2021年は輸出入とも増加、赤字額は拡大（フランス）

フランスの2021年の貿易（通関ベース）は、新型コロナウイルス感染症の影響が和らぐ中、輸出入の双方で増加に転じた。貿易赤字はエネルギー価格の高騰を背景に前年から拡大した。対日貿易も輸出入で増加した。輸出は航空機・宇宙飛行体が前年から倍増した。

貿易赤字が拡大、航空機輸出の回復に遅れ

フランスの2021年の貿易は、輸出が前年比15.3％増の4,816億800万ユーロ、輸入は同19.0％増の5,942億6,700万ユーロと輸出入の双方で増加した。貿易収支は1,126億5,900万ユーロの赤字となり、輸出以上に輸入の増加幅が大きかったため、貿易赤字は前年から309億8,000万ユーロ拡大した。

航空機・宇宙飛行体、飲料・アルコール・食酢、精油・調整香料・化粧品類、穀物などの品目で黒字額が前年から増加した。最大黒字品目の航空機・宇宙飛行体の黒字額は165億6,700万ユーロと前年を16.7％上回ったが、新型コロナ危機以前（以下、「2019年」）の水準には届かなかった。医療用品の黒字額はワクチンの輸入増加を受けて前年からの縮小が続いた。最大の赤字品目である鉱物性燃料は、原油価格の高騰を背景に赤字額が450億3,300万ユーロと、前年から189億1,000万ユーロ拡大した。

輸出を品目別にみると（表1参照）、上位3品目（原子炉・ボイラー・機械類、自動車、電気機器）はそれぞれ前年比10％以上増加した。航空機・宇宙飛行体（構成比5.4％）は2.2％増と小幅な増加にとどまった。エアバス航空機は177億9,600万ユーロ（引き渡し機数225機）と、前年（160億8,900万ユーロ、190機）を上回ったが、2019年の6割弱の水準にとどまった。エアバス航空機の輸出は、アジア向けは85億2,300万ユーロと前年を約32億7,900万ユーロ上回ったが、欧州、米州、アフリカで縮小した。プラスチック（4.5％）、飲料・アルコール類・食酢（3.9％）、精油・調整香料・化粧品類(3.9％)はいずれも20％前後の伸び率で大きく持ち直し、2019年の水準を上回った。前年急増した医療用品は前年並みの水準を維持した。

注：EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
出所：フランス税関

国・地域別では（表2参照）、輸出全体の55.0％を占めるEUが前年比17.7％増と増加に転じた。最大輸出相手国のドイツ（構成比14.3％）が12.7％増となったほか、主要相手国のイタリア（8.1％）、ベルギー（7.7％）がそれぞれ20.9％増、19.9％増の大幅増を示した。

英国（5.9％）は新型コロナ関連規制の強化と英国のEU離脱（ブレグジット）に伴う2020年12月末の移行期間終了をめぐる混乱の影響で2021年1月に急縮したが、2月以降は緩やかに回復し、通年で5.0％増の伸びとなった〔2022年2月に政府が発表した報告書（フランス語）〕。同国は前年に続き最大貿易黒字相手国だった。EU域外で最大輸出相手国の米国（7.3％）は7.6％増と持ち直したが、2019年の水準には届かなかった。中国（6.0％）は28.5％増の伸びを示し、2019年の水準を上回った。

注1：アジア大洋州はASEAN+6（日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド）に台湾を加えた合計値。
湾岸協力会議（GCC）は、アラブ首長国連邦（UAE）、バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビアの6カ国の合計値。
北米は米国、カナダ、メキシコの3カ国の合計値。このため、中南米にメキシコは含まず。
注2：軍需品は除く。
注3：EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
出所：フランス税関

原油価格の上昇を受け鉱物性燃料の輸入が大幅増

輸入を品目別にみると（表1参照）、国内需要の回復を背景に、大半の主要輸入品目で増加した。最大輸入品目の原子炉・ボイラー・機械類（構成比12.0％）は前年比13.9％増だった。これに続く自動車（10.8％）は11.7％増で、特に自動車部品の輸入が138億1,700万ユーロと22.1％増となった。

鉱物性燃料（10.3％）は78.1％増となった。石油が48.8％増、石油ガスが2.4倍、原油が62.5％増の大幅増となったが、これはエネルギー価格上昇が輸入額を押し上げたもので、輸入量をみると、石油は1.4％増の3,666万トン、石油ガスは8.7％増の318万トン、原油は4.1％増の3,588万トンと、伸び率は比較的小幅にとどまった。

原材料価格の高騰に伴い、プラスチック（4.2％）が26.9％増、鉄鋼（2.2％）が51.7％増、鉄鋼製品（2.0％）が32.7％増、ゴム（1.2％）が27.7％増、アルミニウム（1.2％）が35.4％増と軒並み急増した。

医療用品（4.8％）は新型コロナワクチンを軸に14.0％増と前年から伸びを強めた。ただし、マスクの輸入は政府支援により国内生産能力を拡大した結果、前年から88％減少した。政府によると、マスクの国内生産能力は新型コロナ危機前の週当たり400万枚から2021年に1億枚超まで拡大した。

国・地域別にみると（表2参照）、主要国・地域からの輸入は軒並み増加した。全体の54.8％を占めるEUが前年比18.3％増となった。アジア大洋州（構成比18.4％）が15.6％増となった。フランス国内の消費回復に伴い、同地域からのコンピューターおよび周辺機器、スポーツ用品、ゲーム・玩具、家具、家電製品のほか、新型コロナウイルス感染症に対応する医薬品や医療機器の輸入が2019年から2021年の間に増加した。中国（香港を含む、10.8％）は12.9％増と前年から伸びが加速した。

鉱物性燃料を主力とするロシア（1.7％）、中東（1.4％）からの輸入は、それぞれ76.7％増、51.6％増の大幅増を記録した。

対日貿易は輸出入ともに増加、医薬品輸入は2年連続で大幅増

2021年の対日貿易（表3参照）は、輸出が前年比14.6％増の65億800万ユーロ、輸入は11.2％増の93億8,400万ユーロとなった。対日貿易赤字は28億7,600万ユーロと、前年から約1億1,700万ユーロ拡大した。フランスの貿易全体に占める日本の構成比は、輸出は1.4％、輸入が1.6％で、輸出は前年から横並び、輸入は0.1ポイント減少した。

対日輸出は最大品目の航空機・宇宙飛行体（構成比23.1％）が15億300万ユーロと前年から倍増した。飲料・アルコール・食酢（10.2％）は7.8％増と増加に転じたが、医薬品（6.1％）、革製品・旅行用具・ハンドバッグ（4.6％）、自動車（3.5％）、電気機器（3.4％）などは減少が続いた。

日本からの輸入は原子炉・ボイラー・機械類（構成比25.2％）、自動車（23.0％）、電気機器（14.7％）、光学機器・写真用機器・映画用機器（6.4％）、医薬品（5.0％）の上位5品目が全体の74.3％を占めた。原子炉・ボイラー・機械類が13.1％増、自動車が5.4％増、電気機器が19.9％増といずれもプラスに転じた。医薬品は49.9％増と前年に続き大幅な伸びを示した。

出所：フランス税関