2024年のイランの自動車生産台数は前年比1.1%減

2025年8月13日

イランの2024年の自動車生産は前年比で1.1%減少した。一方、国内では電気自動車(EV)の充電インフラを中心にEVの普及が進む。本稿では、イランの自動車業界について概説する。

自動車生産台数は微減、車体と部品の輸入は大幅減少

国際自動車工業連合会(OICA)によると、2024年のイランの自動車生産台数は107万7,839台と前年比1.1%減になった(図参照)。乗用車が97万7,776台(2023年:98万8,652台)、バスなどが1,219台(1,233台)となった(表1参照)。

図:イランの自動車生産台数推移(2016~2024年)
イランの2024年の自動車生産台数は107万7,839台と前年比1.1%減となった。

出所:国際自動車工業連合会(OICA)の統計を基にジェトロ作成

表1:イランの自動車生産台数 (単位:台数、%)(△はマイナス値)
項目 乗用車 小型商業車 トラック バスなど 合計
2019 770,000 40,800 9,600 660 821,060
2020 826,210 43,778 10,301 708 880,997
2021 838,251 44,785 10,538 724 894,298
2022 997,519 53,295 12,540 862 1,064,216
2023 988,652 83,139 16,803 1,233 1,089,827
2024 977,776 82,225 16,619 1,219 1,077,839
増減(台数)
2024/2023年
△ 10,876 △ 914 △ 184 △ 14 △ 11,988
増減(%)
2024/2023年
△ 1.1 △ 1.1 △ 1.1 △ 1.1 △ 1.1

出所:OICAの統計を基にジェトロ作成

イラン自動車製造者協会(IVMA)などの現地の業界団体は、2024年のイランの自動車生産および販売についての統計を公表していないものの、証券市場の透明性や公正性の確保のための監視を担当し、また各種統計レポートを発行する政府機関Codalが、国内の主要3社(イランホドロ、パールスホドロ、サイパ)の生産・販売統計を発表している。

Codalによると、主要3社のイラン暦1403年(2024年3月20日~2025年3月20日)の乗用車の生産台数、販売総額はそれぞれ、イランホドロが53万7,429台(前年比0.3%増)、2,508兆7,783億リアル〔約3,763億円、1万リアル=約1.5円(注)〕、パールスホドロが10万3,227台(1.3%増)、302兆5,380億リアル、サイパが34万834台(1.5%減)、1,081兆9,907億リアルとなり、イランホドロとパールスホドロで乗用車の生産台数がわずかに増加した(表2参照)。

表2:イラン主要3社の生産・販売台数 (単位:台数、100万リアル)(△はマイナス値)

イランホドロ
項目 1399年
(2020/3/20~2021/3/20)
1400年
(2021/3/21~2022/3/20)
1401年
(2022/3/21~2023/3/20)
1402年
(2023/3/21~2024/3/19)
1403年
(2024/3/20~2025/3/20)
増減(1403/1402年)
生産台数 480,338 450,770 583,230 535,636 537,429 1,793
販売台数 464,646 451,560 607,004 537,600 538,232 632
販売額 440,035,436 721,833,220 1,351,895,726 1,766,350,001 2,508,778,327 742,428,326
パールスホドロ
項目 1399年
(2020/3/20~2021/3/20)
1400年
(2021/3/21~2022/3/20)
1401年
(2022/3/21~2023/3/20)
1402年
(2023/3/21~2024/3/19)
1403年
(2024/3/20~2025/3/20)
増減(1403/1402年)
生産台数 103,055 85,158 131,895 101,895 103,227 1,332
販売台数 89,539 91,360 137,721 101,558 98,295 △ 3,263
販売額 38,240,147 73,508,742 217,039,032 225,810,487 302,537,968 76,727,481
サイパ
項目 1399年
(2020/3/20~2021/3/20)
1400年
(2021/3/21~2022/3/20)
1401年
(2022/3/21~2023/3/20)
1402年
(2023/3/21~2024/3/19)
1403年
(2024/3/20~2025/3/20)
増減(1403/1402年)
生産台数 316,959 304,533 349,447 345,946 340,834 △ 5,112
販売台数 296,278 310,198 386,855 346,732 326,376 △ 20,356
販売額 162,100,813 329,446,911 594,910,303 857,941,135 1,081,990,727 224,049,592

出所:Codalの発表を基にジェトロ作成

ブランド別にみると、イラン暦1403年に生産台数が最も多かったのがサイパの「X200グループ」で20万8,098台(販売台数19万9,101台、販売総額562兆3,500億リアル)、次にイランホドロの「Peugeot」で16万9,335台(16万9,671台、704兆3,800億リアル)、3位がイランホドロの「Samand」で13万6,006台(13万5,708台、540兆3,500億リアル)となっている(表3~5参照)。

表3:イランホドロのブランド別生産・販売数 (単位:台数)(△はマイナス値、-は値なし)
ブランド 1402年(2023/3/19~2024/3/20) 1403年(2024/3/20~2025/3/20) 生産台数増減
(1403/1402年)
生産台数 販売台数 価格
(リアル)
販売総額
(100万リアル)
生産台数 販売台数 価格
(リアル)
販売総額
(100万リアル)
Peugeot 268,992 275,059 2,693,546,534 740,884,216 169,335 169,671 4,151,451,250 704,380,885 △ 99,657
DENA 86,694 86,582 3,763,451,098 325,847,123 91,921 91,935 5,440,611,138 500,182,585 5,227
Samand 62,828 62,295 2,935,782,230 182,884,554 136,006 135,708 3,981,736,596 540,353,510 73,718
RUNNA 24,056 24,035 2,417,473,227 58,103,969 15,861 15,861 3,507,106,677 55,626,219 △ 8,195
Pick up
HAIMA 22,810 22,626 9,240,108,857 209,066,703 16,475 16,391 10,311,819,962 169,021,041 △ 6,335
Peugeot 2008
TARA 49,751 49,832 3,928,411,583 195,760,606 71,667 71,877 5,350,698,165 384,592,132 21,916
Dong -Feng
Suzuki Vitara
TONDAR L90
その他 20,505 17,171 3,133,354,493 53,802,830 36,164 36,789 4,202,939,873 154,621,955 15,659
合計 535,636 537,600 1,766,350,001 537,429 538,232 2,508,778,327 1,793

出所:Codalの発表を基にジェトロ作成

表4:パールスホドロのブランド別生産・販売数 (単位:台数)(△はマイナス値、-は値なし)
ブランド 1402年(2023/3/19~2024/3/20) 1403年(2024/3/20~2025/3/20) 生産台数増減
(1403/1402年)
生産台数 販売台数 価格
(リアル)
販売総額
(100万リアル)
生産台数 販売台数 価格
(リアル)
販売総額
(100万リアル)
Quick 200 78,279 78,497 2,275,788,705 178,642,586 68,345 63,145 2,933,999,446 185,267,395 △ 9,934
PRIDE X100
Quick 21,916 21,915 1,967,403,696 43,115,652 1,234 1,234 2,479,679,903 3,059,925 △ 20,682
SAINA S200 19,517 19,517 2,831,151,663 55,255,587 19,517
Renault
Brilliance
Sahand 53 0 0 0 14,131 13,891 3,895,747,534 54,115,829 14,708
ZOTYE T300 DL5 0 426 8,856,044,601 3,772,675 0 508 9,526,047,244 4,839,232 0
Van
合計 100,248 100,838 13,099,237,002 225,530,913 103,227 98,295 21,666,625,790 302,537,968 2,979

注:「Quick」には、Quick S、Quick Gear、Quick Automaticが含まれている。
出所:Codalの発表を基にジェトロ作成

表5:サイパのブランド別生産・販売数 (単位:台数)(△はマイナス値、-は値なし)
ブランド 1402年(2023/3/19~2024/3/20) 1403年(2024/3/20~2025/3/20) 生産台数増減
(1403/1402年)
生産台数 販売台数 価格
(リアル)
販売総額
(100万リアル)
生産台数 販売台数 価格
(リアル)
販売総額
(100万リアル)
X200 Group 232,777 233,383 2,248,024,959 524,650,809 208,098 199,101 2,824,450,987 562,351,016 △ 24,679
X100 Group
SAIPA
Pride151 59,999 60,713 2,082,100,539 126,410,570 71,813 70,224 2,651,248,519 186,181,276 11,814
SHAHIN 50,817 50,699 3,664,877,572 185,805,628 48,842 46,463 4,554,003,271 211,592,654 △ 1,975
ARIO 0 0 0
Changan CS 35 0 0 0 11,739 10,452 11,435,049,177 119,519,134 11,739
CERATO 0 0 0
Aria 19 0 0 31 0 0 12
その他 2,334 1,937 10,879,776,975 21,074,128
合計 345,946 346,732 18,874,780,045 857,941,135 340,523 326,240 21,464,751,954 1,079,644,080 △ 5,112

出所:Codalの発表を基にジェトロ作成

貿易統計データベースのグローバル・トレード・アトラスで輸入元国をみると、2024年の自動車の車体(HSコード8707)および部品(HSコード8708)の輸入額の合計は、13億8,100万ドルと前年比40.1%減になった。2024年は前年と変わり、生産台数の減少率(前年比1.1%減)と比して、部品輸入の減少率の方が大きい状態となっている。なお、自動車の車体、部品ともに、中国からの輸入が前年と同じく圧倒的な割合を占めている。

充電設備を中心にEVの普及も進む

アターベク産業・鉱業・貿易相は2024年7月、同年末までにイラン国内の3,000カ所にEV用の充電ポイントを設置すると発表した。同相は「イランはEV製造に移行する必要がある。現在、国内で消費されている1億2,000万リットルのガソリンのうち700万リットルを輸入している。そのため、EVの製造は現在のガソリン需給の不均衡の解決策になる」と述べた(2024年7月9日付「テヘランタイムズ」)。

また、イスラーム共和国通信(IRNA)は、イラン石油省が経済評議会の決議に基づき、EVインフラの整備に着手した、と報じた。イラン国営石油精製配給会社(NIORDC:National Iranian Oil Refining Distribution Company)のモハマド・サーデク・アジミーファール最高経営責任者(CEO)は、国内で新設されるガソリンスタンドに少なくとも1基のシングルノズル式電気充電スタンドを設置することを条件とした。これにより、新規のスタンドにはEV向けのインフラ整備が必須となり、既存のスタンドについても、EV充電設備の導入が進められる見通しである〔2025年4月18日付イスラーム共和国通信(IRNA)(ペルシア語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます〕。

さらに、イランで70以上の子会社を持つ、複合産業企業であるMAPNAグループの子会社の1つであるMAPNA-MECO(Mapna Electric & Control, Engineering & Manufacturing Company)の充電ステーション研究設計部門責任者は、EV分野におけるイランの政策は2017年末から2018年初頭にかけて変化したとし、「2024年にガソリンの需給の不均衡を解消する解決策としてEVが提案され、国はEVを輸入することを決定した」と述べた。さらに、同責任者は「現在EVは国内に1万2,000台存在する」とし、「テヘラン市内の5カ所のEV対応のガソリンスタンドで、毎月供給電力を増やしていく」と述べた。同市内にはAC充電器が設置されたスタンドが12カ所、駐車場は5カ所あるという。同責任者は、今後、国内の全てのガソリンスタンドにEV充電器の設置が必要だという〔2025年5月10日付石油省通信(ペルシア語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます〕。


注:
イラン暦1403年末(西暦2025年3月12日)の市中レートで計算(出所:Bonbast)。
執筆者紹介
ジェトロ・テヘラン事務所
マティン・バリネジャド
2018年からジェトロ・テヘラン事務所勤務。ビジネス短信や各種調査、展示会などを担当。