強力なトップダウンとデジタル社会、税務当局の意識を改革

(ウズベキスタン)

タシケント発

2019年08月27日

CIS地域で事業展開するに当たり、税務は適切に対応すべきポイントの1つだ。現地税務当局による企業会計への接し方は事業コストやビジネスの成否に跳ね返る。最近のウズベキスタンの企業会計や税務当局のビジネスへの姿勢の変化について、多くの外資系企業を顧客に持つ現地会計事務所「フィネックス(Finex)」代表のサルバル・ラフマトゥルラエフ氏に話を聞いた(8月22日)。

(問)過去2年間の政府の税制改革と企業会計に関する変化について。

(答)ホワイトに(会計上不適切な処理をしていないこと)ビジネスを行う企業が増えている。税制改革の根本は2018年6月29日に出された大統領令第5468号「税務政策の向上のためのコンセプトについて」。1月1日からの税制変更(2018年12月27日付地域・分析レポート参照)に伴い、付加価値税の支払いが適用される中小企業の数が増えた。付加価値税の計算にはある程度の専門知識が必要で、会計担当を置く中小企業や会計の外部委託が増加しており、会計の適正が徐々に担保されるようになっている。

課題もある。財務省は旧ソ連諸国のジョージアとロシアの税制を積極的に参考にしようとしている。ジョージアは大枠を設定し企業を自由に活動させる方式、ロシアは企業会計を細かく把握しようとする方式で、双方は対極にある。制度輸入に当たり、当地の特性に適応させるため地元の会計専門家の参加が不可欠だ。企業は新税制に慣れるまで時間がかかる。税制全体の骨格が固まり、円滑な運用に至るにはあと2、3年程度の時間が必要だろう。

(問)最近の税務当局・職員の企業への姿勢に対する評価は。

(答)税務当局の「サービスマインド」が定着してきた。理由として、a.デジタル化の進行、b.職員の能力向上に向けた(ミルジヨエフ)大統領のイニシアチブ、c.SNSの普及が挙げられる。

ウズベキスタンでも税務申告がオンライン化され、税務当局からの照会、通知、要求などの連絡はインターネット経由となった。税務署に通う必要はなくなり、税務当局窓口での交渉に伴うストレスは軽減された。大統領のイニシアチブも大きい。4月にはタシケント市の7人の首席地区税務検査官、シャイハンタフル地区税務職員133人全員が能力不足(ノルマ未達成)で解雇された。5月にはタシケント市の全税務職員(1,100名)対象に能力査定試験が実施され、22%の職員が能力不足でやはり解雇された。職員に求められる能力や取り巻く環境が大きく変化している(注)。SNSの普及で不正告発が容易になった。会計事務所間での情報交換も広がっている。税務当局自身が担当者間の情報交換や情報発信にSNSを利用するケースも増えている。

写真 ラフマトゥルラエフ氏。石油関連コンソーシアム、サマルカンド自動車工場、GMウズパワートレイン(米国・ウズべキスタン合弁)などで経理責任者としての勤務経験を持つ(ジェトロ撮影)

ラフマトゥルラエフ氏。石油関連コンソーシアム、サマルカンド自動車工場、GMウズパワートレイン(米国・ウズべキスタン合弁)などで経理責任者としての勤務経験を持つ(ジェトロ撮影)

(注)ラフマトゥルラエフ氏は徴税目標が税務職員に過度の圧力となる場合、当局の帳簿上のつじつま合わせに将来的に企業が巻き込まれる可能性も指摘している。

(高橋淳)

(ウズベキスタン)

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