中国政府が5G営業ライセンスを発給、計画前倒しで商用化を急ぐ

(中国)

中国北アジア課

2019年06月25日

中国の工業情報化部は6月6日、第5世代移動通信システム(5G)の営業ライセンスを国内の通信事業者4社に発行した。新華社をはじめ国内メディアは「中国が『5G商用元年』を迎えた」と強調している。通信速度が現行の4Gの100倍といわれる5Gの実用化には、IoT(モノのインターネット)や自動運転など、幅広い分野で産業力を高める効果が期待されている。

ライセンスの発行先には、中国3大通信事業者である中国移動(チャイナモバイル)、中国聯通(チャイナユニコム)、中国電信(チャイナテレコム)に加え、国内全土で有線テレビネットワークの業務を展開する中国広電(中国広播電視網絡)が含まれた。

ファーウェイ締め出しの動きの中、世界で5カ国目の5G商用化へ

中国政府の当初の計画では、2020年の商用開始が予定されていたが、前倒しされた。政府が5Gの商用化を急ぐ背景の1つとして、2019年4月に入り、韓国、米国、スイス、英国において、相次いで商用化の開始が発表されたことがある。

また、5G標準規格の特許出願数で世界トップの華為技術(ファーウェイ)に対する排除の動きが広まる中、5月15日には米国政府が同社と関連70社をエンティティー・リストに追加すると発表。これにより事実上、ファーウェイとこれら関連会社は米国製品の調達ができなくなる(2019年5月16日記事2019年5月21日記事参照)。

こうした逆風下における今回の商用化前倒しには、携帯電話の「中国規格」の浸透を目指す中国政府の強い意気込みが感じられる。

5G対応スマホ、2020年半ばには本格普及が進むか

基地局の整備も、各通信事業者によって急ピッチで進められている。うち、チャイナモバイルでは、9月末までに国内40都市以上で5Gサービスの提供を開始するとしている(注1)。また、各地方政府も続々と関連政策を打ち出し、取り組みを推進している(注2)。

5G対応のスマートフォン端末は、ファーウェイ、小米(シャオミー)、中興通訊(ZTE)などの各社が販売開始の準備を進めている。既に発表されている当初の販売価格はいずれも1万元(約16万円、1元=約16円)を超えるが、中国信息消費連盟の項立剛理事長は「2020年半ばには3,000~5,000元の端末も多く出てくるだろう。その後は2,000元前後の機種も出てくるのでは」と指摘している(注3)。利用者は、対応端末を購入すれば、SIMカードや電話番号を変更することなく、5Gサービスを利用できる。今後、一般消費者にも急速に普及することが予想される。

(注1、注3)「中国経済網」2019年6月12日。

(注2)2019年2月18日記事2016年6月7日記事2019年6月19日記事参照。

(小林伶)

(中国)

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