メキシコ政府、対米報復関税の対象品目の見直しを検討

(メキシコ、米国、カナダ)

メキシコ発

2019年05月17日

メキシコのガルシエラ・マルケス経済相は5月14日、カナダのトロントで同国のクリスティア・フリーランド外相と会談した。両者は2018年6月以降両国に適用されている、1962年の米国通商拡大法232条(以下、232条)に基づく鉄鋼・アルミへの追加関税措置が解除されないことへの懸念を共有し、米国・メキシコ・カナダ協定(以下、USMCA)批准の見通しについて対話した(経済省プレスリリース5月14日外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。マルケス経済相は5月1日に公布した新労働法(2019年5月月7日記事参照)について説明し、USMCAの第23章(労働の章)に基づく、国内法整備を完了し、メキシコはUSMCA批准のための約束を果たしたと強調した。

メキシコ政府は2018年11月30日のUSMCA署名後も、232条の適用が解除されないことにいら立ちを示し始めている。マルケス経済相は5月14日の記者会見で、対米報復関税措置(2018年6月6日記事参照)の内容の見直しを行っていることを発表した。変更内容は現時点では明らかにできないものの、「政治的・経済的な意図が含まれる」とコメントした。米国・メキシコ間のトラック相互乗り入れに関する紛争の際のように、米国政府や議会への政治的圧力が強まるように対象品目を再選定するものと思われる(2010年8月25日記事参照)。

一方、5月7日に発表された米国のメキシコ産トマトへの暫定アンチダンピング(AD)課税も、メキシコの対米貿易における懸念事項となっている(2019年5月9日記事参照)。メキシコ産トマトの輸出では、総輸出額の99.7%を米国向けが占めており、対米依存度が極端に高い。トマトはメキシコにとってビール、アボカドに次ぐ輸出農産品であることから、暫定AD課税の問題も、232条の適用と同様にメキシコにとって大きな懸念事項であり、米国の今後の対応次第では、USMCAのメキシコ国内における批准プロセスにも影響を与えかねない。

(松本杏奈)

(メキシコ、米国、カナダ)

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