新車登録台数は3年連続で増加、生産は過去最多を記録(ルーマニア)
2025年5月16日
ルーマニアの2024年の新車登録台数は、前年比4.5%増の15万1,105台だった。
自動車生産台数は過去最多の56万102台を記録した。同国に生産拠点を有する米国フォードとトルコ財閥コチ・ホールディングの合弁会社のフォード・オトサンが生産を伸ばした。
トヨタと現代、新車登録台数を伸ばす
ルーマニアの自動車製造者協会(ACAROM)の発表(ルーマニア語)(2025年1月3日付)によると、同国内の2024年新車登録台数は前年比4.5%増の15万1,105台と好調だった。
新車登録台数をメーカー、またはブランド別にみると、首位はルノー傘下の国産メーカー、ダチアで、4万4,430台だった。次いでトヨタ1万2,818台、フォルクスワーゲン(VW)傘下のシュコダ1万612台、現代1万268台、ルノー1万252台と続く。トヨタ、現代、メルセデス・ベンツは前年から2桁台の伸びを示した一方で、欧州のメーカー・ブランドは横ばいの傾向が見られた(表1参照)。
順位 | メーカー | 台数 | シェア | 前年比 |
---|---|---|---|---|
1 | ダチア | 44,430 | 29.4 | △ 1.9 |
2 | トヨタ | 12,818 | 8.5 | 21.7 |
3 | シュコダ | 10,612 | 7 | 2.3 |
4 | 現代 | 10,268 | 6.8 | 16.2 |
5 | ルノー | 10,252 | 6.8 | △ 2.9 |
6 | フォルクスワーゲン | 9,623 | 6.4 | △ 1.4 |
7 | フォード | 6,493 | 4.3 | △ 1.4 |
8 | メルセデス・ベンツ | 5,430 | 3.6 | 15.8 |
9 | BMW | 4,895 | 3.2 | 6.2 |
10 | スズキ | 4,435 | 2.9 | △ 3.0 |
合計(その他含む) | 151,105 | 100 | 4.5 |
出所:ACAROMの資料を基にジェトロ作成
なお、ACAROMによると、2024年のEU全体の新車登録台数は前年比0.8%増の合計1,063万2,381台で、ルーマニアはEU内で新車登録台数14位だった。
自動車製造業者・輸入業者協会(APIA)の集計(ルーマニア語)によると、車種別の新車登録台数では、ダチアが「ロガン」(シェア10.1%)を筆頭に、「ダスター」(同9.3%)、「サンデロ」(同5.6%)、「ジョガー」(同2.8%)となり、トップ5車種中4車種を占めた。また、シュコダ「オクタビア」(同2.8%)の登録台数が前年比20.8%増となり、4位となった(表2参照)。
順位 | メーカー | モデル | 台数 | シェア | 前年比 |
---|---|---|---|---|---|
1 | ダチア | ロガン | 14,974 | 10.1 | 4.9 |
2 | ダチア | ダスター | 13,856 | 9.3 | 29.1 |
3 | ダチア | サンデロ | 8,274 | 5.6 | △16.4 |
4 | シュコダ | オクタビア | 4,225 | 2.8 | 20.8 |
5 | ダチア | ジョガー | 4,102 | 2.8 | △1.7 |
出所:APIAの資料を基にジェトロ作成
なお、内務省運転免許自動車登録所(DRPCIV)発表(ルーマニア語)のメーカー・ブランド別の統計によると、日系メーカー・ブランド全体の新車登録台数は前年比13.3%増の2万3,181台だった(表3参照)。トヨタ、スズキ、マツダのトップ3のうち、トヨタは前年比21.7%と増加したが、スズキ、マツダは前年から微減の結果となった。
メーカー | 2023年 | 2024年 | |
---|---|---|---|
台数 | 前年比 | ||
トヨタ | 10,531 | 12,818 | 21.7 |
スズキ | 4,572 | 4,435 | △3.0 |
マツダ | 2,770 | 2,682 | △3.2 |
日産 | 994 | 1,206 | 21.3 |
ホンダ | 802 | 1,099 | 37 |
三菱自動車 | 413 | 498 | 20.6 |
レクサス | 330 | 390 | 18.2 |
スバル | 50 | 53 | 6 |
合計 | 20,462 | 23,181 | 13.3 |
注:DRPCIVとACAROMは一部の車種で車両分類が異なるため、表1のデータと一致しない。
出所:DRPCIVの資料を基にジェトロ作成
BEVの登録減少、ハイブリッド車が好調
乗用車の新車登録台数の動力別の割合をみると、ガソリン車が61.1%(前年は60.1%)、ディーゼル車が13.8%(同11.7%)、エコカーが25.1%(同24.4%)だった。
エコカーの内訳として、バッテリー式電気自動車(BEV)が6.5%(同10.7%)、プラグインハイブリッド車(PHEV)が4.3%(同3.8%)、ハイブリッド車(HEV)が14.3%(同9.9%)だった(図1参照)。
BEVが前年比36.4%減の9,743台、PHEVが16.6%増の6,412台、HEVが50.4%増の2万1,178台となった(表4参照)。
BEVの登録台数が減少した理由としては、2024年版の新車買い替え促進補助金制度「ラブラ・プログラム(Programul Rabla)」で、BEVや燃料電池車(FCEV)を購入する際の補助金を前年の5万1,000レイ(約168万3,000円、1レウ=約33円、レイは通貨単位レウの複数形、5月2日ルーマニア国立銀行為替レート)から2万5,500レイに引き下げたことが原因と考えられている。

出所:APIAデータを基にジェトロ作成
BEVのメーカー・ブランド、および車種別の首位はダチアの「スプリング」で3,263台、テスラの「モデル3」が1,679台、テスラの「モデルY」が846台と続いた。PHEVはフォードの「クーガ」が首位で593台、トヨタの「RAV4」が500台、現代の「ツーソン」が483台と続いた。HEVはトヨタの「カローラ」が首位で3,281台、次いでトヨタの「RAV4」が2,361台、トヨタの「ヤリスクロス」が2,361台となり、前年に続いて上位3位をトヨタが占めた。
表4:メーカー・ブランド別エコカー新車登録台数(2024年)
メーカー | 2023年 | 2024年 | |
---|---|---|---|
台数 | 前年比 | ||
ダチア | 6,875 | 3,263 | △52.5 |
テスラ | 3,213 | 2,550 | △20.6 |
現代 | 549 | 599 | 9.1 |
フォルクスワーゲン | 1,421 | 436 | △69.3 |
ルノー | 945 | 434 | △54.1 |
合計(その他含む) | 15,315 | 9,743 | △36.4 |
メーカー | 2023年 | 2024年 | |
---|---|---|---|
台数 | 前年比 | ||
メルセデス・ベンツ | 970 | 1,262 | 30.1 |
BMW | 662 | 823 | 24.3 |
フォード | 750 | 623 | △16.9 |
トヨタ | 386 | 586 | 51.8 |
現代 | 422 | 567 | 34.4 |
合計(その他含む) | 5,497 | 6,412 | 16.6 |
メーカー | 2023年 | 2024年 | |
---|---|---|---|
台数 | 前年比 | ||
トヨタ | 8,535 | 11,003 | 28.9 |
ダチア | 320 | 1,792 | 460 |
ルノー | 1,442 | 1,744 | 22.6 |
現代 | 906 | 1,331 | 46.9 |
起亜 | 201 | 1,250 | 521.9 |
合計(その他含む) | 14,085 | 21,178 | 50.4 |
出所:APIAのデータを基にジェトロ作成
環境対応車への買い替え促す「ラブラ・プログラム」の実施遅れる
ルーマニア環境省が実施する新車買い替え促進補助金「ラブラ・プログラム」は、2025年も実施される予定だが、開始が例年より遅れ、5月以降にずれ込む見込みだ。遅れの背景として、環境・水・森林省が発表した変更に伴う法制度の見直しに加え、財務省からの予算承認が必要なことが挙げられる。
また、例年は春と秋でプログラムの予算を分けていたが、2025年は通年で予算が終わり次第、終了するかたちになる。同プログラムの草案は、環境・水・森林省の公式ウェブサイトで公開されている。
2025年版「ラブラ・プログラム」では、ルーマニアで最初に登録されてから8年以上経過している中古車を廃棄し、(1)自動二輪車を新規購入の場合、7,000レイ、(2)サーマル(内燃)またはハイブリッドシステム搭載の車両の新規購入の場合、1万レイ、(3)PHEVまたは電気バイクの新規購入の場合、1万3,000レイ、(4)BEVまたはFCEVの新規購入の場合、2万5,500レイの補助を受けられる。申込者は登録期間中、中古車の廃車引渡しと引き換えに、新車購入で補助を受けるためのエコラベルを受け取る。
例外として、公的機関や行政区域単位は、廃車のために中古車を引き渡す義務を負うことなく、登録期間中、最大10枚のエコラベルを受け取ることができる。
サーマル(内燃)、またはハイブリッドシステムを搭載した乗用車、小型バン、小型特殊バン、自動二輪車の購入時の条件としては、(1)1度も登録されていないもの、(2)購入価格が付加価値税込みで6万ユーロを超えないもの、(3)自動二輪車を除き、二酸化炭素(CO2)排出量が国際調和排出ガス・燃費試験法(WLTP)基準で、1キロ当たり145グラム以下のものが挙げられる。
PHEV、BEV、FCEV、小型バン、四輪車、自動二輪車の購入時の条件としては、(1)1度も登録されたことのないもの、(2)購入価格が付加価値税(VAT)込みで7万ユーロを超えないもの、(3)PHEVの場合、排出量がWLTP基準で、1キロ当たり80グラム未満であることが挙げられる。
ディーゼル車の購入は対象外となる。
中古車登録台数の増加
ACAROMによると、2024年の中古車登録台数は32万8,834台で、2023年の31万6,332台から3.95%増加した。2024年登録数の割合は、新車31.5%に対して、中古車は68.5%だった。
ルーマニアでは、登録される中古車の車齢が高い。2024年に登録された中古車では、3台に1台が車齢20年以上で、3台に2台が16年以上だった(図2参照)。

出所:DRPCIVの資料を基にジェトロ作成
フォード・オトサン生産台数は過去最多を記録
ACAROMの発表(ルーマニア語) (2025年1月17日付)によると、2024年の国産新車生産台数は前年比9.2%増の56万102台で、過去最多を記録した。当地での自動車生産は、ルノー・グループ傘下の地場自動車メーカーのダチアと、米国フォードとトルコ財閥コチ・ホールディングとの合弁会社のフォード・オトサンの2社体制だ。2024年は前者が3.9%減の30万9,432台、後者が31.3%増の25万670台の生産だった(表5参照)。
メーカー | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 2024年 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
台数 | 前年比 | ||||||
ダチア | 349,528 | 259,099 | 257,405 | 314,228 | 322,086 | 309,432 | △3.9 |
フォード | 140,884 | 179,008 | 163,350 | 195,237 | 190,964 | 250,670 | 31.3 |
合計 | 490,412 | 438,107 | 420,755 | 509,465 | 513,050 | 560,102 | 9.2 |
出所:ACAROMのデータを基にジェトロ作成
ダチアはミオベニ工場で生産している新型のスポーツ用多目的車(SUV)「ビッグスター」の受注を2025年1月に開始した。フォード・オトサンはクロスオーバーSUVの「プーマ」の新型電気自動車(EV)「プーマ Gen-E」を2024年12月に発表し、クライオバ工場で生産を行うことを決定した。

- 執筆者紹介
-
ジェトロ・ブカレスト事務所
本吉 美友(もとよし みゆ) - 2025年からジェトロ・ブカレスト事務所勤務。主に調査を担当。

- 執筆者紹介
-
ジェトロ・ブカレスト事務所
アリーナ・フタディエフ - 2023年からジェトロ・ブカレスト事務所勤務。プロジェクト担当および調査アシスタント。