米国がメキシコ産トマトに17.5%の暫定AD税を課税

(メキシコ、米国、日本)

メキシコ発

2019年05月09日

メキシコ経済省は5月7日、メキシコ産トマトに対して17.5%の暫定アンチダンピング(AD)税を賦課する同日付の米国商務省の決定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを遺憾とし、今後も米国とメキシコのトマト生産者の交渉を支援していくことを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。米国商務省はメキシコ産トマトに関するAD調査を1996年に開始したが、AD税率を仮決定した後にメキシコの生産者との間で米国への最低輸出価格を約束させるAD税停止協定を締結し、その後3回の更新を行ってきた。しかし、2018年11月に米国のトマト生産者が協定の廃止を求めたため、商務省は2月6日、協定から離脱する意向外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますをメキシコ側に伝えた。その後も最低輸出価格の引き上げなどが交渉されていたが、離脱期日である5月7日(離脱通知から90日)までに交渉がまとまらず、結果として停止協定は失効、1996年に決定されていた暫定AD税(17.5%)が課税されることとなった。

トマトはメキシコにとってビール、アボカドに次ぐ輸出農産品だ。経済省によると、トマト栽培には40万人が従事しており、物流など周辺産業の雇用は17州で100万人に及ぶという。米国で消費されるトマトの約半分がメキシコ産で、AD税によるコストアップで米国の消費者にも悪影響を及ぼすとメキシコ政府は主張する。米国商務省は9月19日までにダンピングの有無と同マージンを決定し、その後、国際貿易委員会(ITC)が国内産業に与える被害の有無を決定、11月1日前後にAD税賦課の最終決定がなされる。両国政府によると、その間も停止協定の再締結(新たな価格約束)の交渉が続くという。

生鮮トマトの対日輸出が急増

2018年のトマトの対米輸出額は約22億9,200万ドル、トマト輸出全体の99.7%が米国向けで、対米依存度が極端に高い(表1参照)。過去10年間に米国の高いトマト需要に支えられ、輸出額が91.5%も伸びている。中でも近年は日本へのトマト輸出が急増している。2018年の対日トマト輸出額は前年比75.7%増の約125万ドルとなり、額としてはまだ小さいものの、過去10年間で輸出額が約28倍に拡大している。

表1 メキシコの生鮮トマト国別輸出

日本側の輸入統計をみると、2018年のメキシコ産トマト輸入額(米国など第三国経由の輸入も含む)は約440万ドル、前年比69.6%増、10年前と比較すると約20倍になっている(表2参照)。外食産業を中心にメキシコ産トマトの利用が進んでおり、日本にとってメキシコは2018年に、韓国、カナダ、オランダに次ぐ4位のトマト輸入相手国となり、輸入シェアは12.9%に達している。

表2 日本の生鮮トマト国別輸入

(中畑貴雄)

(メキシコ、米国、日本)

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