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成熟する中国のワイン市場
山東省から見る中国ワイン産業の未来

2019年4月19日

中国の山東省はワインの産地として発展を続け、ワインづくり用ブドウの生産量は全国の33.8%を占め、省市別のトップだ。その中でも、煙台のワイン産業は120年以上の歴史を持ち、現在市内にはワイナリーを含めワイン関連企業が150社所在し、2018年の生産量は全国の40%に上る。

煙台を代表するワインのリーディングカンパニーとして、中国の近代ワインの礎を築いた烟台張裕葡萄醸酒(Changyu)(以下、張裕)がある。煙台市は1987年にOIV(国際ブドウ・ワイン機構)からアジアで唯一の「国際ブドウ・ワイン都市」に選ばれた。また、1989年に中国政府は煙台市にワインの品質の監督や新製品の検査などを行う「国家葡萄酒品質監督検査中心」を設立した。

2002年には国家品質監督総局から、「煙台葡萄酒」に関する地理的表示(原語表現では「地理的標志」)保護が認められ、2018年2月には国家工商総局商標局から、「煙台葡萄酒」という名称で国家地理標志商標(注1)の登録許可が下り、煙台ワインの国内外の知名度を高めた。

張裕の歴史を振り返ってみる。同社は1892年に華僑の張弼士が創業し、中国ワインの発展にこれまで多くの功績を残している。設立当初はヨーロッパから124品種のブドウを輸入、栽培に成功し、今では中国国内で流通しているブドウ品種の90%以上が張裕が当時輸入した品種といわれる。1915年にサンフランシスコで開催されたパナマ・太平洋万国博覧会に張裕が出品した赤と白ワインは計4つの金賞を獲得し、中国ワインが初めて世界で認められるきっかけをつくった。1931年、中国が独自に栽培したワイン生産用ブドウ品種の「蛇龍珠」を使って中国初のドライ赤ワインを生産している。

1952年、1963年、1979年に行われた全国品酒会で選出された中国8大名酒のうち、張裕はブランデー、味美思(ベルモット)、赤ワインの3部門で金賞に輝いている。2002年にヨーロッパ最大のワイングループであるカステルグループと提携し、煙台に中国初のシャトーとなる「シャトー・チャンユー・カステル」を建設し、中国ワインのブランド化を始めた。2006年には中国のワイン品質評価基準である品質等級システムを初めて導入した。

張裕は現在、海外を含めシャトー13軒と工場21カ所を有し、70カ国・地域に販売している。世界酒類貿易専門誌のDrinks Businessが発表した2017年の「世界ワインブランドトップ10」で4位となり、世界のトップブランドの1つに加わった。また、張裕のブランデーもフランスのトップシャトーに匹敵し、「愛斐堡」という名称のドライ赤ワインは中国のラフィットといわれる。

輸入ワインにシェアを奪われる中国のワイン市場

中国では2002~2012年に国内のワイン産業が急速に発展した。年間生産量は2002年の2億8,000万リットルから2012年の13億8,200万リットルと5倍近く増加し、中国市場で流通するワインの約75%を占めた(図1参照)。しかし、2012年末から始まった中国政府の「反腐敗」キャンペーンで「三公消費」(注2)を抑制したことで、中国のワイン市場は縮小し、2018年の年間生産量は6億2,900万リットルと大きく減少した。

図1:ワイン輸入量と生産量の変化(単位:億リットル)
輸入量:2012年3.943億リットル、2013年3.767億リットル、2014年3.841億リットル、2015年5.553億リットル、2016年6.381億リットル、2017年7.494億リットル、2018年7.165億リットル。 生産量:2012年13.82億リットル、2013年11.78億リットル、2014年11.61億リットル、2015年11.48億リットル、2016年11.376億リットル、2017年10.01億リットル、2018年6.29億リットル。

出所:国家統計局、中国税関のデータを基にジェトロ作成

一方で、2013年ごろから、ニュージーランド、チリ、ジョージア、オーストラリアなどからの輸入ワインに対する関税の撤廃または引き下げが進んだ。このため、価格面での優位性が目立ち、輸入量が増加している。中国税関によると、2013年のワインの輸入量は3億7,670万リットルだったが、2018年には7億1,650万リットルと倍増した。2017~2018年のEC(電子商取引)市場の取引をみても、輸入ワインの販売量が60%以上を占める。市場シェアについても、輸入ワインは2012年の22%から2018年の53%と大きく拡大しており、人気の高さがうかがえる(図2参照)。

図2:輸入・国産ワイン市場シェアの変化
輸入ワイン:2012年22%、2013年24%、2014年25%、2015年33%、2016年36%、2017年43%、2018年53%。 国産ワイン:2012年78%、2013年76%、2014年75%、2015年67%、2016年64%、2017年57%、2018年47%。

出所:国家統計局、中国税関のデータを基にジェトロ作成


ワインを中心とする専門店で陳列されている輸入ワイン(ジェトロ撮影)

連携や啓蒙活動で復権を目指す国産ワイン

輸入ワインの急増で苦境に立たされている中国のワイン業界だが、さまざまな取り組みで市場拡大を図ろうとしている。

前述の「張裕」は2018年初めに経営者が交代し、企業や市場戦略、業務構造、販売体系、さらに製品企画、包装など全面的な改革を実施した。また、映画と提携した記念版カベルネを製造、大学で「ワイン文化礼儀講座」を開くなど、ワインの普及啓蒙活動にも力を注いでいる。

中国を代表するもう1つのワインメーカーである「長城葡萄酒」も、グループ企業のネットワークを生かしたワイン販売店を増やしている。2019年2月にはライバル社の「張裕」を訪問し、中国ワインの発展に関する意見交換を行っている。

市場の拡大で期待される山東省のワイン産業

中国のワイン消費量は、2014年以降、世界で5位を維持している。市場全体としては大きいが、1人当たりの消費量は年間1.25リットルと、世界平均の3.35リットルに比べると少ない。今後、中国人の所得水準が上昇するにつれてワインを愛飲する人も増え、市場も再び拡大に転じることが期待されている。

2018年に北京や上海、広州、香港、青島、大連、成都などでワインの博覧会が開催され、海外名酒の試飲会なども行われた。6月には上海で「第1回インタ-ナショナル・ワイン・チャレンジ」(IWC中国)が開催される。

山東省は中国最大のワイン産地というだけでなく、ワインの輸入量でも全国で上位にある。2018年11月には「第1回青島国際ワイン博覧会」が開催され、出展者数は20カ国・地域から389社、来場者数は28カ国・地域から2万359名(海外から1,425名)に達した。出展者からは「専門性の高い博覧会だ」といった評価の声も聞かれる。同博覧会は、6月22~24日に第2回が開催される。今後の中国ワイン市場の動向が注目される。


注1:
特定商品が特定産地のものという合法的な権益を保護し、権利侵害の抑止が期待できる。国家レベルの「身分証明」に値し、知的財産権に属する。
注2:
公務員の公費による海外出張、公用車の購入と燃料費などの諸経費、飲食等接待交際費の3つの消費を指す。
執筆者紹介
ジェトロ・青島事務所
李 燕(り えん)
2015年、ジェトロ入構。青島事務所総務・経理(2015~2019)、サービス産業部サービス産業課(2015~2017年)、農林水産・食品部農林水産・食品課(2018~2019年)を担当。

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