GCC諸国を中心にアフリカへ連携強化(中東)
日系企業が進出する上でのパートナーにも
2025年4月11日
近年、中東とアフリカの関係性が深まっている。カギになっているのが、中東企業のアフリカ進出だ。その中でも湾岸協力会議(GCC)諸国の投資案件が目立ち、エネルギーやインフラなどの分野で存在感を強めている。例えば、アラブ首長国連邦(UAE)のテクノロジー企業のフェニックス・グループが2025年1月、データ7(同じくUAEのサイバーセキュリティー企業)と提携し、エチオピアで電力購入契約を締結した。フェニックス・グループはこの契約を、急成長するアフリカ市場への大規模な戦略的拡大と位置付けた。
アフリカは、「最後のフロンティア」として可能性を秘める。本稿ではそうしたアフリカに向けた中東企業の進出例を捉える。また、両地域の関係も踏まえ、今後の日系企業のアフリカ進出を考察する。
中東とアフリカの貿易額は近年、増加傾向
グローバル・トレード・アトラス(GTA)によると、2023年の中東からの対アフリカ輸出額は636億8,737万ドル。アフリカからの対中東輸入額は269億233万ドルだった。約10年前の2014年と比べると、輸出額が33.5%増、輸入額47.4%増になった。特に中東からアフリカへの輸出額は2022年、750億ドルを超えた。近年、中東からの輸出額が大きく伸びていることが分かる(図参照)。

注1:図1では、中東は次の15カ国・地域を含む: UAE、イエメン、イスラエル、イラク、イラン、オマーン、パレスチナ自治区ガザ地区、カタール、クウェート、サウジアラビア、シリア、トルコ、バーレーン、ヨルダン、レバノン。
注2:図1では、アフリカは次の40カ国・地域を含む:アルジェリア、ベナン、ブルキナファソ、ブルンジ、カメルーン、カーボヴェルデ、中央アフリカ共和国、コモロ、コンゴ共和国、コートジボワール、エジプト、エリトリア、エスワティニ、エチオピア、ガボン、ガンビア、ギニア、ギニアビサウ、ケニア、レソト、リビア、マダガスカル、マラウイ、マリ、モーリタニア、モロッコ、モザンビーク、ナミビア、ニジェール、ルワンダ、サントメ・プリンシペ、シエラレオネ、南アフリカ共和国、スーダン、タンザニア、トーゴ、チュニジア、ウガンダ、ザンビア、ジンバブエ。
出所:グローバル・トレード・アトラスからジェトロ作成
品目別にみると、中東からの対アフリカ輸出では、「鉱物性燃料など」が375億ドルと、全体の約6割を占め、「プラスチック」「原子炉・ボイラー」が続いた。
一方で、アフリカからの対中東輸入では、「貴石・貴金属など」が72億ドルで全体の約3割を占めて最多。続いて中東からの輸出と同じく「鉱物性燃料など」、さらに「食用果実など」が続いた。
湾岸協力会議(GCC)諸国を中心に産油国の多い中東地域、多種多様で豊富な天然資源を有するアフリカ地域、それぞれの特色を見て取れる(表1参照)。
表1:2023年の中東とアフリカの貿易額上位10品目 (単位:100万ドル、%)
順位 | 品目 | 金額 | 割合 |
---|---|---|---|
1位 |
鉱物性燃料および鉱物油ならびにこれらの蒸留物、 歴青物質ならびに鉱物性ろう |
37,513 | 58.9% |
2位 | プラスチックおよびその製品 | 4,718 | 7.4% |
3位 | 原子炉、ボイラーおよび機械類並びにこれらの部分品 | 1,838 | 2.9% |
4位 | 鉄鋼 | 1,751 | 2.7% |
5位 | 肥料 | 1,539 | 2.4% |
6位 | アルミニウムおよびその製品 | 1,232 | 1.9% |
7位 | 塩、硫黄、土石類、プラスター、石灰およびセメント | 1,154 | 1.8% |
8位 | 鉄鋼製品 | 969 | 1.5% |
9位 |
電気機器ならびその部分品ならびに録音機、 音声再生機ならびにテレビジョンの映像および音声の記録用または再生用の機器ならびにこれらの部分品 および附属品 |
922 | 1.4% |
10位 |
無機化学品及び貴金属、希土類金属、放射性元素 または同位元素の無機又は有機の化合物 |
864 | 1.4% |
順位 | 品目 | 金額 | 割合 |
---|---|---|---|
1位 |
天然又は養殖の真珠、貴石、半貴石、貴金属および 貴金属を張った金属ならびにこれらの製品、 身辺用模造細貨類ならびに貨幣 |
7,241 | 27.8% |
2位 |
鉱物性燃料および鉱物油ならびにこれらの蒸留物、 歴青物質ならびに鉱物性ろう |
2,925 | 11.2% |
3位 |
食用の果実およびナット、かんきつ類の果皮 ならびにメロンの皮 |
1,457 | 5.6% |
4位 |
電気機器およびその部分品ならびに録音機、 音声再生機ならびにテレビジョンの映像および音声の記録用または再生用の機器ならびにこれらの部分品 および附属品 |
1,244 | 4.8% |
5位 |
鉄道用および軌道用以外の車両ならびに その部分品ならび附属品 |
878 | 3.4% |
6位 | 鉄鋼 | 832 | 3.2% |
7位 | プラスチックおよびその製品 | 692 | 2.7% |
8位 | 肥料 | 684 | 2.6% |
9位 | コーヒー、茶、マテおよび香辛料 | 667 | 2.6% |
10位 | 食用の野菜、根および塊茎 | 635 | 2.4% |
注:中東、アフリカに含まれる国については図1と同様。
出所:グローバル・トレード・アトラスからジェトロ作成
また、対アフリカ輸出品目を中東各国別に見ると、UAEやサウジアラビア、カタールなどのGCC諸国やイスラエルで、「鉱物性燃料など」の構成比が高い。一方で、アフリカからの輸入で最多金額の品目は、UAEで「貴石・貴金属など」、サウジアラビア、トルコ、イスラエルで「鉱物性燃料など」、カタールで「肉」、イランで「コーヒーや茶、香辛料など」になっている。また、GCCの3カ国では、「食用果実など」が第2位の品目だった(表2参照)。
表2:2023年の中東主要国とアフリカの貿易額上位3品目 (単位:100万ドル、%)
国名 | 順位 | 品目 | 金額 | 割合 |
---|---|---|---|---|
アラブ首長国連邦(UAE) | 1位 |
鉱物性燃料および鉱物油ならびに これらの蒸留物、歴青物質 ならびに鉱物性ろう |
11,980 | 64.7% |
2位 | プラスチックおよびその製品 | 1,001 | 5.4% | |
3位 | 銅およびその製品 | 753 | 4.1% | |
サウジアラビア | 1位 |
鉱物性燃料および鉱物油ならびに これらの蒸留物、歴青物質 ならびに鉱物性ろう |
10,638 | 66.8% |
2位 | プラスチック及びその製品 | 2,723 | 17.1% | |
3位 | 肥料 | 462 | 2.9% | |
カタール | 1位 |
鉱物性燃料および鉱物油ならびに これらの蒸留物、歴青物質 ならびに鉱物性ろう |
325 | 30.5% |
2位 | プラスチックおよびその製品 | 183 | 17.2% | |
3位 | 肥料 | 161 | 15.1% | |
トルコ | 1位 |
原子炉、ボイラーおよび機械類 ならびにこれらの部分品 |
1,148 | 10.7% |
2位 | 鉄鋼 | 1,104 | 10.2% | |
3位 |
鉱物性燃料および鉱物油ならびに これらの蒸留物、歴青物質 ならびに鉱物性ろう |
879 | 8.2% | |
イスラエル | 1位 |
鉱物性燃料および鉱物油ならびに これらの蒸留物、歴青物質 ならびに鉱物性ろう |
2,162 | 78.7% |
2位 |
電気機器およびその部分品ならびに録音機、音声再生機ならびにテレビジョンの映像および音声の記録用 または再生用の機器ならびに これらの部分品および附属品 |
102 | 3.7% | |
3位 |
原子炉、ボイラーおよび機械類 ならびにこれらの部分品 |
87 | 3.2% | |
イラン | 1位 |
鉱物性燃料および鉱物油ならびに これらの蒸留物、歴青物質 ならびに鉱物性ろう |
30 | 53.6% |
2位 | 食用の果実ならびナット、かんきつ類の果皮ならびにメロンの皮 | 5.1 | 9.1% | |
3位 | 穀物、穀粉、でん粉またはミルクの調製品およびベーカリー製品 | 4.9 | 8.8% |
国名 | 順位 | 品目 | 金額 | 割合 |
---|---|---|---|---|
アラブ首長国連邦(UAE) | 1位 | 天然または養殖の真珠、貴石、半貴石、貴金属および貴金属を張った金属ならびにこれらの製品、身辺用模造細貨類ならびに貨幣 | 6,996 | 63.7% |
2位 | 食用の果実およびナット、かんきつ類の果皮並ならびにメロンの皮 | 539 | 4.9% | |
3位 |
電気機器およびその部分品ならびに録音機、音声再生機ならびにテレビジョンの映像および音声の記録用 または再生用の機器ならびに これらの部分品および附属品 |
479 | 4.4% | |
サウジアラビア | 1位 |
鉱物性燃料および鉱物油ならびに これらの蒸留物、歴青物質 ならびに鉱物性ろう |
376 | 9.9% |
2位 | 食用の果実およびナット、かんきつ類の果皮ならびにメロンの皮 | 341 | 9.0% | |
3位 | 銅およびその製品 | 275 | 7.2% | |
カタール | 1位 | 肉および食用のくず肉 | 51 | 21.1% |
2位 | 食用の果実ならびナット、かんきつ類の果皮ならびにメロンの皮 | 46 | 19.0% | |
3位 |
無機化学品および貴金属、 希土類金属、放射性元素または 同位元素の無機または有機の化合物 |
15 | 6.2% | |
トルコ | 1位 |
鉱物性燃料および鉱物油ならびに これらの蒸留物、歴青物質 ならびに鉱物性ろう |
981 | 15.5% |
2位 | 肥料 | 548 | 8.7% | |
3位 |
鉄道用および軌道用以外の車両 ならびにその部分品および附属品 |
547 | 8.7% | |
イスラエル | 1位 |
鉱物性燃料および鉱物油ならびに これらの蒸留物、歴青物質 ならびに鉱物性ろう |
792 | 59.9% |
2位 |
採油用の種および果実、各種の種 および果実、工業用または医薬用の植物ならびにわらおよび飼料用植物 |
91 | 6.9% | |
3位 | 天然または養殖の真珠、貴石、半貴石、貴金属および貴金属を張った金属ならびにこれらの製品、身辺用模造細貨類ならびに貨幣 | 84 | 6.4% | |
イラン | 1位 | コーヒー、茶、マテおよび香辛料 | 46 | 66.7% |
2位 |
鉱物性燃料および鉱物油ならびに これらの蒸留物、歴青物質 ならびに鉱物性ろう |
12 | 17.4% | |
3位 | 肉および食用のくず肉 | 2.5 | 3.6% |
注:アフリカに含まれる国については図1と同様。
出所:グローバル・トレード・アトラスからジェトロ作成
GCC諸国のアフリカ進出
近年、中東地域の中でも特にGCC諸国がアフリカへの進出・投資を活発化させている。GCC諸国とアフリカの関係では、例えば2024年の国際移住機関(IOM)とアフリカ連合委員会の「アフリカ移住報告書」では、エジプトやスーダンなどのアフリカのアラブ語圏からの湾岸諸国への移住が多いことが報告されている。また、移民だけではなく、2024年10月にUAEのエミレーツ航空がネットワーク拠点と投資の拡大の面からウガンダ、エチオピア、南アフリカ共和国への増便や、同じくUAEのエティハド航空が同年12月にケニアへの新規路線就航を発表しており、観光も含めた人の往来が今後さらに活発化すると見込まれる。
そうした中、世界経済フォーラム(WEF)は2024年4月、「アフリカと湾岸諸国の間に新たな経済関係が生まれる」と題し、報告を発表した。 WEFの報告によるとGCC諸国の企業は2023年に、アフリカで73件、530億ドル以上の直接投資プロジェクトを発表した。2023年までの10年間で、アフリカに1,000億ドル以上も投資を行い、そのうちUAE が600億ドル近くを占め、これに、サウジアラビア(256億ドル)、カタール(72億ドル)が続く。
WEFは同期間の対アフリカ投資で、UAEは中国、EU、米国に次ぐ第4位だったことを強調した。
WEFによるとGCCとアフリカの経済パートナーシップは、食糧安全保障、エネルギー転換、インフラ開発などの重要な問題への取り組みに重点を置いており、具体的には、次のような投資事例がある。
年 | 中東企業(国名) | アフリカ | 事例 |
---|---|---|---|
2019年 |
カタール航空 (カタール) |
ルワンダ | ルワンダ政府から、新空港(建設中)の株式60%を取得。 |
2021年 |
DPワールド (UAE) |
コンゴ民主共和国 | コンゴ民主共和国政府と、バナナ深海港開発に関して協力協定を締結。 |
2022年 |
エア・アラビア (UAE) |
スーダン | コングロマリット企業DALグループと合弁で、LCC「エア・アラビア・スーダン」を立ち上げ。 |
2022年 |
マスダール (UAE) |
エジプト | インフィニティー(エジプトの再エネ・デベロッパー)およびハッサン・アラム・ユーティリティーズ(エジプトの大手財閥)と、合弁で陸上風力発電所をエジプトに建設。 |
2023年 |
アメア・パワー (UAE) |
コートジボワール | コートジボワール政府と太陽光発電所を建設する契約を締結。 |
2023年 |
DPワールド (UAE) |
タンザニア | タンザニアのダルエスサラーム港の一部を改修・運営する30年契約を締結。 |
2023年 |
アメア・パワー (UAE) |
エチオピア | MoFエチオピアと風力発電所建設計画に関する協定に署名。 |
2023年 |
アクア・パワー (サウジアラビア) |
南アフリカ共和国 | 南アフリカ最大の再エネプロジェクトに伴う電力購入契約を締結。 |
2024年 |
ADQ (UAE) |
エジプト | エジプト政府と、リゾートや商業、住宅、教育機関などに向けて総合開発のための対内直接投資(FDI)案件に調印。 |
2024年 |
アメア・パワー (UAE) |
ウガンダ | 西ナイル地域初の太陽光発電プロジェクトの着工を発表。 |
2024年 |
バラドナ (カタール) |
アルジェリア | アルジェリア農業・農村開発省と、酪農一貫生産プロジェクト(粉ミルク製造)に関し枠組み協定に署名。 |
2024年 |
アクア・パワー (サウジアラビア) |
チュニジア | チュニジアでのグリーン水素開発で覚書締結。 |
2024年 |
IHC (UAE) |
ザンビア | ザンビアのモパニ銅山の株式51%を取得。 |
2024年 |
カタール・エナジー (カタール) |
ナミビア | ナミビア沖の油田の権益を獲得。 |
2025年 |
フェニックス・グループ (UAE) |
エチオピア | データ7(UAEのサイバーセキュリティー企業)と提携し、電力購入契約を締結。 |
2025年 |
TAQA (UAE) |
モロッコ | 大規模なグリーン水素プロジェクトを受注。 |
出所:各種報道からジェトロ作成
国単位で見ても、例えばサウジアラビアが2023年11月にアフリカ諸国と初めて首脳会談を開催し、再生可能エネルギーや食糧安全保障など幅広い分野の協力枠組みの発表や、金融や鉱業、農業など多くの分野で50以上の協定やMOUを締結した。また、同国は2024年1月にエジプト、モロッコ、コンゴ民主共和国と鉱物資源協力に関するMOUを締結した。他にも、同年同月には、モロッコがUAE、ヨルダン、バーレーン、エジプトと産業統合連携に参加するMOUに調印し、食糧やエネルギー、工業などといった経済の重要分野での連携を進めている。貿易関係を見ても、ケニアの2023年の輸入額の上位2番目がUAE、4番目がサウジアラビアに、南アフリカ共和国でも同様に5番目がUAE、7番目がサウジアラビアになるなど、結びつきも強い。 直近では、2025年1月にUAEがケニアとの包括的経済連携協定(CEPA)に署名した。アフリカではモーリシャスに次ぐ2カ国目である。
GCC以外の中東諸国のアフリカとの連携
GCC諸国以外の中東各国もアフリカに進出し、連携している。
トルコ
2021年にアフリカとビジネスフォーラムを、その翌年にはパートナーシップ・サミットを、それぞれイスタンブールで開催。アフリカ連合(AU)の諸機構や参加国などと協力を強めている。
特に、2013年以降関係が冷え込んでいたエジプトとの関係改善が進展してきたことは大きい。2007年ごろから、繊維・衣料品産業を中心にエジプトの資格産業区域(QIZ)への進出例が出てきた。その後も投資が進展。トルコの対エジプト直接投資額は2023年、前年比4.3倍に及んだ。また同年、エジプトにとってトルコは最大の輸出先になった。2024年2月には、(1)トルコ製ドローンなどについて技術提供する案件が発表されたほか、(2)トルコ国営パイプライン輸送会社(BOTAŞ)とエジプトガス公社(EGAS)が関係強化で合意した。さらに同年9月には、ベコ(Beko、家電大手)がエジプトの工業団地開設に1億1,000万ドルを投資。エジプト進出を果たした。
なお、ガーナとコートジボワールでは2023年、トルコが投資金額で第2位に付けている。

イスラエル
2021年、19年ぶりにAUにオブザーバー参加を果たした。それを契機に、アフリカ諸国との協力関係促進を図っている。
2023年には、モロッコ(2020年に国交正常化)と輸送協定3件に署名した。また、労働者の受け入れ、観光促進、医療協力などで合意。課題ごとに関係強化が進んでいる。
イラン
同2023年、当時の大統領がケニア、ウガンダ、ジンバブエを訪問。エネルギーや農業など、の協力文書計21件に署名した。
2024年4月にテヘランで開催した展示会では、アフリカから経済関係者の来訪が目立った。
中東のアフリカ進出からみる日系企業の進出
ここまで、中東諸国・企業のアフリカとの連携・進出例を見てきた。中東から多岐にわたる分野で連携・進出が進んでいることが分かる。GCC諸国を中心に中東は、経済の多様化や脱炭素化に向けた投資に積極的だ。人口の増加傾向に伴い、電力や港湾などのインフラ・エネルギー・食糧の需要が引き続き大きいアフリカの実態を捉え動いている。また、中東諸国・企業は、重要鉱物を有する資源国が多いアフリカでの権益獲得も進め、アフリカでの存在感をさらに高めている。
電気自動車(EV)や半導体など、今後需要が高まることを踏まえると、中東だけでなく世界各国が、アフリカへの進出をさらに拡大すると予測できる。実際、中国は2024年、今後3年間で約500億ドルの投融資を発表した。
日本も、アフリカとの経済協働や連携に向け、動いている。2025年8月には横浜で第9回アフリカ開発会議(TICAD9、注)も開催予定である。こうした機会を通じ、日系企業のさらなるアフリカ進出に期待が高まる(2024年12月4日付地域・分析レポート参照)。
一方、新興市場として注目されるアフリカへの日系企業の参入に当たっては障壁も多い。その対策として、中東企業をパートナーにすることも進出の選択肢の1つになりうる。ジェトロの「2024年度進出日系企業実態調査(アフリカ編)」(2024年12月に発表)では日系企業を対象に、アフリカに進出する上でパートナーになりうる第三国企業について尋ねた。この設問で、第4位だった国がUAE、第8位がトルコだった。
既に具体事例もある。例えば、住友商事はUAEのアメア・パワーと共同して、エジプトで陸上風力発電事業を進めている。現地で連携するだけではない。例えばUAEはアフリカ進出を見据える際、中東は営業・物流拠点として、あるいは展示会やイベントなどで顧客開拓する上で、優位性を持ちうる。
アフリカ大陸には、54カ国ある。進出国・地域、商材によって、進出の仕方、連携国・企業が変わってくる。その点、中東は地理的にアフリカに近く、豊富な資金力を有する国が多い。既に多くの先行例を擁する中東諸国・企業は、今後、日系企業がアフリカ進出を果たす上で、重要なキープレイヤーの1つになるはずだ。
- 注:
- TICADとは、アフリカ開発会議(Tokyo International Conference on African Development)のこと。1993年から日本主導で、国連や世界銀行などと共同開催している。アフリカの開発や経済をテーマにしたフォーラムの先駆けといわれる。

- 執筆者紹介
-
ジェトロ調査部中東アフリカ課
加藤 皓人(かとう あきと) - 2024年2月、都市銀行から経験者採用で入構し、現職。