自動車追加関税の判断期限は5月、日本からの輸入台数は170万台(2018年)

(米国)

米州課

2019年04月25日

トランプ大統領は、1962年通商拡大法232条(以下、232条)に基づき、自動車・同部品の輸入について、是正措置を行うか否かを5月18日までに判断しなければならない。商務省は2018年5月に、232条に基づいて自動車・同部品の輸入が米国の安全保障に与える影響について調査を開始し、その結果を2月17日に大統領に報告した。大統領は調査結果の受理後90日以内に、商務省の決定に同意するかを判断し、同意する場合には、輸入是正措置の内容や期間などを決定する必要がある(注1)。

商務省が提出した報告書の内容は公開されていないため、同省が提案した輸入是正措置の詳細は分からない。だが、大統領はこれまで何度も自動車・同部品への追加関税に言及してきたことや、実質的に追加関税を交渉のレバレッジとして利用してきたことなどから、仮に是正措置を行う場合は、追加関税賦課になるとの見方が濃厚だ。

そこで、追加関税が課された場合の影響を量る参考として、米国の自動車の輸入統計をみてみる。対象となる自動車の定義やHSコードが現時点では不明なため、既に一定の条件の下で自動車・同部品の追加関税適用除外が明記されている、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA、注2)における自動車の定義と、232条調査を所管する商務省傘下の国際貿易局(ITA)交通機械部(OTM)が定めている自動車・同部品の定義を基にした。ただし、既に25%のWTO協定税率(MFN税率)が課されているライトトラックは、USMCAでは追加関税の対象外とされていることから、OTMの定義からも除外している。

その結果、2018年の米国の自動車輸入は、USMCAの定義の下では、776万台の1,740億ドル。OTMの定義の下では、731万台の1,702億ドルとなった。国別では、輸入台数はいずれの定義でもメキシコが最多で約190万台。日本の170万台、カナダの160万台が続いた。輸入額は、いずれの定義でも日本が最多で約400億ドル。カナダの370億ドル、メキシコの340億ドルで続いた(表1、2参照)。自動車部品の輸入額についても、メキシコが最多で600億ドルとなり、中国の200億ドル、カナダの175億ドルが続いた。日本はカナダに次ぐ4番目で161億ドルだった(表3参照)。

表1 米国の乗用車輸入台数(2018年)
表2 米国の乗用車輸入額(2018年)
表3 米国の自動車部品輸入額

自動車産業は裾野が広く従事する人数も多いことから、米国内外から追加関税賦課には懸念する声が聞かれており(2019年2月20日記事2019年2月26日記事参照)、トランプ大統領がどのような決断を下すのか注目を集めている。なお、日本とEUは、米国と通商交渉が続いている間は、自動車・同部品への追加関税の対象外になるとみられている(2018年12月6日付地域・分析レポート参照)。

(注1)是正措置が他国との協定の交渉になる場合、180日間延長できる。

(注2)USMCAでは、サイドレターで、メキシコとカナダからの輸入は、乗用車は年間260万台まで、ライトトラックは台数無制限、自動車部品についてはメキシコからは年間1,080億ドル、カナダからは324億ドルまでを対象外とすることが約束されている(2018年10月2日記事参照)。

(赤平大寿)

(米国)

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