ロスネフチ、北極圏での資源開発・輸送に積極関与へ

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2019年04月02日

ロシアの石油採掘大手ロスネフチのイゴリ・セチン会長は4月1日、プーチン大統領と会談し、大統領と連邦政府が進める北極圏開発と北極海航路の輸送量増の目標達成に向け、積極的に貢献する方針を示した。

プーチン大統領と連邦政府は北極海航路について、2024年までに8,000万トンまで輸送量を増やすことを目標としている(2018年10月17日記事参照)。セチン会長は会談で、この目標に貢献すべく、現在ロスネフチが所有する北極圏のバンコール油田(クラスノヤルスク地方)を中心に、スズン、タグル、ロドチノエ油田、タイミル半島南部のエルマク油田(BPと共同)などを含めた地域を「北極圏クラスター」として、資源探査や採掘を積極的に行う方針を述べた。

第1段階として2024年までに原油採掘を開始し、2030年には原油生産を1億トンまで引き上げる可能性を同社で検討している。「北極圏クラスター」の開発に当たっては、外国企業を中心とした戦略的パートナーと共同で進める予定で、一部欧米や東南アジアの投資家が関心を寄せていると発言。資源開発に当たって必要な政府支援の内容として、税優遇や長期(30~50年)の法的な安定性の保証、北極海航路の輸送コストが他の輸送方法よりも優位性を持たせること、などを挙げている。

また、セチン会長は北極海航路の輸送に使用される船舶の建造について、ロスネフチはロシア極東沿海地方のボリショイ・カメニ市にある造船企業「ズベズダ」に25隻を発注済みで、うち4隻が強化型の砕氷船、10隻が天然ガスを燃料とするアフラマックス級タンカーと説明した。ガスプロムと海運大手ソフコムフロトが各5隻、ロスモルポルト(港湾整備などを実施する公営企業)が1隻を発注済みとも報告した。

2018年5月にプーチン大統領が4期目に入って以降、ロシア政府は特に北極圏の開発と北極海航路の振興に向けた施策を加速させている。2019年に入ってからも、ロシア極東発展省を「極東・北極圏発展省」に改編(2019年2月28日記事参照)し、天然ガス採掘民間大手ノワテクによるカムチャツカでの天然ガス積み替え基地建設計画の承認(2019年3月27日記事参照)などを行っている。加えて、プーチン大統領は3月27日、連邦政府やその他の関係機関に対し、a.北極圏での地質探査や民間投資によるインフラ建設を促進する政府支援策を含む法案の議会提出、b.サベッタ港の液化天然ガス(LNG)ターミナルなどの建設・浚渫(しゅんせつ)工事への国家予算の追加支出の検討、c.2035年までの北極圏発展戦略案の策定、d.北極圏に属する地域での社会発展指標の向上に向けた提案の作成、e.北極海航路を経由した貨物輸送について、輸送量と輸送価格に関する荷主との長期的(義務的)契約の締結に関する検討、などを指示した。また、ロシア大統領府は4月1日、サンクトペテルブルクで4月9、10日に開催される国際北極圏フォーラム(2019年2月1日記事参照)にプーチン大統領が出席することを発表している。

(高橋淳)

(ロシア)

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