米ルイジアナ州に日本食品普及の素地を発見
2026年2月13日
米国南部のミシシッピ川下流に沿って広がるルイジアナ州は、人口459万7,740人(米センサス局、2024年7月時点)で州別25位、名目GDP3,291億7,280万ドル(2024年)で州別25位と、全米50州の中間あたりの規模だ(図参照)(注)。同州の経済の基盤は天然資源が豊富なアメリカ湾(メキシコ湾)沿岸地域に立地するエネルギー・石油化学産業で、ほかにも航空宇宙、アグリビジネス産業などが盛んだ。同州では、魚介を食する習慣があり、ベトナム系移民が持ち込んだ麺料理が普及し、都市部を中心に日本食品が受け入れられる素地があるとみられる。筆者が行った現地でのインタビューを踏まえて報告する。
フランス、スペイン植民地時代の食文化でシーフードが人気
ルイジアナ州のアジア系人口の中で最大のベトナム系(約3万4,000人)に対して日系人は約5,100人と少ない。ジェトロの「2022年度米国における日本食レストラン動向調査」によると、調査時点のルイジアナ州の日本食レストラン軒数は州別25位の252軒で、1位のカリフォルニア州(4,995軒)や隣接するテキサス州(1,197軒)と比べてかなり少ない。ニューオーリンズやバトンルージュ都市圏には日系スーパーは確認できず、日本食の存在感は小さいといわざるを得ない。
出所:ジェトロ作成
しかし、日本食文化が広がる素地がないかといえばそうは言い切れない。アメリカ湾(メキシコ湾)沿いという地の利を活かすかたちで、ルイジアナ州では水産業が盛んだ。2024年の商業用漁獲量は31万5,133トンで、州別ではアラスカ州に次いで2位の規模を誇る〔漁獲額(3億2,420万ドル)では4位〕。かつてフランスやスペインの植民地時代を経たこともあり、同州ではエビやザリガニ、魚などの水産品を使ったケイジャンやクレオール料理が代表的だ。主要都市のニューオーリンズやバトンルージュには生ガキに加えて、にんにくやハラペーニョなどを使って炭焼きしたカキ料理を提供するオイスターバー、ポーボーイ(Po' boy)と呼ばれる白身魚、カキ、エビなどを材料としたサンドイッチ店が点在している。もちろん、周りの南部諸州と同様にバーベキューやフライドチキン、ハンバーガーなどの肉料理も人気だが、市民の水産品に対する許容度は高いといえる。
ニューオーリンズ市内にある、オーナー、シェフともに白人系の日本食レストランOrigami
では、筆者が訪れたのは午後1時過ぎの遅めのランチ時間だったにもかかわらず、白人のグループ客がすしを楽しんでいる姿が見られた。同店の握りずしは、すし飯の味、硬さ、握り方、すしネタのどれをとっても、例えば日本食のレベルが高いといわれるロサンゼルスのすし店に引けを取らないレベルだった。
Origamiのシェフは、ロサンゼルスやニューオーリンズの日本食レストランで働いたことはあるが、日本で修行したわけではない。同店の従業員に話を聞いたところ、シェフは味にこだわる性格であり、自身の努力だけでここまで腕を上げたという。また、ニューオーリンズに日本食ブームが到来しているわけではないが、「白人をはじめ非日系の間で日本食ファンが少なくない」と説明した。


ラーメン人気の裏にはベトナム系移民の貢献あり
前述のとおり、ルイジアナ州のアジア系人口の割合は1.8%とわずかだ。その中ではベトナム系が多く、その影響もあって、ニューオーリンズの郊外にはベトナムレストランが多く見られる。ベトナムのフォーをはじめとする麺料理は、地元民にも広く受け入れられているようだ。
ニューオーリンズ市内にあるRamen Nomiya
では、とんこつ、激辛、「クロ(Kuro)」の3種類からスープを選び、チャーシューなどのトッピングを加えるかたちでラーメンが提供されている。麺は少し柔らかく感じるが、スープやチャーシューには手の込んだ、きめ細かい風味があり、前述のすしと同様、ロサンゼルスのラーメンとあまり変わらないレベルといえる。


ベトナム系の従業員によると、同店に足を運ぶ客の多くは白人だ。ニューオーリンズでラーメンが市民権を得ているとはいえないが、ベトナム系によって麺料理が普及し、ラーメンが広がる素地があるという。午前11時の開店後間もなく白人のグループが入店してきた。近年の日本のアニメ人気も手伝い、地元では着実にラーメンファンが増えている印象とのことであった。
バトンルージュ郊外にあるHikari Ramen
では、とんこつやしょうゆ、辛みそなど多様なスープのラーメンのほか、居酒屋メニューとして焼き鳥、イカサラダ、ギョーザ、肉まん、お好み焼き、たこ焼き、天ぷらなど幅広いメニューを提供している。
スープで有名な中国福建省の移民2世でスープの味にこだわりを持つオーナーは、毎日12時間ほど煮込んで自前でラーメンのスープを作っている。同店はSNSなどを駆使して地元の客が求める味を常に追求しているという。
店内を見渡す限り、白人と黒人の顧客ばかりだ。オーナーは、地元の住民にラーメンが受け入れられる要因として、ベトナム系が広めてきた麺料理が社会に浸透していることを挙げている。

アジア系スーパーで豊富な日本食品
ルイジアナ州の米系スーパーでは日本食品はほとんど見かけず、市民の日本食品へのアクセスは限定的との印象を受ける。一方、非日系でもアジア系スーパーは日本食品を豊富に取りそろえている。
ニューオーリンズの北西に広がるメテリーは、中・高所得者層の白人系が多く住むエリアだ。また、メテリーの北部にはベトナム系を中心にアジア系のコミュニティーも存在する。メテリーにあるアジア系食品スーパーOriental Market
は、日本のコンビニ程度の広さだ。オーナーは韓国系だが、品ぞろえの7割程度は日本食品が占める。調味料や菓子、冷凍食品、日本酒を含む飲料など豊富な種類の日本食品が棚に並べられている。店内では白人を中心に地元の住民と思われる客が日本食品を手に取る姿が見られる。
日本食品は日系食品商社がロサンゼルス港からテキサス州支店の倉庫に運び、そこからルイジアナ州に配送するケースが多いため、輸送費・管理費がかかる分、ルイジアナ州での小売価格はロサンゼルスやテキサス州などのエリアと比べて25~50%ほど高い印象だ。だが、Oriental Marketのオーナーによれば、それでも白人系の顧客を中心に日本食品は人気が高いようだ。

前述のRamen NomiyaやHikari Ramenは、日系食品商社のテキサス支店からラーメンの麺を仕入れている。Oriental Marketも日本食品に関しては日系食品商社を主な取引先とする。
ある日系食品商社によれば、ルイジアナ州を日本食品の「フロンティア市場」に位置付け、営業活動を展開しているという。肉料理が主体の米南東部や中西部では日本食の普及が東・西海岸地域より遅れている印象がある。ルイジアナ州も然りだが、同州には一般的に根付くシーフード文化やベトナム系の麺料理の影響があり、日本食品普及の可能性を見出せる。
- 執筆者紹介
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ジェトロ・ヒューストン事務所
キリアン 知佳(きりあん ちか) - 2022年9月からジェトロ・ヒューストン事務所勤務。




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