2024年カナダ新車販売は前年比8.2%増、生産は10%減
2025年7月18日
カナダの2024年の新車販売台数は、第4四半期(2024年10~12月)に、過去数年間の不振から脱却して正常さを取り戻したとみられる。メーカー別では、ゼネラルモーターズ(GM)が首位、フォードが2位を維持し、引き続き米系がトップ2位を占めた。生産台数は、電気自動車(EV)生産への体制移行や一部メーカーによる減産の影響を受け、前年比10.0%減となり全体としては大きな成長はみられなかった。非日系メーカーによる生産停止や減産などの背景から、生産では日系がトップ2位を占め、そのシェアも上昇した。
新車販売台数は増加し安定成長の兆しも
調査会社デロジエ・オートモーティブ・コンサルタント(以下DAC)が2025年1月15日に発表した統計によると、カナダの2024年の新車販売台数は前年比8.2%増加の185万9,549台だった(表1参照)。ここ数年は、新型コロナウィルスや半導体不足による車両供給の混乱により、カナダの自動車市場にとって厳しい時期が続いたが、2024年になりようやく市場の安定化がみられた。2024年初には、納車までの期間が短縮したことにより需要の急増がみられ、さらには、年末にはケベック州による補助金削減前の駆け込み需要により、販売台数が大幅に増加した。
メーカー別に新車の販売台数をみると、GMが前年比11.9%増の29万4,315台で前年に続いて首位を維持した。フォードは16.2%増の27万8,571台で変わらず2位。トヨタは5.0%増の23万8,933台で前年に引き続き3位だった。前年6位だった現代自動車は、13.5%増の13万8,755台となり4位に浮上した。ホンダは8.9%増の13万5,692台で前年と変わらず5位を維持した。ステランティスは17.9%減の12万9,945台で前年の4位から6位に後退した。増加率順では、フォルクスワーゲン(VW)の28.2%増が最も高く、スバルが23.8%増、マツダが23.2%増と続いた。
順位(注1) | メーカー | 2023年 | 2024年 | 前年比 |
---|---|---|---|---|
1(1) | GM | 263,084 | 294,315 | 11.9 |
2(2) | フォード | 239,790 | 278,571 | 16.2 |
3(3) | トヨタ | 227,460 | 238,933 | 5.0 |
4(6) | 現代 | 122,286 | 138,755 | 13.5 |
5(5) | ホンダ | 124,628 | 135,692 | 8.9 |
6(4) | ステランティス | 158,237 | 129,945 | △17.9 |
7(7) | 日産 | 91,378 | 103,092 | 12.8 |
8(8) | 起亜 | 84,768 | 86,657 | 2.2 |
9(9) | VW | 63,757 | 81,742 | 28.2 |
10(10) | マツダ | 58,637 | 72,226 | 23.2 |
11(12) | スバル | 54,966 | 68,043 | 23.8 |
12(11) | テスラ | 54,981 | 55,188 | 0.4 |
13(14) | 三菱 | 35,708 | 38,921 | 9.0 |
14(13) | メルセデス・ベンツ | 35,948 | 34,484 | △4.1 |
15(14) | アウディ | 35,076 | 33,644 | △4.1 |
16(16) | BMW | 31,021 | 30,623 | △1.3 |
― | その他(注2) | 37,331 | 38,718 | 3.7 |
米系・日系 | 米系自動車メーカー | 716,092 | 758,019 | 5.9 |
日系自動車メーカー | 592,777 | 656,907 | 10.8 | |
その他メーカー | 410,187 | 444,623 | 8.4 | |
セグメント | 乗用車 | 255,933 | 248,702 | △2.8 |
小型トラック | 1,463,123 | 1,610,847 | 10.1 | |
合計 | 1,719,056 | 1,859,549 | 8.2 |
注1:順位のかっこ内は2023年。
注2:「その他」はジャガー、ランドローバー、マセラティ、ミニ、ポルシェ、ボルボ。
出所:デロジエ・オートモーティブ・コンサルタントのデータを基にジェトロ作成
日系・非日系メーカーの新車販売の割合をみると、米系の合計台数は前年比5.9%増の75万8,019台で、その他では8.4%増の44万4,623台だった。一方、カナダで販売を行う日系6社(トヨタ、ホンダ、日産、マツダ、スバル、三菱自動車)の合計は10.8%増の65万6,907台となり、6社の販売シェアは前年の34.5%から35.3%に微増した。
セグメント別の新車販売台数では、乗用車(セダン、クーペ、ハッチバック)が前年比2.8%減の24万8,702台と落ち込み、小型トラック(ピックアップトラック、スポーツ多目的車(SUV)、クロスオーバーSUV)は10.1%増の161万847台となった。小型トラックのシェアは新車販売台数全体の86.6%と、2023年の85.1%からさらに上昇し、過去最高水準に達した。これに対し、乗用車のシェアは2023年の14.9%から13.4%へと低下した。
生産台数でトヨタは首位を維持
2024年のカナダでの生産台数は、ゼロエミッション車(ZEV)への生産移行が進む一方で減少し、前年のような成長はみられなかった。DACが2025年1月31日に発表した統計によると、前年比10%減の137万4,041台(表2参照)にとどまった。
メーカー別の生産台数順では、トヨタは前年比1.5%増の53万3,584台で首位を維持した。車種別では、「RAV4」は5.6%増産したものの、「レクサス」が5.3%減産で相殺され、全体の生産はわずかな増加にとどまった。2位のホンダは、「シビック」の増産により、42万550台となり12.3%増だった。3位のステランティスは37%減の19万2,828台となったが、前年と同様に順位を維持した。「クライスラー300」「ダッジ・チャレンジャー」「ダッジ・チャージャー」の生産を1月に終了したためとみられる。一方、GMは、商業用EVバン「ブライト・ドロップ」を12月に96.3%増と大幅に増産したことに加え、小型トラック「シルバラード」も増産した結果、8.9%増の17万2,901台となり、4位に順位を上げた。5位のフォードは、一時的に工場の稼働を停止している影響で、66.4%減の5万4,178台にとどまった。
順位(注) | メーカー | 2023年 | 2024年 | 前年比 |
---|---|---|---|---|
1 (1) | トヨタ | 525,811 | 533,584 | 1.5 |
2 (2) | ホンダ | 374,467 | 420,550 | 12.3 |
3 (3) | ステランティス | 305,838 | 192,828 | △37.0 |
4 (5) | GM | 158,825 | 172,901 | 8.9 |
5 (4) | フォード | 161,300 | 54,178 | △66.4 |
セグメント | 乗用車 | 341,472 | 240,113 | △29.7 |
小型トラック | 1,184,769 | 1,133,928 | △4.3 | |
合計 | 1,526,241 | 1,374,041 | △10.0 |
注:順位のかっこ内は2023年の順位。
出所:デロジエ・オートモーティブ・コンサルタント
日系・非日系の生産の割合については、ステランティス、GM、フォードといった非日系メーカーによる大幅な減産の影響を受け、上位2位であるトヨタとホンダの日系メーカーの生産シェアは、前年の59.0%から69.4%へと拡大した。
セグメント別の生産台数は、乗用車が前年比29.7%減と大幅に減少した一方、小型トラックは4.3%の微減だった。こうした動きを受けて、全生産台数に対する小型トラックのシェアは前年の77.6%から82.5%へと上昇し、前年に続いて小型トラックの需要が好調とみられる。
カナダの北米生産シェアは減少
北米におけるカナダ・米国・メキシコの生産台数をみると、カナダは前年比で10.0%減少したのに対し、米国は3.5%、メキシコは2.4%とそれぞれ増加した。その結果、北米全体での生産台数に占めるカナダの割合は、前年9.7%から8.6%へと縮小した。米国は、66.3%から67.4%に増加した。メキシコは0.1ポイント増加し、24.1%だった。

- 執筆者紹介
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ジェトロ・トロント事務所
井口 まゆ子(いぐち まゆこ) - 民間企業勤務を経て、2019年からジェトロ・トロント事務所勤務。