新車販売が前年比13.9%減、86万台に(インドネシア)
BEVの躍進が続く

2025年6月27日

インドネシアで、自動車販売の伸び悩みが続いている。2024年、インドネシア自動車製造業者協会(GAIKINDO)によると、通年の卸売販売台数は前年より14万台減少。86万5,723台に終わった。

経済そのものは、悪くない。当該年のGDP成長率は5.03%。ASEANの中では、ベトナムやカンボジアなどに次ぐ高い成長率を維持した。しかし、足元の自動車産業を見ると今後の成長に暗雲が立ち込める。本稿では、2024年のインドネシアの自動車市場について紹介する。

新車販売台数は前年比13.9%減少、100万台割れの86万台

インドネシアの2024年の新車卸売販売台数は前年比13.9%減。86万5,723台だった。燃料別では、ガソリン車が59万1,904台(前年比19.9%減)、ディーゼル車が17万2,333台(同11.3%減)だ(表1参照)。一方、ハイブリッド車(HEV)は、前年比8.1%増の5万6,684台。BEVも同122.3%増の4万4,727台、プラグイン・ハイブリッド車(PHEV)も前年比で微増した。このように、電気自動車(EV)全体で伸びを見せた。

表1:燃料別卸売販売台数(単位:台数、%)(△はマイナス値、-は値なし)
項目 2021年 2022年 2023年 2024年
台数 台数 台数 台数 割合 前年比
伸び率
ガソリン車 688,924 803,021 738,877 591,904 68.4 △ 19.9
ディーゼル車 195,083 229,582 194,296 172,333 19.9 △ 11.3
ハイブリッド車(HEV) 2,475 5,100 52,434 56,684 6.5 8.1
バッテリー式電気自動車(BEV) 685 10,327 20,119 44,727 5.2 122.3
プラグインハイブリッド車(PHEV) 35 10 70 74 0.0 5.7
燃料電池車 1 0.0 純増
CNG
(圧縮天然ガス)
6 △ 100.0
総計 887,202 1,048,040 1,005,802 865,723 100.0 △ 13.9

出所:インドネシア自動車製造業者協会(GAIKINDO)

ブランド別では、トヨタ自動車が28万8,982台(シェア33.4%)で首位を維持した(表2参照)。次いで、ダイハツ16万3,032台(シェア18.8%)、本田技研工業(ホンダ)9万4,742台(同10.9%)、三菱自動車7万2,217台(同8.3%)と続いた。上位10ブランドのうち、8社を日系企業が占めた。シェアの8社合計は88.3%になる。しかし、前年は90.8%と比べると、2.5ポイント減少したことになる。

他方、非日系企業に目を移すと、シェア9位に韓国の現代自動車(2万2,361台、シェア2.6%)、10位に中国の上汽通用五菱汽車(2万1,923台、同2.5%)が入った。また、2024年6月に国内販売を開始した中国のBYDは、1万6,669台(同1.9%)。ブランド別販売台数で11位につけ、躍進した。

表2:ブランド別卸売販売台数(上位20ブランド)(単位:台数、%)(△はマイナス値、-は値なし)
ブランド別 国名 2021年 2022年 2023年 2024年
台数 台数 台数 台数 割合 前年比
トヨタ自動車 日本 295,768 331,410 336,777 288,982 33.4 △ 14.2
ダイハツ 日本 164,908 202,665 188,000 163,032 18.8 △ 13.3
本田技研工業 日本 91,122 131,280 138,967 94,742 10.9 △ 31.8
三菱自動車 日本 107,605 99,051 77,416 72,217 8.3 △ 6.7
スズキ自動車 日本 91,793 90,408 81,057 66,809 7.7 △ 17.6
三菱ふそう 日本 36,518 37,687 31,644 27,804 3.2 △ 12.1
いすゞ 日本 26,636 36,545 31,336 26,296 3.0 △ 16.1
日野自動車 日本 20,683 30,853 28,449 24,158 2.8 △ 15.1
現代自動車 韓国 3,164 31,966 35,500 22,361 2.6 △ 37.0
上汽通用五菱汽車 中国 25,564 29,989 23,540 21,923 2.5 △ 6.9
BYD 中国 16,669 1.9
奇瑞汽車 中国 4,099 9,191 1.1 124.2
BMW ドイツ 2,389 2,892 4,362 4,674 0.5 7.2
マツダ 日本 3,392 3,888 5,320 4,377 0.5 △ 17.7
MG 中国 1,075 974 1,183 3,974 0.5 235.9
メルセデス・ベンツ ドイツ 3,906 6,277 5,498 3,756 0.4 △ 31.7
LEXUS 日本 972 1,033 2,515 2,584 0.3 2.7
UD TRUCKS 日本 660 1,993 1,799 2,280 0.3 26.7
日産自動車 日本 3,177 2,413 1,639 1,377 0.2 △ 16.0
CITROEN フランス 1,324 0.2
その他 7,870 6,716 6,701 7,193 0.8 7.3
合計 887,202 1,048,040 1,005,802 865,723 100.0 △ 13.9

出所:GAIKINDO

新車生産台数は前年比14.3%減、日系のシェアは89.5%

インドネシアでの自動車生産は2024年、前年比14.3%減の119万6,664台だった。

国別では、次のとおり。

  • 日系:107万925台で首位から変動がない。しかしシェア89.5%で、9割を割り込んだ(表3参照)。
  • 韓国系:8万5,674台。シェアが前年比1.4ポイント増加し、7.2%になった。
  • 中国系:販売台数では、日系に次いで2位。しかし、生産では3万3,120台(同2.8%)にとどまった。卸売販売台数の伸び(前年比77.6%増)と比較して、現地生産シェアの上昇率は緩やかだった(4.5%増)。
表3:国別生産台数(単位:台数、%)(△はマイナス値)
国名 2021年 2022年 2023年 2024年
台数 割合 前年比
日本 1,085,756 1,346,933 1,274,665 1,070,925 89.5 △ 16.0
韓国 770 83,132 81,600 85,674 7.2 5.0
中国 31,540 33,340 31,680 33,120 2.8 4.5
ドイツ 3,901 6,741 7,772 6,945 0.6 △ 10.6
合計 1,121,967 1,470,146 1,395,717 1,196,664 100.0 △ 14.3

出所:GAIKINDO

カテゴリー別では、乗用車が前年比13.0%減、102万6,976台。商用車が21.2%減、16万9,688台だった(表4参照)。

また、乗用車のうち4×2(フォーバイツー)が13.8%減、80万487台。低価格・省エネ車の「ローコスト・グリーンカー」(LCGC)が11.9%減、20万4,061台だった。

商用車では、ピックアップトラックが23.7%減、10万1,237台になった。スズキ自動車が生産台数を約2万台減らしたことなどが要因とみられる。

表4:カテゴリ別生産台数(単位:台数、%)(△はマイナス値)
項目 分類 2021年 2022年 2023年 2024年
台数 台数 台数 台数 割合 前年比
伸び率
乗用車 4×2 668,452 945,783 928,620 800,487 66.9 △ 13.8
LCGC 177,514 214,530 231,590 204,061 17.1 △ 11.9
4×4 9,853 32,440 17,019 19,862 1.7 16.7
セダン 33,937 21,497 3,126 2,566 0.2 △ 17.9
商用車 ピックアップ 157,890 160,171 132,601 101,237 8.5 △ 23.7
トラック 72,983 93,679 76,031 63,607 5.3 △ 16.3
バス 1,338 2,046 6,730 4,844 0.4 △ 28.0
合計 1,121,967 1,470,146 1,395,717 1,196,664 100.0 △ 14.3

出所:GAIKINDO

ブランド別では、トヨタ自動車が51万6,997台(シェア43.2%)を生産した(表5参照)。次いで、ダイハツが16万3,509台(同13.7%)、三菱自動車が13万7,255台(同11.5%)、本田技研工業が9万5,564台(同8.0%)と続いた。

中韓勢では、韓国の現代自動車が8万5,674台(同7.2%)。中国の上汽通用五菱汽車が2万1,774台(同1.8%)、奇瑞汽車が8,431台(同0.7%)だった。

前年比では、トヨタ自動車、ダイハツ、三菱自動車のシェアは横ばい。一方、本田技研工業とスズキ自動車は、2ポイント弱シェアが減少した。

表5:ブランド別生産台数(単位:台数、%)(-は値なし)
ブランド名 国名 2021年 2022年 2023年 2024年
台数 台数 台数 割合 台数 割合
トヨタ自動車 日本 465,434 602,419 589,262 42.2 516,997 43.2
ダイハツ 日本 163,819 201,958 187,177 13.4 163,509 13.7
三菱自動車 日本 146,594 153,102 154,359 11.1 137,255 11.5
本田技研工業 日本 90,075 131,098 133,762 9.6 95,564 8.0
現代自動車 韓国 770 83,132 81,600 5.8 85,674 7.2
スズキ自動車 日本 127,732 141,235 110,126 7.9 73,437 6.1
いすゞ 日本 32,819 44,694 38,456 2.8 31,698 2.6
三菱ふそう 日本 36,113 38,314 32,159 2.3 27,105 2.3
日野自動車 日本 22,450 32,570 27,545 2.0 23,823 2.0
上汽通用五菱汽車 中国 26,277 30,441 24,456 1.8 21,774 1.8
奇瑞汽車 中国 5,705 0.4 8,431 0.7
BMW ドイツ 1,786 2,462 2,803 0.2 3,522 0.3
メルセデス・ベンツ ドイツ 1,961 3,931 4,522 0.3 3,267 0.3
UD TRUCK 日本 438 1,543 1,819 0.1 1,537 0.1
NETA 中国 1,225 0.1
DFSK 中国 5,263 2,899 1,384 0.1 690 0.1
MG 中国 660 0.1
HAVAL 中国 200 0.02
MINI ドイツ 154 348 447 0.03 156 0.01
SERES 中国 135 0.01 140 0.01
ダットサン 日本 282
合計 1,121,967 1,470,146 1,395,717 100.0 1,196,664 100.0

出所:GAKINDO

新車国内生産は今後、中国系やベトナム系、欧州系完成車メーカー(OEM)によるBEV生産が本格化する見込みだ。

2025年5月6日、ロサン・プルカサ・ルスラニ投資・下流化相は「新エネルギー車サミット2025」で、「合計7社〔中国のBYD、AION、上汽大通(Maxus)、吉利汽車(Geely)、ベトナムのビンファスト、欧州のシトロエン、ドイツのフォルクスワーゲン〕が工場を建設中」とした。当該7社の投資総額は15兆4,000億ルピア(約1,355億円、1ルピア=約0.0088円)に達する。これら工場が完成すると、インドネシア国内でのEVの年産が28万1,000台になるという。充電ステーションをはじめとした環境整備も進める。「2030年にはEVを年間250万台生産する」と意気込んだ(2025年5月6日付、アンタラ)。

また、インドネシアで「ポリトロン」ブランドの家電製品を製造、販売するハルトノ・イスタナ・テクノロギも2025年5月、スポーツ用多目的車(SUV)のEVを発表した。車両は、中国の創繊集団(スカイワース・グループ/テレビメーカー)と提携し開発した。

ベトナム向け輸出が63%増、中東市場への輸出も増加

2024年の完成車の輸出台数は、前年比9.2%減。51万8,505台だった。

そのうち、半数以上の27万6,089台(シェア53.2%)をトヨタ自動車が輸出した。次いで、三菱自動車が11万9,762台(同23.1%)、現代自動車が7万244台(同13.5%)と続いた。現代自動車の輸出は、前年比24.2%増だった(表6参照)。

輸出国別にみると、最多がフィリピン向けで、17万4,601台(シェア33.7%)。ただし、前年比7.4%減だった。次いで、ベトナム向けが8万4,555台(同16.3%)、メキシコ向けが4万8,360台(同9.3%)だった(表7参照)。

ベトナム向けは三菱自動車やトヨタ自動車、現代自動車による輸出が牽引。前年比63.1%増と最も増加率が高かった。

なお、米国向けには、現代自動車が最も多く輸出した(7,000台)。インドネシアでは、輸出全体に占める米国向けの比率が他のASEAN諸国と比較して相対的に低い。そのため、米国の相互関税による直接的な影響は軽微と見られる。他方、(1)同関税措置による国内市場の冷え込みによる需要減、(2)通貨ルピア安による調達コストの増加、(3)中国製品の流入による競争激化、は引き続き懸念材料だ。

表6:ブランド別輸出台数(単位:台数、%)(△はマイナス値、-は値なし)
ブランド 2022年 2023年 2024年
台数 台数 台数 割合 前年度比増減
トヨタ自動車 332,755 321,032 276,089 53.2 △ 14.0
三菱自動車 105,013 113,823 119,762 23.1 5.2
現代自動車 43,108 56,538 70,244 13.5 24.2
スズキ自動車 66,310 40,765 25,753 5.0 △ 36.8
本田技研工業 9,030 25,309 15,757 3.0 △ 37.7
いすゞ 8,254 7,058 8,070 1.6 14.3
上汽通用五菱汽車 48 1,525 1,133 0.2 △ 25.7
日野自動車 939 230 765 0.1 232.6
ダイハツ 1,778 2,358 444 0.1 △ 81.2
マツダ 2,095 2,042 332 0.1 △ 83.7
DFSK 813 235 155 0.0 △ 34.0
三菱ふそう 1 0.0
合計 570,915 518,505 100.0 △ 9.2

出所:GAIKINDO

表7:完成車(CKD含む)の輸出台数(国・地域別)(単位:台数、%)(△はマイナス値)
国名 2022年 2023年 2024年
台数 台数 台数 割合 前年度比増減
フィリピン 170,634 188,495 174,601 33.7 △ 7.4
ベトナム 88,221 51,837 84,555 16.3 63.1
メキシコ 29,859 56,483 48,360 9.3 △ 14.4
サウジアラビア 49,530 40,289 43,834 8.5 8.8
中東・アフリカ(注) 19,666 24,018 26,777 5.2 11.5
タイ 33,136 39,676 14,231 2.7 △ 64.1
マレーシア 17,785 20,416 12,167 2.3 △ 40.4
ペルー 16,614 14,501 12,109 2.3 △ 16.5
UAE 13,239 13,951 11,655 2.2 △ 16.5
その他 131,459 121,249 90,216 17.4 △ 25.6
合計 570,143 570,915 518,505 100.0 △ 9.2

注:中東・アフリカへの輸出台数には、サウジアラビア、UAEへの輸出台数は含まれない。
出所:GAIKINDO

中間所得層人口の減少が自動車販売にも影響か

2024年の新車販売台数が当初予想を下回った要因には、複数の指摘がある。

1つは、大統領選挙による消費マインドの低下だ。2024年はインドネシアにとって5年に一度の大統領選挙の年だった。投票は2月で、前国防大臣のプラボウォ・スビアント氏が新大統領に決定した。その後、就任式が開催された10月までの間には、就任後に優遇税制などの恩典が発表されるとの期待感があった。そこから新車の買い控えがあったと見られている。

次に、中間所得層人口の減少だ。インドネシア経済社会研究所(LPEM)が2024年8月に発表した研究結果によると、2018年から2023年にかけて貧困層予備軍(注)と中間層予備軍が増加。中間層は約18%減少した。

さらに、自動車購入に対する貸付(ローン)金利の高まりがある。インドネシア中央銀行の金利は、2022年の3.50%から2024年には6.25%に上昇した。例えば、インドネシアの大手国営銀行マンディリ銀行の自動車向けを含む年間貸付金利(Non-KPR)は、2023年12月時点の8.80%だった。これが2024年12月時点で12.0%に上昇した。

これに加えて、自動車の新車価格が年率8%で上昇しているとの指摘もある。その結果、消費者の実質的な金利負担が増加している。インドネシアにおける新車自動車の売れ筋価格は、日本円で200万円前後だ。自動車の高機能化などによる販売価格の上昇に、消費者の購買力が追い付いていない。

2025年1月、インドネシア銀行は政策金利を5.75%に引き下げた。5月には5.50%まで引き下げている。今後、消費喚起につながるのか注視が必要だ。

他方で、新しい自動車を購入する際の選択肢として、中古車市場が伸長していることも要因として挙げられる。インドネシア金融監督庁(OJK)の2025年2月の発表によると、中古車向けの融資は前年比15.6%増加した。

2025年にHEVに対する優遇税制も実施

GAIKINDOは2025年1月、2025年の新車自動車の販売台数目標を85万台と設定した。

なお、当地では、2022年に104万8,040台を販売して以降、販売台数が減少傾向にある。政府としても、この現状を打破したい。そのため2025年2月、BEVやHEVの購入に係る優遇税制を、次のとおり発表した(2025年2月26日付ビジネス短信参照)。なお2024年にはBEV購入時の優遇税制は導入されていたものの、HEVを対象とした優遇税は導入が検討しながらも、結局見送っていた。

  • 国内で販売するBEVのうち一定条件を満たす車両について、通常12%の付加価値税(VAT)税率の5~10ポイントを政府が負担(減税)する。
  • HEV(フルHEV、マイルドHEV、PHEVを含む)で「自動車奢侈税に関する政令2021年第74号」に定めた条件を満たした車種について、奢侈(しゃし)税の3%を政府が負担する(表8参照)。
表8:2025年のBEVやHVの購入に係る優遇税制
対象 優遇内容 対象期間 条件
BEV 一定条件を満たす車両について、通常12%の付加価値税(VAT、注1)の5~10ポイントを政府が負担(減税)。 2025年1月から12月まで 10ポイント減税の適用対象:国産化率(TKDN)が40%以上の特定四輪と、特定電動バス(運転者を含む10人以上を輸送するバス)
5ポイント減税の適用対象:TKDNが20%以上、40%未満の特定電動バス
HEV
(注2)
奢侈(しゃし)税の3%を政府が負担。 2025年1月から12月まで 自動車奢侈税に関する政令2021年第74号に定めた条件を満たした車種

注1:インドネシア財務省は2025年1月1日から奢侈税の課税対象となる高級品(自動車、高級住宅、飛行機、ヘリコプター、ヨットなど)に限定。VATを12%に引き上げた。
注2:ここで言うHEVは、(1)フルHEV、(2)マイルドHEV、(3)PHEVを含む。
なお(2)は、エンジンが主な動力源として機能し、モーターは補助的な働きを持つハイブリッド車。完全な電動走行はできない。
出所:政府発表等から作成

自動車販売増に向け、新たな懸念材料

他方で、販売増加に向けた懸念材料として、新たな指摘がある。自動車税(PKB)と自動車名義変更税(BBNKB)に対する追加課税(OPSEN)だ。この措置は、中央・地方政府財政関係法「2022年第1号」に基づき、地方政府が2025年1月から施行できる。導入を先送りしている自治体もある。しかし中部ジャワ州など一部は、法令通り4月から適用を開始済みだ。

加えて、2024年に販売低迷を招いた要因を解消できたわけでもない。「中間層の減少」「自動車ローン金利の上昇」などは、なおも続いている。更なる消費減退へ、懸念がくすぶる。

中国系OEMの更なる市場拡大も進むと見られ、競争環境もより一層熾烈(しれつ)になることが予想される。先に述べたとおり、中国系OEMが続々とインドネシアに工場を建設しているが、中でもAIONはインドネシアを東南アジアのハブ市場と位置付け、国内市場だけでなく、同国から東南アジア各国への輸出拠点として機能させる計画を持つ。2025年4月に開催された上海モーターショーでも、インドネシアに未進出の新興OEMが今後の重点市場としてASEANを挙げていた。

日系OEMにとって、短中期的に課題になるのは、BEVへの対応と思われる。ただし、長期的には中国市場で現在トレンドになっている「知能化(スマートコックピット)」や「自動運転」への対応も消費者が求める要素になっていきそうだ。日系企業の牙城とされたインドネシア市場に中国系企業が進出攻勢を強める中、日系企業はこれらの企業と今後、どのように競争、協業をしていくかにも注目が集まる。


上海蔚来汽車(NIO)の展示(「上海モーターショー」2025、ジェトロ撮影)

注:
インドネシア中央統計庁(BPS)は、貧困ライン(GK)を基準に、国民の経済力を5段階(貧困層、貧困層予備層、中間予備層、中間層、上位層)に分類している。
執筆者紹介
ジェトロ・ジャカルタ事務所
大滝 泰史(おおたき やすふみ)
2014年、ジェトロ入構。総務部広報課、アムステルダム事務所、福井貿易情報センターを経て、2021~2023年に経済産業省通商政策局経済連携課に出向。CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定)の英国加入プロセスなどの日本のEPA/FTA(経済連携協定/自由貿易協定)交渉および利活用促進のための業務に従事。その後、調査部国際経済課を経て、2023年12月からジャカルタ事務所で広域調査員として勤務。