エチオピアの2018/2019年度の輸出額は前年度比6.0%減
対アフリカ輸出が全体の20.9%に

2020年1月31日

エチオピアの2018/2019年度の輸出額は26億6,622万ドルで、前年度比6.0%減だった。一方で、日本向け輸出はコーヒー豆などを中心に、35.2%増と大きく伸びた。コーヒー豆、油糧種子など伝統産品が輸出の中心品目だが、外貨不足に悩むエチオピアにとって、輸出拡大は重要なテーマだ。

コーヒー豆などの農産品や繊維縫製製品が主要輸出品目

ジェトロがエチオピア貿易産業省から入手した輸出統計によれば、2018/2019年度(2018年7月8日~2019年7月7日)のエチオピアの輸出額は26億6,622万ドルで、前年度比6.0%減だった。品目別に見ると、コーヒー豆やゴマなどの油糧種子など農産品が5位までを占め、伝統産品が引き続き輸出の中心になっている(表1参照)。農産品に続くのが、エチオピア政府が注力する繊維縫製製品(6位)や皮革・同製品(7位)で、工業団地を中心に輸出されている。電力(10位)は隣国のジブチとスーダン向けに輸出しており、外貨不足に悩むエチオピアにとって、重要な輸出品目だ。

表1:品目別輸出額と構成比 (単位:万ドル、%)
順位 品目 金額 構成比
1 コーヒー豆 76,298 28.6
2 油糧種子 38,806 14.6
3 チャット(かみたばこ) 30,361 11.4
4 豆類 26,546 10.0
5 花き 25,662 9.6
6 繊維縫製製品 15,286 5.7
7 皮革・同製品 11,938 4.5
8 畜肉 8,820 3.3
9 野菜・果物 5,852 2.2
10 電力 5,544 2.1
合計(その他を含む) 266,622 100.0

注1:1万ドル未満、小数点第2位以下を四捨五入。
注2:前年度の統計は開示されておらず、比較不可能。
出所: 貿易産業省の輸出統計を基にジェトロ作成

日本向け輸出はコーヒー豆を中心に大幅増

国別輸出額では、米国が前年度に引き続き1位で、コーヒー豆(構成比:43.5%)、繊維縫製品(32.8%)が主要品目だ(表2参照)。3位のオランダ向け輸出では、花卉(かき)が90.1%を占めた。9位の日本向けは、前年度比35.2%増と大幅に伸び、主要品目はコーヒー豆(73.3%)、ゴマなど油糧種子(21.6%)の2品目で約95%に達した。

表2:国別輸出額と構成比および伸び率(単位:万ドル、%)(△はマイナス値)
順位 輸出先 金額 構成比 伸び率
1 米国 28,322 10.6 9.4
2 ソマリア 25,787 9.7 5.2
3 オランダ 21,303 8.0 11.1
4 サウジアラビア 18,318 6.9 △3.3
5 中国 15,678 5.9 △35.9
6 アラブ首長国連邦 13,754 5.2 23.7
7 ジブチ 13,244 5.0 △1.1
8 ドイツ 12,648 4.7 △30.4
9 日本 12,212 4.6 35.2
10 イスラエル 10,638 4.0 8.9
合計(その他を含む) 266,622 100.0 △6.0

注:1万ドル未満、小数点第2位以下を四捨五入。
出所: 貿易産業省の輸出統計を基にジェトロ作成

周辺3カ国で域内輸出の80%超に

対アフリカ輸出は5億5,605万ドルで、輸出額全体の20.9%となった。近隣国である「アフリカの角」地域が中心で、ソマリア、ジブチ、スーダンの3カ国で対アフリカ輸出の82.4%を占めた(表3参照)。

表3:対アフリカ輸出に占めるソマリアなど3カ国向け輸出額と構成比 (単位:万ドル、%)
対アフリカ輸出先の主要3カ国 金額 構成比
ソマリア 25,787 46.4
ジブチ 13,244 23.8
スーダン 6,828 12.3
対アフリカ合計(その他を含む) 55,605 100.0

注:1万ドル未満、小数点第2位以下を四捨五入。
出所:貿易産業省の輸出統計を基にジェトロ作成

対ソマリア輸出は、チャット(かみたばこ)が83.7%と大半を占めた。エチオピアからのチャットの国別仕向け先は、ソマリアが1位、ジブチが2位だった。対ジブチおよび対スーダンは、電力が輸出品目の2位となった。また、スーダンにはエチオピアの主要輸出品目であるコーヒー豆や豆類が多く輸出されているが、ソマリアやジブチには少量しか輸出されなかった(図参照)。

図:対ソマリア・ジブチ・スーダンの輸出品目

対ソマリア
エチオピアの対ソマリア輸出額の内訳。チャット(噛みタバコ)が83.7%を占めて最多。野菜・果物11.0%と続く。
対ジブチ
エチオピアの対ジブチ輸出額の内訳。チャット(噛みタバコ)が53.9%を占めて最多。電力が23.0%、野菜・果物8.4%と続く。
対スーダン
エチオピアの対スーダン輸出額の内訳。コーヒー豆が38.0%を占めて最多。僅差で電力が36.7%を占め、豆類が18.7%と続く。

注:小数点第2位以下を四捨五入。
出所: 貿易産業省の輸出統計を基にジェトロ作成

工業団地の整備などで外貨不足の改善なるか

今後のアフリカ域内の貿易活発化につながるか注目を集めるアフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)設立協定は、エチオピアも2019年3月に批准済みだ。2020年1月21日時点でアフリカ連合(AU)55カ国・地域のうち、エリトリアを除く54カ国・地域が署名、29カ国が批准している。また、エチオピア、ソマリア、ジブチ、スーダンは、東南部アフリカ市場共同体(COMESA)にも加入している。 エチオピアでのビジネスでは、外貨不足は喫緊の課題だ。AfCFTAは発効済みではあるものの、域内関税撤廃など実際の運用開始には、まだ時間を要するとみられる。当面は、エチオピア政府が力を入れる工業団地の整備による繊維縫製品や皮革製品、発電所の建設が進む電力などの輸出で、外貨獲得が期待される。

執筆者紹介
ジェトロ・アディスアベバ事務所
山下 純輝(やました じゅんき)
2016年、ジェトロ入構。東京本部で、農林水産物・食品の輸出業務に従事。2019年2月から現職。