新型コロナウイルス拡散の中、国会議員選挙へ(韓国)
新たな比例代表制度を導入

2020年4月9日

韓国では4月15日に国会議員選挙が行われ、新型コロナウイルス感染者および隔離者は居所投票を実施する。今回の選挙では、比例代表制度で新しい仕組みが導入され、与党・野党は、同制度を活用するため衛星政党を立ち上げ、議席数の獲得を狙う。

新型コロナウイルス感染者および隔離者は居所投票を実施

4月15日に実施される第21回国会議員選挙(以下、総選挙)では、定数300(小選挙区253議席、比例代表47議席)を改選する。任期は2020年5月30日から2024年5月29日までの4年。

3月26~27日に行われた立候補の届け出の結果、253議席の小選挙区には21政党の1,118人が、47議席の比例代表には35政党の312人が立候補登録している。

4月10~11日に期日前投票が行われ、新型コロナウイルス感染者および隔離者は居所投票(注1)が可能となっており、15日の投票日は臨時公休日になる。

新たな比例代表制度の導入で、多くの少数政党が結成

今回の総選挙制度の主な変更点は、選挙権年齢と比例代表の選出方式である。選挙権年齢は19歳から18歳に引き下げられ、2002年4月16日以前の出生者が有権者となる。また、比例代表制度の下、47の比例代表議席のうち、30議席は、小選挙区で当選者が少ない政党への議席が配分されることになっている。このため、与党・野党共に、衛星政党(注2)を立ち上げている。

3月30日時点の国会の政党別議席数(定数300)では、「共に民主党」120、「未来統合党」95、「民生党」20、「未来韓国党」17、「共に市民党」8、「正義党」6、「ウリ共和党」2、「国民の党」1、「民衆党」1、「親朴新党」1、「開かれた民主党」1、「韓国経済党」1、無所属17、欠員10となる。

うち、「共に市民党」は「共に民主党」、「未来韓国党」は「未来統合党」の衛星政党であり、いずれも比例代表だけに候補者を擁立している。新制度は、少数政党でも議席を確保することができ、民意が反映され死票を防止する効果が期待できるとの趣旨で導入されたが、最大与党と最大野党が衛星政党を立ち上げたのは本来の目的に反しているとの声も多く聞かれる。

また、比例代表区については、35政党が名乗りを上げたことから、投票用紙の長さが48.1センチと、機械で開票可能な34.9センチを超えたため、2002年の地方選挙以来、18年ぶりに手作業による開票が行われることになっている。

メディアの大半は与党の勝利を予測

総選挙に関する世論調査結果をみると、小選挙区と比例代表区で支持が分かれている。調査機関のリサーチ・アンド・リサーチが東亜日報の依頼を受けて3月28~29日に実施した世論調査によると、小選挙区では与党「共に民主党」候補に投票するとの回答が38.0%で最も高く、比例代表を選ぶ政党投票では、最大野党「未来統合党」の衛星政党「未来韓国党」の支持率が21.8%と最も高かった。同紙は、保守系の支持は「未来韓国党」に、進歩系の支持は「共に市民党」「開かれた民主党」「正義党」などに集まっていると分析する。

また、世論調査専門機関リアルメーター(3月30日調査)によれば、政党支持率は、「共に民主党」が44.6%、「未来統合党」が30.0%となり、小選挙区では与党「共に民主党」の優勢を、比例代表区では野党・保守系の優勢を予測している。小選挙区の議席数は比例代表より多いことから、総じて与党・進歩系が有利と予測している。

主要政党のマニフェストでは、新型コロナウイルス対策、経済対策が最優先政策として位置づけられている。日韓関係について、「共に民主党」が「歴史問題は正しい歴史認識と原則に基づいた問題解決を推進方針とするものの、未来志向的な発展のための政府当局間の意思疎通や民間レベル交流は持続的に拡大する」としているのに対し、「未来統合党」は「日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の延長支持」に言及している。


注1:
3月24~28日の間、居所投票を申請すれば、病院、隔離施設、自宅で投票が可能。居所投票の申請期間後に新型コロナウイルスに感染した人に対し、隔離施設に特別事前投票所が設置される。
注2:
小選挙区候補を立てず、新たな比例代表制度の中で議席獲得するために設立された少数政党
執筆者紹介
ジェトロ・ソウル事務所
李 海昌(イ ヘチャン)
2000年から、ジェトロ・ソウル事務所勤務。本部中国北アジア課勤務(2006~2008年)を経て、現職。