答)同国が抱える課題として、a.若年層の雇用創出、b.食糧供給の安定(食糧価格の上昇抑制)、c.社会資本整備などが挙げられる。これらの課題解決には、外国からの投資誘致とノウハウの導入が最良の手段で、同国が進める経済開放政策の原則となっている。

(問)ロシアとウズベキスタンの経済分野での協力の具体的事例について。

(答)2018年10月にタシケントで行われたミルジヨエフ大統領とプーチン大統領の個別会談以降、両国関係は新たな段階に入った。会談時に合意した内容で具体的な事例を複数挙げると、まずは農産物。ウズベキスタンの野菜・果実を、カザフスタンを経由してロシアに運ぶ「グリーンコリドー」が機能している(注)。これは、両国にとって大きな利益がある。次に自動車分野。製造と輸出の協力促進で一致した。3つ目は原子力発電所の建設(2019年5月21日記事参照)。4つ目は宇宙領域での活動(2019年9月17日記事参照)。5つ目は労働移民分野だ。2018年以降、ウズベキスタンからロシアへの出稼ぎ労働者の資格証の取得、ロシア語能力試験の受験、保険料の支払いなどがウズベキスタン国内で可能となり、労働許可取得・渡航手続きが透明化・簡素化された。2018年10月には共和国法「私的雇用代理業について」が採択され、ロシア向け労働移民のあっせん業者に関するルールが明確化された。不正・犯罪の温床となりかねない闇の部分にメスが入り、モノ・人の移動に好影響を与えている。

(問)「ロシアとの協力関係が進む」と考えるその理由について。

(答)ウズベキスタンの経済改革への民衆の支持は高く、積極的な改革が継続する。経済のデジタル化はロシアでも十分機能しており、ウズベキスタンも同じように導入が進むだろう。ウクライナが欧米路線を確立したため、中央アジアでウズベキスタンとの距離を一層縮めたいロシア側の意向も働いている。ウズベキスタンは、いまだに計画経済の色彩が強く、政府機構や社会制度はロシアと相似している(2019年8月27日記事参照)。言語もロシア語が通用するので、新しい経済的枠組みを導入するに当たり、ロシアのノウハウがウズベキスタン側にとっても効率的に導入できるというメリットがある(2019年8月5日記事参照)。

写真 ニキータ・メンドコビッチ氏。2006年からの政府機関勤務を経て、2015年末にEAKを立ち上げた(ジェトロ撮影)

ニキータ・メンドコビッチ氏。2006年からの政府機関勤務を経て、2015年末にEAKを立ち上げた(ジェトロ撮影)

(注)ウズベキスタン産野菜・果実のロシアでの検疫・通関手続きを簡略化させたもの。2019年3月には制度が拡大し、ロシア国内の11カ所の都市の税関で同制度の利用が可能となっている。

(高橋淳)

(ウズベキスタン、ロシア)

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