労働法改正を公布、団結権および団体交渉権を強化

(メキシコ)

メキシコ発

2019年05月07日

メキシコ政府は5月1日、4月末に国会上下両院を通過した連邦労働法の改正を公布し、翌日施行した。2012年11月以来の大規模改正だ。その背景には、(1)憲法改正(2017年2月)に基づく労働裁判制度改革の施行法制定、(2)団結権および団体交渉権条約(通称、ILO第98号条約)批准(2018年9月)、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)発効(2018年12月)、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)署名(2018年11月)の労働の章(第23章)に基づく、国内法整備がある。

(1)では、行政機関の労働調停仲裁委員会(JCA)が担っている労働裁判を、司法府管轄の裁判所で今後実施するための法的枠組みを整備した。また、和解手続きや、労働組合と労働協約の登録などを行う政府機関として、連邦調停労働登録センター(CFCRL)を設立する。(2)については、雇用主の声を反映する「御用組合」をなくすため、新設の第390条Bisで労働協約を締結する組合が労働者の声を真に代表すること(最低でも職場の30%以上の労働者の署名が必要)を確認する手続き詳細が規定され、第390条Terで労働協約の内容が職場の過半数の労働者によって承認されるプロセスを導入、同承認を得た労働協約のみCFCRLに登録できることになった。

USMCAに合わせて全ての労働協約を4年以内に見直し

メキシコの労働法の改正は、ナンシー・ペロシ米国下院議長(民主党)が同国議会でのUSMCA批准の前提条件として要求している。そのため、USMCAの関連規定(別添23-A)の内容が盛り込まれており、改正政令の付則第11条は、改正施行日(5月2日)から4年以内に少なくとも1度は、既存の全ての労働協約を、労働者の声を反映した内容に見直すことを義務付けている。

労働者の意思を反映すれば保護協約は有効

メキシコでは、過激な外部労働組合の干渉を排除するため、穏健な組合と「保護協約」の締結をすることが多い。今回の改正では、保護協約の根拠条文に大きな変更はなかった。第395条に基づき、依然として特定の組合の加入者のみを労働者として新規採用することを労働協約の中に定められる(ただし、組合をやめた人間でも解雇はできない)。また、第923条に基づき、CFCRLに登録済みの労働協約の締結主体以外の組合から新たな労働協約締結を求めたスト予告があっても、裁判所は受理しない。ただし、登録されている労働協約が過去4年間で1度も見直された実績がない場合は、スト予告が受理される。従って、過半数の組合員の声を反映して4年に最低1度の見直しを行った上で、組合との協約をCFCRLに登録しておけば、今後も過激な外部の組合からの干渉を排除できる。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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