【コラム】健全な発展を目指す中国のワイン市場

2021年1月28日

世界全体のワイン市場は供給過剰状態にあり、競争が激しい。その中にあって、中国は消費量で世界5位を占める。もっとも、1人当たり消費量となると上位20位にも入っていない。すなわち、中国は規模が大きく、今後も発展の余地が大きいワイン市場と言える。 ただし、中国では過去3年間、輸入もの、国産ともワインの販売量が減少している(図参照)。その需要拡大に向けて、不正行為を排除し健全な発展を目指す動きも見られるようになった。本稿では、そうした市場の今を報告する。

図:国産ワイン、輸入ワインの市場規模およびシェアの推移
国産ワイン生産量は2012年が13.82億リットル、2013年が11.78億リットル、2014年が11.61億リットル、2015年が11.48億リットル、2016年が11.376億リットル、2017年が10.01億リットル、2018年が6.29億リットル、2019年が4.51億リットル。 輸入ワイン輸入量は2012年が3.943億リットル、2013年が3.767億リットル、2014年が3.841億リットル、2015年が5.553億リットル、2016年が6.381億リットル、2017年が7.494億リットル、2018年が7.165億リットル、2019年が6.623億リットル。 国産ワインシェアは2012年が78%、2013年が76%、2014年が75%、2015年が67%、2016年が64%、2017年が57%、2018年が47%、2019年が41%。 輸入ワインシェアは2012年が22%、2013年が24%、2014年が25%、2015年が33%、2016年が36%、2017年が43%、2018年が53%、2019年が59%。

出所:国家統計局、中国税関のデータを基にジェトロ作成

市場の6割を占める輸入ワイン

中国のワインの輸入量は、2012年から2017年まで増加傾向にあった。2019年の統計では、輸入ワインのシェアは国産を超え、59%を占めた。

輸入ワインが急速に中国で伸びた背景には、以下の3点があげられる。

  • 2013年、公費による飲食など接待交際費の支出が抑制された。この結果、高級ワインの売れ行きが悪くなった。
  • 自由貿易協定(FTA)の影響などで、関税の引き下げ、撤廃が進んだ。それに対応して、ニュージーランド、チリ、オーストラリアなどから中低価格帯のワインが大量に輸入されるようになった。
  • 赤ワインだけでなく、白ワイン、ロゼワイン、アイスワイン、スパークリングワイン、シャンパンなど輸入されるワインの品種が豊富になった。

現在、フランス、イタリア、ドイツなど欧州地域のほか、米国、チリ、アルゼンチン、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ共和国などから、ワインが輸入されている。並行して、産地・品種ごとの特徴を備えた多種多様なブランドで売れ筋が形成されてきた(表1参照)。価格が下がり、品種とブランドが多くなったことで、輸入ワインが人気を集め、次第に、国産ワインの市場シェアを奪っていったことが分かる。

表1:主な中国のワイン輸入元・主要ブランド
順位 輸入元 輸入金額に
占める
シェア
売れ筋ワイン
1 オーストラリア 35.5% Penfolds (Bin389、Max's、Bin407)、Yellow Tail
2 フランス 28.5% Lafite、ボルドーAOC
3 チリ 14.2% Chilephant Merlot、Lafite、Concha y Toro
4 イタリア 6.4% Moscato Gamo、Sartori
5 スペイン 6.0% Torre Oria、Torres、Lagunilla

出所:報道を基にジェトロ作成、売れ筋ワインは京東サイトにてジェトロ確認

輸入ワインの品質問題と偽造問題などが多発

こうして、輸入ワインは一時期、ブームのような状態にあった。逆にそのブームを背景に、消費者のワインに関する知識不足を悪用した新たな問題が多発した。

例えば、一部の悪徳ワイン業者は、輸入ワインの品質が良いと信じる消費者心理を悪用し、低品質ワインを輸入し、パッケージだけ高級にして高価格で販売するなどのビジネスが横行した。具体的には、OEM(委託製造)の形で低価格で海外から輸入し、業者のプライベートブランド(PB)として高価格で販売するような手口が多かったようだ。

特に中小都市(北京、上海、広州など大都市以外)では、輸入ワインの偽造や模倣が深刻だった。良質ワインに低質ワインをブレンドし、高級ブランドを偽造する業者も一部にあった。ブランド自体を模倣するような業者もいるという。例えば、ラフィット(Lafite)の中国語表記「拉菲」は、国家知的財産権局中国商標網で検索すると、94件の類似登録が出てくる。

輸入ワインにおされ気味の国産ワインは、このような偽造・模倣問題もあって、国産ワインの品質を向上する取り組みを強化している。中国国内でブランドワインの本拠地とみなされるようになった山東省煙台市に続いて、産業育成しよういう動きもある。例えば、寧夏、新疆、河北などの地方政府は、ワイン産業を地元の基幹産業に育てようと、減税や農業補助金など産業政策の導入と財政支援などの取り組みを進めてきた。寧夏回族自治区などで生産された高品質のワインは、徐々に存在感を高めつつある(表2参照)。

加えて、「国産ワインの品質は低い」という中国一般消費者のイメージを改善する取り組みも進んでいる。具体的には、中国の消費者がワインをより評価しやすいように、国内外のワイン生産企業と関連事業者が分かる「中国ワイン評価システム」(注1)を業界主導で開発。その普及に向けた取り組みを進められている。このシステムは、中国のワイン消費者を長年研究し、中国の飲食文化・習慣や中華料理の特徴も踏まえてつくられたという。

表2:2019年に最も消費者に愛された中国ワインとその産地
省市 主な産地 ワイナリー 銘柄
山東 煙台蓬莱 張裕卡斯特酒庄 張裕醉詩仙
新疆 吐魯番、伊犁等 天塞酒庄 天塞生肖、天塞精選霞多麗
国菲酒庄 非凡西拉
寧夏 賀蘭山東麓 長城天赋酒庄 長城五星
夏桐酒庄 夏桐起泡酒
迦南美地酒庄 雷司令
嘉地酒園 四季干紅
山西 山西 怡園酒庄 怡園慶春
河北 懐来、昌黎 馬丁酒庄 竜眼干白
紫晶庄園 晶典馬瑟蘭

注:VinehooAwardsは、ワイン情報サイトVinehooが主催するコンテスト。消費者370万人、226社のワイン企業の投票により選出。
出所:2020年に開催された「第2回VinehooAwards」の結果からジェトロ作成


高級スーパー内のワイン売り場の様子(ジェトロ撮影)

一般消費者への普及に向け信頼性の回復がカギを握る

中国のワイン市場は、輸入・卸・小売業者にとって市場参入の障壁が低い。そのため、過熱状態が続いてきた。現在、新型コロナウイルス流行の影響により、資金に余力のない企業や製品は排除され、今後は、ワイン業界の再編と統合が加速する可能性が指摘されている。

また、張裕社の調査によると、中国ではワインの消費シーンの9割が宴会などでの需要となっている。家庭での消費はわずか1割にとどまることになる。しかし、新型コロナ後の消費スタイルの変化により、宴会需要は減少した。となると、一般消費者の不信感を排除するのに加えて、いかに家庭などでのワイン需要を喚起していくかが重要である。

食品業界の信用体制を再構築し消費者の信頼を取り戻すべく、2020年11月1日には国家レベルの「食品品質の真実性認証」(FA認証)が正式に発足。ワインを始め、多くの食品の識別方法が開発されている。また、張裕社は自社製品であることを証明するため、2020年11月30日までに、1,347万ボトルのワインのトレーサビリティ情報を公開した(注2)。

オンライン販売の重要性が高まっている

市場開拓の手段として、今、最も注目されているのがワインのオンライン販売だ。例えば、張裕社は、エントリー用のワインとして「多名利」をKOL(インフルエンサー)である薇娅のライブ放送を使い、1時間内で1万箱余りを販売したという。

海外勢では、フランスやオーストラリアのブランドワインだけでなく、ドイツ、イタリアの政府公認電子商取引(EC)サイトが京東、拼多多などに開設されている。オンラインショップは、消費者の購買が簡単になる。それだけでなく、中間業者が不要であるため安価になり、価格の面でも透明化が進むといわれている。

イタリアは2020年11月に、「拼多多」(注3)で「国家館」を開設した。一般消費者にとって、「拼多多」は安価商品を販売するサイトというイメージが強い。イタリアが「拼多多」を選んだ理由は、安価でも良質なワインを購入できるというメッセージを消費者に伝えようとしたためといわれる。

無論、オンラインショップの活用だけでは、消費者の育成はできない。シャトー旅行、試飲会など消費者に対するワイン文化の啓発、育成活動も欠かせない。中国のワイン市場が健全な発展を遂げることができるか、今後の動向が注目される。


注1:
「中国ワイン評価システム」は、2018年11月18日に上海国家会展中心で発表された。中国酒業協会、中国食品工業協会と中国園芸協会が共同で開発した、初めての評価システム。
注2:
テンセントと連携し、ブロックチェーンの仕組みを応用して認証するシステムと言われる。
注3:
「拼多多」は、6億人のユーザーを有するオンラインショッピングプラットフォーム。利用者は中小都市、さらに農村部に多いといわれる。商品単価の安さに加え、特定の商品を共同で購入することもできる特徴がある。
執筆者紹介
ジェトロ・青島事務所
李 燕(り えん)
2015年、ジェトロ入構。青島事務所総務・経理(2015~2019)、サービス産業部サービス産業課(2015~2017年)、農林水産・食品部農林水産・食品課(2018~2019年)を担当。